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夢の中

ここで弟の名前が出てきますが、修正してないので後程修正します。

「誰かいないのか!?」


 霧綱の問いに誰も答える者は居ない、霧綱はそれに恐怖した、人も化生も鬼すらの気配が感じられない事に。

唯一人取り残される恐怖に呑まれそうになる。

 それでも動き、何処にも行けぬ事を悟ると霧綱はその場に膝を付いた。

無音、無臭、それに目の前に広がる乳白色の霧が霧綱の心を孤独へと追い立てる。


「ここは何処なんだ……何故誰も居らぬのだ……何故我はここに居るのだ……誰か……誰か居ないのか……」


「兄君、私はここです」


 忘れられない声、逢いたくて仕方が無かった声が聞こえた。直ぐに顔を上げて声を出す。


弓綱ゆみつな!居るのか!?我はここだ!ここに居るぞ!」


 有り得ぬ事だと分っている。だがそれでも霧綱は大声を出し、追い求める為に駆けた。


「兄君、早く来て下され。弓綱は待っております」


 徐々に声が近くなる、そして微かに後ろ姿が見えてくる。


「弓綱!」


 肩に手を置き、それが現実である事を確認した。安堵と同時に何と声を掛けて良いのか分らなくなってしまう。


「弓綱……済まぬ……我があの様な物を持って来たばかりに……」


「兄君、我は恨んでは居りませぬ。こうして我の前に現れた事が嬉しゅう御座います。やっとこの剣を兄君の体に刺せる事を、どうして怨む事が有りましょうか?」


「な!?……」


 霧綱の体にいやに冷たく、そして歪な物が進入してくるのが解る。そして止め様が無い激痛に霧綱は声を漏らした。


「弓……綱……何故?……何故だ?……」


 しかし霧綱の声に弓綱は答えなかった、その顔は憎悪に満ち溢れている。霧綱は弟の顔を見て全てを悔やんだ、そして腕を広げて言う。


「弓綱……許せとは……言わぬ……我に出来るのは……汝の怨みを受け止める、ただ……それしか出来ぬ。不出来な兄と侮蔑してくれぬか?」


 そう話し掛け、微笑んだ。

すると目の前に居る弓綱の姿が消え、けたたましい音が響き、霧が晴れる。

 顔を顰めたくなる様な甘ったるい匂いがこの場に溢れ出した、それでも目の前の世界が変わっていく事に少なからず困惑した。

舞い散る花、左右に広がる壇上には楽器を奏でる人々、中心から水を吐き出す大きな泉、どれもこれもが虚像の様な物だった。

 泉の向こうに一際高い壇が有り、頂上には蚊帳が掛けられていて時折、何かが動くのが見えた。

霧綱が呆けていると、蚊帳に隠された人の様な物が立ち歩み蚊帳の前にと移動した、ゆっくりと蚊帳が開かれた。

 そこに居たのは女で、見事な垂髪すいはつを飾る水引、そして口と目に血の様な紅を差している、肌を隠す気は無いのか、単を羽織るだけの姿で立っている。

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