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決戦

 恐怖で固まった体が、今は動く。


「行け!帰るのだ!」


 叱責の様な口調に付き従い、静は走った。

その胸と頭に思うのは、霧綱への無事と幼子の顔だった。


「ようやく行ったか、霧綱、汝の気紛れは身を滅ぼす所か、関係の無い者まで巻き込んでしまう、少しは鑑みよ」


「済まぬ……だが、我が思いは伝えた、あの娘は迷わぬだろう」


 白狼と霧綱の背後に巨大な鬼の腕が迫る、握り潰される瞬間、鬼の腕は宙へと舞った。


「魑魅魍魎、悪鬼、それに化生か、よくもまあ集めた物だ。しかし数に頼ると言う事は主力が少なくなった事でも有るな」


 夥しい程の禍が霧綱の目の前に広がる、八十を超えようとする数に対して、立ち向かうは一匹の化生だけだった。


「ここが正念場と見た、我が名は源霧綱!都を……民を護る為、災いを成す者共を滅す!」


 名乗りを挙げ、化生は剣を振るう、人知れず化生は人を守る為に戦うのだ。

次々と倒されていく禍と共に、化生も傷を負っていく。

 禍も残り僅かとなった時、霧綱は膝を突き、全身で息をする。

これを好機と見た、禍は一気に躍り掛かった。

 爪が、槍が、凶刃が霧綱の体を隠す、暫くの静寂の後、禍達は四散した。


「さ……流石に……この数を相手取るのは……辛き事だな……」


 息も絶え絶えに、何とか立っていたが、両膝と片手を付いてしまう。

致命傷こそ避けてる物の、夥しい血潮が流れ落ちている。


「休む暇は無い様だ、見よ、瘴気が渦となり、奴の居へと集っておる、何を企てておるのか解からぬが、時間が無いのは紛れも無いようだ」


 息を付く暇も無く事態が変わる、どす黒い瘴気が今は薄れていく、顔を上げれば、確かに瘴気は渦となり彼方の居城へと吸い込まれていく。

酒天の居城は山頂に有るのではなかった、坂の向こう、空中回廊を越えて女鬼の城は有った。

 霧綱はおぼつかない足で歩を進め、回廊を越え、ようやく門の前へと至った。

途方も無いほど大きく、そして重い門を力を込めて開ける、微かな隙間から漏れ出た匂いと音楽は、夢そのままに霧綱を襲う。

 門を開けると音楽が止んだ、中に入ると門が閉まる。

その様子を見送り左右に視線を移すと、そこは階層が段々に連なり、数え切れぬ程の人鬼が楽器を持ち、中央付き従う様に柱が建っている。

その奥には一際高い壇上が有り、その帳の奥に人影が見えた。

 先に進もうとすると、霧綱の足元に二つの矢が射ち込まれた。

飛び退こうとする物の、気力と体力は限界に近かった。

 そんな霧綱の前に立ちはだかるのは二人の女鬼だった。


「我が名は虎熊童子」


「我が名は星熊童子」


「「主の眠りを妨げる者は何者で有ろうと死を!」」


 二人の容姿は瓜二つ正に双子と言える物だった。


静……うん名前変えよう。

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