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繋がれた忌子

 霧綱は心にそう決めていたが、弟は兄の意気込みをそのまま眺める事しか出来なかった。

元服も済み、歳を更に重ねていくが、依然国の体制は変わらず、霧綱は自分の力の無さに悲嘆する。

 昇進こそ順調だったが、因習を断ち切るまでは至らなかった。

それ故に霧綱は憤慨する。


「何故だ!双子と言う言葉を出せば、皆が不吉だと言い、言葉を濁す!同じ血が通った人では無いか!」


 暗く、狭い牢の中で、弟の前で怒りを露にする。

弟は怒りと悲しみに打ちひしがれる兄を見て、話し掛けられずにいた。


「済まない、今宵はつまらぬ事で愚痴てしまうかも知れぬ、それ故に話は、仕舞にしよう。明日、御前にも見せたい物が有る。楽しみに待って居れ……」


 そう霧綱は言い残し、牢を後にした。

悲痛に暮れる兄の背中を見送り、その姿が消えた頃、弟は静かに書を開き涙を流した。

 会ってはならぬ逢瀬、父に禁じられた筈の事だと分かっている、それでも夢見るのは、二人で外を歩き、共に歌や音楽を奏でたいと考えてしまう。

願う事なら兄が導く国を傍で見たいと思うが、それは叶わぬ事だと悟っていた。

 その次の晩、兄は布に包まれた仰々しい塊を持ってきた。

名品を授かれば必ずと言っていい程、この冷たい牢へと名品を持ち込んでくれた、そんな兄に尋ねる。


「兄君、これはどのような代物なのですか?」


 霧綱は微笑むと満を辞して言った。


「昨日、帝から授かったものだ、二対の剣なのだが不可思議な形状をしている」


 不可思議というのは、どのような物か、その物を見たい弟は、まるで童の様に振舞う。

霧綱は、弟が喜ぶ様子を微笑ましく思いつつ、包んでいた布を一気に外す、そこには見事な鞘に納められた剣が二対、十字になる様に互いが重なっている。

 剣を固定する物は見当たらない、だが、その二対の剣は離れる事は無い。

弟は息を呑んだ、見事な装飾が施された直刀が、何故か重なるという奇怪な形状に、弟の好奇心は更に高まった。


「兄君……その剣を拝見しても……」


 弟が牢の間から手を伸ばす、余程この剣に興味を持ったようだ。その様子を見て、霧綱は剣をわたそうとした。

そして弟の手が、霧綱が支えている剣の対の柄に触れると。それは起きた――この世の光とは思えぬ光が牢を包んでいく。

 二人とも本能的に目を手で庇う、ずしりとした重みが霧綱の手に、腕に伝わっている。


「兄君!無事で有られるか!?」


弟の叫びが聞こえる。霧綱は眩い光の中で弟へ声を返す。


「我は大丈夫だ!汝も大事ないか!?」


そう声を掛ける中で何かが落ちる音が聞こえた。

 光が収まり視界が戻る時、霧綱の腕が自ら動いた。手に握られた白銀の刃が振り下ろされようとしている。


「避けろ!」


霧綱が言うより早く、弟の目の前に迫る、白銀の刃を防ぐ物が有った、命を奪おうとする凶刃から弟を守ったのは、弟のその手に握られた、もう一つの対の剣だった。


『憎い……全てが憎い……』


誰とも知らぬ声が牢に響く、言葉を発したのは双子のでは無い、言葉の一つ一つが憎悪に満ち、殺意と怒りに満ちた声だった。


『止めよ!憎悪と殺意に飲まれ、自分を取り戻せぬ愚か者が!』


 響き渡る憎悪の声、それを諌めようとする声に、二人は呆気に取られていた。剣が双子の手を動かし、斬撃の嵐を作り出している。

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