VS捜査官!編6
僕、星河伊織がこの町に来た理由。それは、最近この町に近づいている三代目レッド・ヴァンパイア・・・識別名称ビスケが原因だ。どうやら本部の人間は僕のことが嫌いらしい。なら、実力で証明するまでだ。
そろそろこの町にビスケがやってくる時期だろう。そう思って毎晩パトロールをしているが、一向にビスケ関連の情報は集まらない。
僕はどうしても出世のために手柄をたてなくてはならない。絶対に・・・殺す。
成実と彩斗から注意を受けた翌日の夜。町内は戦場となっていた。当然堂々とは戦わないが、いたるところで戦闘が行われていた。きっかけは数時間前に遡る・・・。
俺は学校が終わり次第、ブランに呼び出された。俺が入った時にはロビーにたくさんの吸血鬼がいた。
どうやら俺で最後だったらしく、ドアが閉められる。照明も落とされ真ん中に明かりが集まる。そこに立っていたのはルビーのボス。虎徹だった。
「今日の夜!ビスケファミリーがこの町の学校に眠る秘宝を奪還するという情報が入った。ルビーはこれを全力を持って阻止する!俺たちの町は俺たちで守る!いいか!」
その声に場の全員が賛同し、叫ぶ。
「作戦開始時刻は6時だ。各々準備を済ませるように!いいな!」
明かりが戻って、ロビーが騒がしくなる。全員が準備の為に忙しなく動き出す。
「・・・夜。紅夜」
後ろから俺の名前が呼ばれた。振り返ると成実の姿が。
「聞いて。役割と基礎情報だけ教えるから」
それほど切羽詰まっている状況なのだろう。
「・・・わかった」
「まず、今回の作戦の対象はビスケファミリー。ビスケのファミリーは幹部を含めてほぼ射撃系の血喰持ちなの。だから、距離をとるっていうのは自殺行為。なるべく近距離戦を心掛けて。あと、幹部の情報はこれに纏めてあるからあげる・・・あと、ビスケの追加能力は時間停止。時間は短いし連続発動も出来ないけど、強力な能力だから無理はしないで逃げてね」
時間停止・・・。想像もつかない。
「紅夜の役割は町の中を回って劣勢の仲間やピンチの仲間を助けること。私は一緒にいれないけど頑張って」
「おう、わかった。任せろ」
正直まだわからないけど・・・やってみるしかない。
6時になって再びロビーに全員が集まる。ライトが中心に集まり、虎徹が大声で作戦開始の旨を伝える。
「時間だ!行くぞ、皆!」
おおー!という歓声が上がり、次々とメンバーが外に出ていく。俺も巡回ルートを回るために外に出て走り出す。
俺の走るルートは町内を一週するルート。少し体力に不安があったが、吸血鬼の体は凄まじく、一周しても全く息切れがしなかった。二周目を走っていると、学校の方で破壊音と砂埃が。
「なんだ!?」
ルートから外れるが、これは行くしかない。学校へ向けて迂回するのは距離があるため、直線で突っ切ることにする。
電信柱をかけ登り、家の屋根に乗って走る。
いくつか家の上を走って学校の前に降り立つと、一際大きな砂埃が校庭からあがる。校門を飛び越え中に入ると、男性が倒れていた。着けている腕輪からルビーの構成員だと分かる。
「大丈夫ですか!」
駆け寄ると男性は呻きながら喋りだす。
「・・・逃げろ。ビスケのファミリーだけかと思ったら・・・ミカエルまで居やがる」
ミカエル・・・ってことは捜査官が!?
「この緊急警報を押せ・・・。救援が来るはずだ。俺はもう・・・駄目だ」
そこまで言って男性は目を閉じ、力が抜けて横たわる。男性が差し出したボタンを押す。これでいいのか・・・?と、その瞬間に校舎の方から足音が聞こえてくる。
紅夜の視線の先には・・・