プロローグ2
「そもそもさ、成実は純血の吸血鬼なんだろ?」
成実は首をちょこんとかしげ、
「うん。そうだけど・・・?」
「俺が吸血鬼として生きていくことには反対しないのか?現に純血派のジジイ達には大分・・・」
「それはそれ、私は私だよ。君は貴重な同士だからね」
同士、と成実が言ったのは、俺を助けた吸血鬼のファミリーが対レッド・ヴァンパイアを掲げていたからだ。
先週のある日の夜。いつも通りテレビを見たりゲームをしたりして夜更かししていた時。急に家族の叫び声が聞こえてきた。
何事かと思い寝室に入ると、中はおびただしい量の血で溢れ帰っていた。心臓を貫かれて死んでいる両親の姿を見て、崩れ落ちる膝。落ち着かない呼吸に震えの止まらない腕と足。
「な・・・?」
その中心に人影が一つ。こちらを見ているようだが暗闇で姿が見えない。かろうじて目だけが見える状態だ。そしてその目は綺麗な赤色をしていた。
そのとき、月の光を遮っていた雲が消え、彼・・・いや、彼女の姿が露になる。
美しい金髪。幼い体躯。赤色の目に透き通るような肌。二次元チックな服には返り血が大量に染み込んでいる。
彼女はゆっくりとこちらに近づいてくる。俺は腰が抜けてしまい、まともに逃げることさえできない。
「きゅ、吸血鬼・・・?」
尚も近づいてくる彼女。遂に仰向けの俺の上に馬乗りの形になってしまう。恐れる程の美貌も、この状況では恐怖にしかならない。
ふいに顔を近づけてくる。首から血を吸う気なのか・・・?俺は覚悟して目を瞑る。
死ぬ事を覚悟した瞬間。俺の首・・・ではなく俺の唇に柔らかい感触が押し付けられる。これは・・・キス?
と思ったその瞬間。膨大な力を感じ、そのまま気を失ってしまった。
目覚めた時、俺は血溜まりに仰向けになっていた。いろんな事が起きすぎて何をすればいいのかわからなかった。
しばらくして立ち上がると、着ていた部屋着は真っ赤に染まっていた。そこに、声が
「君が、暁紅夜君かな?」
その声の主が成実だった。成実は血だらけの俺に近寄ると、
「・・・吸血鬼になってる。じゃあエクレは君を・・・いや、今は保護が先かな。動ける?話せる?着いてこれる?」
その時の俺は上手く声が出せず、ただ頷くことしか出来なかった。
「うん。じゃあ処理はやっておくから君は私に着いてきてね」
そういって手をとりベランダから外に出る。10分程歩いた所にあるブランというバーに裏口から入る。マスターは事情を理解した様子で地下への階段を示してくれた。
地下は広く、見取り図を見たところ色々な施設があるようだ。
俺はシャワールームに連れてこられた。まずは血を洗い流せということだろう。
「着替えはここに置いとくからねー」
成実のものであろう人影と声がする。
・・・大分さっぱりした。頭もすっきりして、気持ちも落ち着いてきた。
着替えを取ろうと外に出る。篭に入っていたのは紛れもなく俺の私服。下着までも間違いなく俺のだった。いつのまに取りに行ったのだろう。
取り敢えず下着に手を伸ばした瞬間。ドアがスライドされ、
「ねえ君ーそろそろ上が・・・」
今の俺は腰にタオル一枚。となれば当然彼女の反応は・・・。
「なーんだ、もう出てたんだね。外で待ってるからねー」
・・・あれ?特に叫ばれたりはしないのか・・・。俺は服を着て外に出た。