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歯牙を持つ者、其の二
「この……化け物め!」
鬼が、目の前の物を恐れる、人を喰らい恐怖に導く存在が眼にした事の無い者に恐れ戦慄いている。
霧綱だった獣は、その双眸を熊童子へと向けた。金に光る眼が、まるで獲物を捕らえるが如く、重く熊童子に圧し掛かった。
「来るな!その眼で我を見るな!見ないでくれ!」
鬼の叫びに呼応するように死者達は再び霧綱へと群がった。夥しい数の死者が霧綱の動きを止めようとするが、近寄る度に自ら瓦解した。
そして動く者が居なくなった時、霧綱は鬼の顔を掴み、そのまま上に上げた。
その双眸に映るのは、恐怖に歪む鬼では無く、ちぐはぐに縫い合わされた人の姿だった、霧綱がその手に力を込めるに連れ、縫い合わされた人が苦悶の声を上げる。
そして苦悶の声も――霧綱が顔を握りつぶしたと同時に消えていった。
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