双子鬼
その光景に霧綱は驚き訊ねた。
「御前達は双子なのか……何故鬼に堕ちた……」
片方の人鬼が夜叉の如く険しくなった。
「何故!?何故だと……汝は双子の受ける苦痛を知らぬと言うのか!」
片割れの鬼は口惜しいのか、涙を流し無言を貫き通していた。
「同じ双子の貴様なら理解してくれると思ったが……最早語る気も無し!星熊!」
「虎熊!」
二人が動くと同時に音楽が奏でられる、狂乱に満ちた音楽に乗り、二人の鬼は左右の柱を使い縦横無尽に飛び回る、角も、何もかもが瓜二つの鬼は、阿吽の呼吸で霧綱を追い込んでいく。
片方が弓矢で霧綱の動きを誘導し、片方が避けた方へ短刀で斬り付ける。
ここまで必死に戦って来た霧綱にとっては余りにも格が違った、万全の状態でも五分と言えるかどうか。
とうとう入ってきた門まで下がり、そして退路が絶たれた。
二人の鬼は短刀を構え、最後の仕上げとして面と向かって言った。
「双子で在りながら主に仇を成す者め、我等が星熊、虎熊童子が成敗してくれる!」
傷つき疲弊しきった霧綱は声も出せずにいた。その胸に残るは雪綱への想いと忠行への謝罪だけだった。
「兄君は苦痛を知らないのではない、貴様等より、誰よりもその苦痛を知るが故に国を、考えを変えようとしたのだ」
一瞬、夢かと思った、その声は我が弟、雪綱の物だったのだから。
夢ではない事は直ぐに解った、轟く轟音と共に天井から人が降りてくる、鬼と化生、二人の間に降り立つ人の姿は、腰まで届く漆黒の様な髪と、人の身にある筈の無い耳、そして霧綱と瓜二つの顔が星熊と虎熊を黙らせた。
雪綱は双子の鬼を一瞥した後、霧綱に向き直り言った。
「兄君……いや、霧綱……人は考えを改めたか?少なくとも我も知る限りでは改めた様子は無い、それどころか、この様な鬼が生まれる始末……何故人を守ろうとする?……問答をしても意味を成さないであろうな」
再び雪綱は鬼の方へ向き、声を荒げる。
「我が瘴気を奪い、我が願いを妨げる者共めが……その存在を滅しても尚許せぬ!」
言い終わると同時に空気が爆ぜたその衝撃で、床が、柱が、歪み、そして撓む。
演奏をしていた鬼が逃げ出し、童子は怯んだ。
「双子鬼よ、同じ双子として言おう。立ち去らなければ苦痛の中に悶えて死ね」
「兄弟揃って、我等星熊…と…虎……あ?ああ……」
星熊童子が口を開き何かを言おうとした瞬間、その胸に剣が深く突き刺さる。
そして間髪入れずに虎熊童子の胸から誰かの腕が生えた。
口から大量の血潮が吹き出る、虎熊童子が視線を下に下ろすと目の前に握り潰された自分の心の臓が見た後、事切れた。
弓綱改め、雪綱登場




