VS捜査官!編3
俺は成実の部屋に戻る。・・・成実はおらず、代わりに書置きが。どうやら少ししたら戻ってくるようなので、俺はベッドに座ってこれからのことを考えだす。
ガチャ、とドアの開く音がして成実が帰ってくる。時計を見ると一時間以上考え込んでいたようだ。成実は右手にバスケットを抱えて、
「朝ごはんもらってきたよ?食べるでしょ?」
「ああ・・・。後、話したいことがある」
成実は少し首をかしげながら俺の隣に座る。成実が持ってきたバスケットの布をめくる。中にはサンドイッチが五つほど入っていた。お互いに一つ目を取って話を切りだす。
「俺さ、やっぱ自分の家に戻ろうと思うんだ」
「ここの施設に住まないで?」
「うん・・・やっぱさ、その方が住みやすいし。何より俺ホームシックだから」
成実には悪いけど嘘をついた。本当の理由は家族がいたことを忘れないため。何があっても復讐の気持ちをなくさないため。
「・・・そう、うん。紅夜が決めたんだったらいいと思うよ」
「おう、一晩だけだけどありがとうな」
「え?・・・あーうん。どういたしまして」
なんか変なこといったかな・・・。
食事を済ませ、俺は再びボスのもとへ向かった。
自分の家で暮らしたいという旨を話すと、
「わかった。だが今のお前さんじゃあ外には出れない。夜になるまではここにいろよ?」
と、快く承諾してくれた。夜までどうしようかと思っていると、成実が、
「じゃあここの一通りの案内をしてあげるよ。これからもちょくちょく来ることになるだろうしね」
と言ってくれたので案内をしてもらうことにした。
「じゃあまずはここ。地下四階を大きく占める大ホール」
大きな両開きの扉の先には広いスペース。奥にはステージがある。
「ここでイベントなんかをやるんだよ」
イベント・・・か。あんまり参加したことないんだよなあ。
「次にここ。避難通路ね」
避難通路は各階の端にあって、地下の大空洞に続いているらしい。
「どんな時に避難するんだ?」
「うーん・・・私もまだ使ったことはないんだよね。よっぽどのことが無いと使わないと思うよ」
まあ、保険みたいなものだろう・・・。
「後はロビーぐらいかな。他は見取り図見ながら覚えていけばいいし」
ロビーは地下二階にあって、人が集まる場所でもある・・・らしい。
「あ、彩斗君がいるよ」
そういって彩斗のもとへ行く成実。
「彩斗君。この前が紅夜が世話になったみたいで」
「母親か、お前は・・・。と、先日はどうもありがとうございました」
「やあ、成実に紅夜君。それから敬語はいらないよ。同い年だから呼び捨てでいこう、紅夜」
「そうか?わかりまし・・・わかった。彩斗」
「お二人さん仲いいねー」
「その煽りを男二人にやる意味あるのかよ・・・」
「あはは・・・」
一通りの案内が終わって時刻は午後の六時。日が沈んだので俺はまたボスの部屋へ向かう。
ノックをして部屋に入り、例の件を話す。
「来たか。帰るのだろう?」
「・・・はい」
「ここは出入り自由だからな。入るときは上のマスターにこれを見せろ」
そういって俺の手を取り、手をかざす。チクッと痛みが走り、手の甲に文様のようなものが描かれる。
「これは・・・?」
「うちのファミリーの証みたいなものだ。じゃあ、気をつけろよ」
「はい」
そういって部屋を出ようとするが、成実に、
「ちょっと部屋の外で待ってて」
と言われてしまったので廊下の壁にもたれて少し待つ。
しばらくして出てきた成実。
「何してたんだ?」
「まあ、ちょっとね。あ、出口で待っててくれる?」
「まあ・・・いいけど」
・・・遅い。すでに三十分は経過している。いったい何をしているんだろう。
さらに五分ほど経って、ようやく成実が現れる。
「いやーお待たせー」
「・・・というかなぜついてくる」
「帰り道わかるの?」
「まあ・・・覚えてないけど・・・」
「でしょ?ついてきてついてきて」
成実の先導で自宅に帰る。・・・なにかおかしい気がする。
数分経って家の前につく。
「道案内ありがとな。もう帰っていいよ」
「うん?帰らないけど?」
・・・は?
「いやさ、ボスから直々に頼まれちゃって。面倒見てやってくれってさ」
聞いてないぞ・・・。
「あ、聞いてないって顔してる。だって言ってないし」
「まあまあ。ボスの指示だから、ね?」
「さっきの会話はそれか・・・」
「正解~。さあさっさと入ろう」
一応俺の家だぞ・・・。