研究所脱出編6
成実視点
彼・・・暁紅夜が下に二体クローンを引っ張って、私とクローン二体が対峙する。私は負傷していて、戦闘力も落ちている。さっきまでなら、だけど。私は紅夜が飛び降りて直ぐに懐から袋を取り出す。
その袋には自分の血が保存されている。吸血鬼なら当然予備の血を持っているものだ。成実も例外なくそうだった。
そのまま袋の封を開け、血喰に吸収させる。・・・これで、なんとか倒せそう、かな?調子も回復して右腕も簡単に動かせそうだ。そうして正面に向き合う両者。
先に仕掛けてきたのは右のクローン。左手を突きだして高速で襲いに来る。・・・が、目にも留まらぬスピードでその腕を切り落とす。切り落とした腕は血を吹き出しながら落下し、クローン本体は動きを止め仰々しい悲鳴をあげる。
しかし成実は動きを止めず、動きの止まったクローンの体を切り刻み通過する。そして鋭牙を切り払いした瞬間。クローン一体がバラバラになって倒れる。
「さて・・・後はキミだけだね」
感情がないはずのクローンさえ恐怖していると思わせるほど、成実の笑いは冷徹で冷やかだった。まるで場の気温が何度か下がるような感覚がクローンの全身を包み込み、攻める意欲をなくさせていた。だが成実はそんなクローンの思いなど気にもせず、もう一体のクローンに向っていった。
刹那、鋭い斬撃がクローンに向かう。が、クローンの方もただではやられない。一応強化クローンであるため、基本性能・・・筋力、敏捷性、反射神経や血喰の性能まですべてが雑魚クローンを上回っている。なのだが、成実にはその差さえも微々たるものに思えた。
それほど、成実の戦闘力は強化クローンを上回っていた。火力や敏捷力を総合した、戦闘力で上回っていた。成実には目の前のクローンの動きが止まって見えていた。
翼で鋭牙の攻撃を弾いたクローンだったが、成実の連撃はそれでは終わらない。すぐさま体勢を変えると、懐に突進してその勢いを乗せた突きを繰り出す。
その一撃はクローンの心臓を正確に穿ち、たったの数秒でクローンの生命活動を停止させてしまった。成実はゆっくりと血喰を引き抜き、右に振り払い仕舞う。クローンは崩れ落ち、ドサッと音をたてて床に倒れた。
床に血が広がり、足元の床をおびただしい量の血が埋め尽くしていって、大きな血だまりの中に成実は立ちくしていた。自分の戦闘衝動を抑えつけるために・・・。
しばらくして、紅夜を探しに穴から降りていこうと思い、足を動かす。穴に入って下から探していくと、四階の廊下に倒れているのを見つける。・・・倒したの?やっぱりこの子にも、彼女の能力が受け継がれているのかな。だって、普通じゃ倒せるはずないものね。
私は紅夜を背負って、出口へと歩きだす。こんな血まみれの研究所から、束の間でも安心が約束されている地上の世界へと・・・。