09注射器
文中でさらっと筋注とか書いておいて注射器について触れていませんでした。
注射器は注射筒と押子と注射針からなり、よく似ていますが浣腸器とは別物です。
注射筒は吹きガラスで木型にプーッと吹いて押し付けて作成します。吹くのは機械
にやらせます。水力でも蒸気機関でもOKです。ヒトだと息が続かないです。
注射筒をガラスで作るのが難しい場合は金属の深絞りで作成します。透明でないの
はしょうがないところです。押子もゴムが手に入らない場合は金属です。金属は銅
ですがスズメッキしたものもあります。スズメッキは缶詰の内側にされるメッキで
安全性があります。メッキ方法はいわゆるドブづけです。
金属の深絞りもダメなら陶磁器で作ります。硬質磁器のほうです。吸水性が無いの
で注射筒として使えるでしょう。
問題は注射針です。中空の金属の針を作るのが難しいのです。
注射針は針管と針基で構成されています。
針管は板金を丸めて作ります。
第一工程:板金プレス
板金は圧延加工された鉄材ですが、その技術はあって加工出来たものとしています。
プレス機で薄い板金をプレスして円柱状にします。
板を丸くするのでスジ状の小さな隙間がある金属管が出来上がります。
ここではクランクプレス機を紹介します。
①フライホイールを回転させる。
②クランク軸とクランクを介して回転運動を直線運動にする。
③ストライカーを作動させて上タレットを降ろす。
④むにゅっと板金が曲がって希望の形状にプレスされる。
これだと動力を水車からも蒸気機関からも取ることができます。
第二工程
回転冷間鍛造という方法で素材の径を絞ります。
工場などに行くとゴンガンッゴンガンッいってる機械がありますが、たいがいこの
機械が稼働中の事が多いです。
高速で回転するダイスに材料を送り込み同時に衝撃を加えて伸ばします。
30度回してガツンッ、30度回してガツンッを繰り返しながら材料を送って望みの径
にしていきます。これで中空の金属の針にテーパーをつけていきます。
潤滑油は昔ながらのしょうゆ油(しょうゆあぶら)をハケで塗ると情緒があります。
次は針の先端です。
注射針といえばブスッと突き刺すあの痛みがいやーな感じです。
中空丸棒を斜めにスパッと切ると断面は楕円形状です。切れ味がいかにも悪そうで
す。
そこで最近は日本刃の切っ先と同じ形状の非対称型の針先が現れました。
「刺す」のではなく「切る」のです。
これだったらすんなり注射出来そうです。