研究所脱出編3
「紅夜。私が右二人引き付けて上に行く。だから紅夜は左二人を連れて下に行って」
確かに手負いの成実に雑魚がたくさんいる下に行かせるわけにはいかない。
「分かった・・・じゃあ、行くぞ!」
俺は強化クローン一体に向かって駆け出す。・・・すごい。なんだこのスピードは。先ほどの戦闘とは段違いの速さで接近し、勢いを乗せたまま鋭牙を突き刺す。
相手も血喰で防御するが、弾き飛ばして腹部に鋭牙を突き刺し、下に向けて床をぶち抜く。と、同時に翼でもう一体もホールドして、空けた穴に投げ飛ばす。
「成実!任せたぞ!」
そう言って穴に飛び込んだ・・・。
紅夜編
穴の先は広い部屋で、戦闘実験室と書かれた札がドアの先に見える。吸血の影響かは知らないが夜目がきく様になり、明かりがついていないにも関わらず、俺は部屋全体が見渡せた。
前に一体、腹部を突き刺した方。後ろに一体、投げ飛ばした方。
先に仕掛けてきたのは後ろのクローン。4本の翼を高速で動かし攻撃してくる。こちらも翼で応戦する。数でもスピードでも上回っている為、すぐに隙が生まれ、こちらの翼で突き刺して捕まえ思いっきり前蹴りを食らわせる。クローンは壁に激突し、悲鳴のような雄叫びをあげ崩れ落ちる。
その瞬間、ドアをぶち破って大量の雑魚クローンが出現し、瞬く間に大量の雑魚クローンに囲まれる。
いつの間にか回復した強化クローンを中心に展開する雑魚クローン達。どうやらさっきの雄叫びで呼び寄せられたのだろう。
刹那、一斉にとびかかってくる雑魚クローン。部屋を高速で移動しながら翼で一体ずつ心臓を貫く。下へいなし突き刺し、上にいなし突き刺し、蹴り飛ばしては突き刺し。その繰り返しで確実に数を減らしていくが、次から次へと増援が出現しきりがない。
このままでは体力を消耗すると考え、まずは指令系統である強化クローンを倒しにかかる。鋭牙を構えて突進し、周りの雑魚を巻き込みながら強化クローンへ突進する。翼は周りの雑魚で手いっぱいで強化クローンには使えそうにない。
しかし、片手だけでは足りず、だんだんと劣勢になっていく。もう一つ鋭牙があれば・・・もう一つ?
そうだ、あるじゃないか。俺は相手の腹部の傷跡を観察する。やはり修復したてのようで傷口は開きそうだ。
ならばと俺は鋭牙で無理矢理隙を作る。お互いに無防備な状態になり、空いた腹部へ左手をねじ込む。
思った通り傷口は簡単に開き、大量の血液が溢れ出す。が、構わず左手で傷口をかき回す。
クローンは悲鳴をあげる。そして、血まみれになった俺の左腕からは右腕と同じような血喰が出現する。思った通りだ。血喰は絶対血に反応すると思った!
両腕とも武器と化した俺は一気に優勢になり、両腕だけでクローンの翼四本を封じ、隙だらけの胴体に思いっきり前蹴りをねじ込む。
前蹴りがクリーンヒットした強化クローンはガラスを突き破り、向こうの部屋に飛んでいく。
向こうの部屋は暗幕があって様子が見えない・・・だが、完全に殺した感覚があった。と思い、ホッとした瞬間、
「GYAAAAAAAAAAAA!!!!!」
今までに感じたことのない威圧感のある咆哮が俺を襲い、おもわず反対側の壁に叩きつけられる。・・・また増援か!?と思ったが今度は俺の周りにいる雑魚クローンが向こうの部屋の暗幕の奥へ走っていく。
・・・悪あがきか。そう思って血喰を仕舞い、上に登ろうとした俺の耳に、何かが歩いてくる音が聞こえる。
後ろを振り返ると、暗幕がめくれ、歩いてくる人型の何かが一つ。
まさか・・・嘘だろ・・・?完全に殺したはずだ。
歩いてきたものの正体は・・・。