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八月十四日

 変な夢を見た……

 真っ白い病室。窓の外も真っ白。もっと変なことがたくさん起こってた気がするけど、今、覚えているのはそれだけ。何があったのか、目が覚めるにつれて急速に忘れていってしまった。残ったのは変な違和感だけ。頭の前方、額の上くらいが妙にひんやりしている気もする。


「どうしました?」

 いつの間にか先生が隣に立っていて声をかけてきた。だんだん周りがはっきり見えてくる。ああそうか、朝ごはん食べた後に少し寝たんだった。

「真っ白な夢を見たんです。何か変な気分で……」

「ダイバーダウンを体験しましたね。日記をつけて二日目。早いですね」

 ダイバーダウン?

「私はそう呼んでいるんですが、夢と現実の境界のことです。それ以上無意識の海に潜ると、夢にとらわれ、何も持って帰ってこれません。その感覚を良く覚えておいてください。次はもっと深くまで潜っていきましょう」

「あの、どういうことですか?」

「君が退院するためには必要なことです。今まで夢を見たことはありますか?」

「はぁ、ありますけど」

 さっきのも夢なんじゃないの、と少し心の中で突っ込んでみた。

「普段見ている夢と、君が見た先ほどの夢は違うものです。まだはっきり気づいていないと思いますが、先ほどの夢では君は目覚めています」

 うん? 夢なのに目覚めている?

「普段見る夢では、夢の君と現実世界の君は別人です。無意識の深い海の底に潜っていくと、息が続くかなくなるように意識が消え、夢の世界と現実は切り離されます。ですが、息が続くところでとどまると夢の中で目覚めていることができるようになります。意識を保ちながら深く深く潜っていけばいくほど、夢を意のままに操り、夢の内容を持って帰ってくることができます」

 先生が珍しく饒舌じょうぜつに話し続ける。

「そのような夢を一般的に明晰夢といいます。夢の中にありながら夢を見ていることを自覚している夢のことです。ダイバーが海に深く潜ったとき息が続かなくなって意識が消える状況と似ているため、私はこの意識と無意識の境界をダイバーダウンと呼んでいます。この世の全てを理解しコントロールするには、ダイバーダウンの世界を認識することが最初の基本になります」

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