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研究所脱出編1 

 階段を上がると、そこは大きめのカプセルが配置されてる部屋だった。割れてるのもいくつかあり、中に何かが入っているのもある。部屋は明るく、歩くには十分足元が見えているので、楽には進めそうだ。

「そもそもここは地下何階なんだ?」

「今は地下五階かな。一応地上の総督の所まで行けばいいと思うよ」

 結構遠いな・・・。道中戦うことにもなりそうだし、体力面の不安が頭から離れない。

 俺たちは物陰に隠れながら少しずつ進んでいく。無用な戦闘は避けた方がいいのでなるべく警戒し、回りも見ながら進んでいく。・・・あれか?少し離れたところに動く影を見つけたので、止まって観察する。

 やがて、疑いは確信に変わる。はっきりとクローンの姿が見え、こちらへ来る。・・・見えてるのか?俺たちは後ろに下がる。が、進行方向を変え歩いてくる。これはバレてると確信し、走って距離をとる。

 ゆっくり歩いてくるクローン。確かにエクレにそっくりだ。

「戦うしかないか・・・?」

「完全に捕捉されたっぽいしね~。ファイト!」

 完全に俺一人にやらせる気の成実だった。俺は血喰を出し、クローンに向かって先端を構える。どうやら固さは自由に変えられるらしく、最高の硬度にし迎え撃つ。向こうも血喰を出す。タイプは(ウィング)のようで四本の血喰を構えることなくフラフラと近寄ってくる。しかし、一定の間合いに近づいた瞬間翼が伸び俺の方へ襲い来る。

 慌てて右腕でガードする。が、連続で翼を伸ばしてきて端に追い詰められて行く。

 ガードだけじゃ勝てない。クローンに出来てるんだから俺だって出来る筈だ。

 そう思って俺も背中から出ている六本の翼を使う。長さを伸ばし、鋭くして相手へつきだす。しかし一本では流石に防がれてしまう。ということは・・・。俺は六本全てを攻撃に回し、相手を逆端に追い詰めていく。

 何故かはわからないが、使い方が分かる。それに吸血鬼になってから身体能力や反応速度が上がっている気がする。

 壁際に追い込み、相手の翼を自分の翼で抑えて、右腕の鋭牙(ファング)で相手の心臓を貫く。血が飛び散り、血喰が反応して血液を吸収していく。

「凄い凄い!最初からそんなに動けるなんて、さすがエクレの力を受け継いだだけはあるね」

「受け継いだ・・・?」

「あれ、説明してなかったっけ?吸血鬼が人を吸血鬼にするときはね、その吸血鬼の能力が受け継がれるんだ。つまり君は四代目のレッド・ヴァンパイアと言っても過言じゃないんだよ」

「じゃあ三代目と言ってもエクレだけじゃないのか?」

「うん。確認されているだけでエクレ、ビスケ、マドレ、サブレ、タルトの五人がいるよ」

 結構多いのか?いやまあ、吸血鬼にされるのは珍しいらしいし・・・。

「じゃあ俺以外にも四代目って・・・」

蒼夜(そうや)君だってエクレに吸血鬼にされていると思うから、四代目はたくさんいるのかもね」

 なるほど、俺が最初から血喰の使い方がわかったってのもそういうことなんだな。なんか・・・力をもらった奴にその力で牙をむくなんて。

「まあ、気にしてもしょうがないよ。この調子で上に上がっていこう?」

 俺はうなずき、歩きだす。

 この部屋は一教室くらいしかないのですぐにドアが見つかる。

 ドアを開けると白い廊下が続いていて、つきあたりで左右に分かれている。どちらも突き当りにドアがあるので、行ってみるしかなさそうだ。

「左かな。これは」

「なんで?」

「迷った時は左って決めてんだよ」

 本当はどっかのだれかの言葉だった気がするけど・・・。

 左のドアを開けると、中は資料室のように棚がならんだ部屋だった。何もなさそうだったのだが、テーブルの上に気になる資料が置いてあった。

「今日におけるレッド・ヴァンパイアの習性と傾向・・・?」

 今日における三代目レッド・ヴァンパイアは異常なコレクター精神を見せるものが多く、気に入った人間を自分のファミリーに迎え、自軍の強化を進める傾向にある。その内容は人間、吸血鬼を問わず、気に入ることが条件であるらしい。中には銀器(シルバー)使いもいるらしく、吸血鬼の身でありながら銀器を使用する個体もいるらしい。無論、吸血鬼にとっては脅威以外の何物でもないので、対銀器用戦術の開発も早められるだろう。しかし、血喰ならば銀器の影響を受けることなく戦闘できることが証明されているので、対銀器使いとの戦闘では、銀器での攻撃は必ず血喰で防御することを念頭に置いてほしい。・・・だそうだ。

 どこの世界にも研究者はいるものだ。開かれているページだけをぱっと見て部屋から出る。

 右側の部屋の前につくが、何かが変だと感じる。だがわからないのでそのままドアノブに手をかける。

 その瞬間、左側のドア、右側のドアから大量のクローンが出現し、特に左側から明らかに強化された別個体が出現する。

「あれは・・・そんな、まさか」

「え?なんだよ?」

「あれは研究途中のタイプ15だよ!逃げるしかない!走って!」

 そういわれ成実に手を引かれ走る。右の部屋に入った瞬間、

「紅夜!血喰!」

 あわてて血喰をだした時にはもう成実は血喰を天井に向けていて、

「行くよ!」

 へ?まさか・・・。と思った時にはすでに天井を突き破って三つほど上の階に着地する。

「逃げ切ったかな・・・?」

 しかし、あの別個体は後をついてきて穴の向こう側に着地する。

「・・・紅夜。下がってて。これは明らかに異常事態。だから・・・これは私の役目!」

 そういってタイプ15の前に駆け出す成実だった・・・。

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