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17.ヴァネッサの旅

ヴァネッサの乗った馬車は、王都への道を走っていた。

父であるエドモン・オルランドが仕事で王都に行くというので、ついてきたのだ。


普段、父の仕事にヴァネッサがついて行くのは、父から要請があった時だけだった。

だが今回は、自分からついて行くと申し出た。


「珍しいな、ヴァネッサからついていきたいだなんて」

「えっと、ちょっと王都で買い物でもしたいなーなんて思って」


適当な理由をつけて誤魔化したが、当然そんな理由でついてきたわけではない。


命の恩人であるショーマ様にお礼をしに行くのだ。


命の恩人であるショーマに、何のお礼も出来ていないまま、それを忘れられるほど、ヴァネッサは厚かましくはない。


どうにか、出来るだけショーマの望む形でお礼ができないかと考えていた。


そのうち話が出来るかと思って、ショーマの周辺をうろうろしてみたが、一向に接点が生まれなかった。


そんな状態にやきもきしていたところで、ショーマが王都に行くという情報が入ってきた。


ヴァネッサは、チャンスだと思った。


カデリナの街でヴァネッサがショーマに接触すると、どうしても目立ってしまう。

ショーマはそれを嫌がっていた様だった。


だが、王都であれば、ヴァネッサがショーマに近づいても、誰に見られる訳でもない。

2人が話している様子など、広い王都の雑踏に簡単に紛れてしまうだろう。


そしてタイミングよく、父が仕事で王都に行くというので、すぐさまついていくことに決めたという訳だ。


ヴァネッサ達が街を出たのがショーマに遅れること3日。

旅自体は順調に進んでいたが、ある街に立ち寄った時だった。


「数日前、この先の街道にビッグアームが出たらしいですよ」

「ビッグアーム⋯ですか」


街の衛兵からそんな話が出た。

ビッグアームといえば、非常に危険な高ランクの魔物。

単体で現れた場合、討伐完了まで街道は封鎖される。

群れで現れた場合、場合によっては軍が動く。

群れを成したビッグアームは、小さな街なら壊滅し得るので、国としても早急な対応が必要になる。


「今、周辺の街で討伐部隊が編成されているところです。」

「ビッグアームは1体だけですか?」

「遭遇した商人たちの目撃情報では1体だけとのことでした」


実際に、ギルドがすぐに編成した調査部隊が、ビッグアームの遭遇地点に行ったところ、ビッグアームの死体が1つ見つかったそうだ。


「え?それではビッグアームは既に討伐されたんですか?」

「はい。遭遇した商人達の話では、その馬車の同乗者が1人、仲間を逃がすために残ったそうです」


恐らくその方が倒されたのでしょう、と衛兵は言う。


「それは凄い。1人でビッグアームを倒すとはその方は相当な実力者だったのでしょうね」


父と衛兵の話を聞きながら、ヴァネッサはその残った1人というのは、ショーマのことではないかと考えていた。

高ランクの魔物を1人で倒す実力。数日前にこの当たりの街道を通ったということであれば時間的な辻褄も合う。


「あら?それでは討伐部隊を編成する必要は無いのでは?」


ヴァネッサの疑問に、衛兵は答える。


「実は、ビッグアームの死体の周りに、複数のビッグアームの足跡が残っていたのです」


足跡から少なくとも5体以上、と聞いてヴァネッサは息を飲む。

1人で複数のビッグアームを相手取るなど、上級騎士でも無理だ。


「それじゃあ、その残った1人というのは⋯」

「⋯行方不明です。ビッグアーム達の足跡は森の中に続いていたそうです」


恐らく、複数のビッグアームを前にして、森の中に逃げ込んだのだろう。

ビッグアームは巨体に似合わず、俊敏な魔物だ。

逃げたところで、先は見えている。


ヴァネッサは、言い知れぬ不安に駆られる。


もし、本当に残った1人というのが、ショーマだったとしたら⋯。

いや、まだそうと決まった訳ではない。

ヴァネッサは、浮かんでくる悪い想像を振り払う。


とにかくヴァネッサは、護衛の騎士達に手を借りながら、ショーマの目撃情報を集めることにした。


「ショーマ様⋯どうかご無事で⋯」


―――


「ぶえっくしょい!」

「何であるか、ショーマよ。風邪でもひいたか?」

「いや、そういう訳ではないんだけど」


誰か噂でもしてるのかな、とショーマは冗談ながら考える。

さて、ショーマがサバイバル生活を余儀なくされて3日が経った。


昼に食料を確保し、夜はガルに見張りをしてもらい、異常があればガルがショーマを操って対処するというスタイルで、何とか無事に生き延びられている。

寝ている間にショーマがガルを離してしまわないように、布でガルを手に巻き付けておくという工夫もしながらの3日間だった。


3日が経ってもショーマの痛みは取れていなかったが、少しずつ身体を動かせるようになってきた。

それと同時に、ショーマの中にある実感が湧いていた。


魔力循環量の大幅なアップだ。


前にボーグボアを倒した時と同じ現象だ。

しかも今回は、前よりも伸び代が大きい様だ。


複数のビッグアームを相手にするため、ガルから多量の魔力を流してもらった分、前よりも拡張性が高かったのだろう。


ビッグアームを倒した事で、召喚士のレベルも上がっている。

恐らく、次の召喚に足るレベルまで至っていると思われる。


ついに、モフモフ召喚の時が来たのだ。


「俺、この森から無事に帰れたら、モフモフを召喚するんだ」

「おお、ショーマよ。何だかそれは言ってはいけない台詞のような気がするであるな」

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