brightness-輝き-
夏の短編祭り「サマーストーリー2011」第1弾!!
こんにちは、作者の五円玉という者です。
この夏の短編祭り第1弾は、ちょっとシリアスなダーク学園ストーリーをお送りします!
異質な力、超能力を巡るダークバトル!!
「brightness-輝き-」
スタートです!
超能力―――それは、稀に人が生まれながらに持っている、異形の力。
ある者は物体の質量を操り、ある者は人の過去を透視する。
ある者は雷を操り、ある者はその言霊より結界を操る。
人それぞれに固有の力を持ち、それを操る者。
それを―――超能力者と呼ぶ。
時は平成。
場所は関東の地方にある、とある山中。
人里離れたそこに建てられている、1つのコンクリート製の建物。
ここから、1人の少年の話が始まる。
「おいコラ棟方、お前人の彼女に手ぇ出したらしいなコラっ!」
「…………」
滝朽学園
体育館の裏
「お前、この暗夜様の女って知ってての行為か?」
「…………」
俺の名前は棟方暁也。
18歳、高3。
「てめぇっ、黙ってないで何とか言えやゴラァッ!」
「…………」
俺の目の前にいるスキンヘッドデブ。
名前は暗夜 祐。
同じく高3。
「びびってんのかコラ? ……ふざけてんじゃねぇぞっ!」
今、俺は何かしらの誤解を受け、この暗夜に体育館裏へと呼び出されていた。
…………。
そして、怒りに身を任せ、今にも攻撃形態をとっている暗夜。
「とにかくいっぺん死ねや棟方ァァァッ!」
暗夜はその拳を構え、一気に跳躍し、俺に殴りかかってきた。
……能力確認。
ターゲット暗夜 祐。
能力―――身体強化、細胞活性、腕力強化。
その能力ランクは……C+
「……何か勘違いしてないか、暗夜」
次の瞬間。
「……なっ!?」
暗夜の拳は、空中でピタリと停止。
まるで、時間が止まったかの如く。
「やっぱり勘違いしてるよ暗夜。俺が……」
俺は拳ごと停止している暗夜の背後へと回る。
「なっ……か、体がっ……動かねぇ!」
焦る暗夜。
そして……
「俺がお前のきたねぇクズ女なんかに、手ぇ出す訳ねぇだろ、ばーか」
「ぐはっ……」
暗夜は突然、その場へと倒れた。
滝朽学園高等科三年
棟方 暁也
能力―――大気調整
ランク―――SSS
「あっきーサンキュー! あの闇夜ってヤツ、超つきまとってきてウザかったんだよね!」
翌日、昼、学園内の食堂。
俺はそこで飯を食いながら、ある女と会話していた。
「それにさぁ、アイツったらやたら金持っててさ、なんか怪しいっつーか?」
彼女は昼飯のラーメンをすすりながらも喋り続ける。
「そして挙げ句の果てにはホテル行かない? ……とか。やっぱりアイツはアタシの体目当てだったのよきっと!」
「……知るか」
俺はとにかく無心で昼飯の麻婆豆腐を片付けた。
ここ、滝朽学園は超能力者達が通う学校だ。
小中高一貫。
超能力なとお伽噺状態の現代の世の中で、自らの能力とうまく付き合っていく事が、超能力者達の生きる道。
この学園では一般教科の他にも超能力の制御や、超能力者という事でいつどこで裏の組織から狙われてもいいよう、護身術なんかも習う。
決して公にはならない超能力者。
国がまだ超能力の存在すらも知らず、普通の学園と認知している滝朽学園。
俺はここの高校三年生だ。
「でさ、あっきー麻婆豆腐なんか食べてるけど、お金あるの?」
視点は再び食堂。
付き合ってもないのに、やたら不良の闇夜に絡まれ、昨日助けを求めてきたこの女。
名前は星崎 蓮華。
俺と同じく高校三年、クラスも一緒。
出席番号は1つ違い。
三年初日に星崎が俺の前の席だったってだけで、成り行きで知り合った。
で、俺の事をあっきーなどと言うあだ名で呼んでくる、かなり迷惑野郎。
「お前に金の心配されるほど、俺は金欠ではない」
「ウソつけ! 先月の終わりなんか三食食パンの耳だったじゃん!」
「…………」
とにかく、俺は超能力が使える高校生なのだ。
滝朽学園の超能力者達にはそれぞれ、超能力にランクがついている。
ランクはE、D、C、C+、B、B+、A、A+、S、SS、SSS
の11段階。
例えば発火能力の能力を持っているヤツがいるとする。
発火能力者でランクEのヤツは、出せてもせいぜい火の粉程度が限界。
しかし、生まれつき能力値が高いヤツなんかもいて、ランクSSの発火能力者なんかは軽く火災旋風なんかも起こせる。
つまり、生まれつきの才能、能力値でランクは決められているのだ。
俺の能力は大気調整。
空気を自由に操る事ができる能力だ。
その中でも俺はSSSランクの大気調整者。
空気中の水分や酸素、二酸化炭素の量の調整もでき、真空すらも操れる。
昨日闇夜を倒したのも、空気の抵抗を操り闇夜の動きを止め、ヤツの口元の空気から酸素を奪い、酸欠状態に追い込み倒した。
この学園でSSSランクの超能力者は能力を問わずして僅か五人。
世界唯一の超能力学園、滝朽学園では世界各国から超能力者達が集まり、全校生徒数は千人を越える。
まぁ、何十億人といる地球の人類の中で、僅か千人程しかいない超能力者ってだけでも激レアなのだが。
俺はその五人の内の一人。
「…………」
午前は一般教科、午後は超能力指導の学園生活、ちなみに全寮制。
俺は今日の授業を終え、寮の自室へと戻ってきていた。
基本四人部屋の寮は、周りを能力封印の結界が貼り巡らされている。
まだ自らの能力を制御しきれていない学生が万が一能力を暴発させてしまえば、それだけで社会問題へと発展するからだ。
そして、能力値が極めて高いSS、SSSランクの者は能力封印の結界がより強度な別館の寮で個室が与えられている。
能力ランクSSSの俺は別館の寮、もちろん個室。
俺はその個室、備え付けのベッドの上に寝転がり、財布を開いていた。
「…………」
財布の中には小銭がちょっと。
……金欠。
「はぁ……」
この学園の生徒のほとんどは両親からの仕送りで暮らしている。
そして俺にはその両親がいない。
つまり、それこそ収入源はアルバイトくらいしかない。
この学園は全寮制でアルバイト禁止だが、俺のような、孤児入学者みたいな収入源ナシの生徒のみ、アルバイトは許可されていた。
「…………」
今日はこの後バイトだ。
「……めんどくせ」
「おや? そこにおるんは棟方クン?」
学園の外、運搬倉庫での荷物の積み降ろしのバイトをしてきた俺。
時刻は夜9時。
辺りは既に真っ暗。
そして、学園の校門まで帰ってきた時、そこに1人の男性外国人の姿があった。
「……やっぱり、棟方クンやん。何? バイト帰り?」
「……氷王か」
エディ・タニーアス。
それがこいつの名前。
アメリカ出身、日本関西育ち。
あだ名は氷王。
俺と同じ、高校三年生。
「うわ〜、こんな遅くまでご苦労さんや」
「…………」
校門の柵に寄りかかり、笑顔を見せる氷王。
その笑顔は月明かりに照らされ、怪しい雰囲気が漂っている。
俺は氷王を無視し、寮の自室へと向かう。
「……つれないヤツやなぁ」
アハハとから笑いし、頭をかく氷王。
「……なぁ、棟方クン」
「…………」
無視。
とにかく寮へ。
「……今日は月が綺麗やな」
「…………」
とにかく歩く。
歩く。
「知っとる? 今日は満月の日なんよ?」
「…………」
あと少しで寮の入り口だ。
電気の明かりが見える。
「月明かりは綺麗や。いや本当に綺麗やなぁ」
「…………」
徐々に氷王の声が遠のいていく。
目の前には、寮の入り口。
「……ボク、つくづく思うねん」
その時、氷王がゆっくりと動き出した。
「こんな綺麗な月明かりには、飴色の真っ赤な血雨がよく似合うねん」
次の瞬間だった。
「……ッ!」
俺の目の前が、凍りだした。
目の前の空気が、凍りだしたのだ。
「……くそッ」
俺は咄嗟に身を翻し、その氷を避ける。
「……相変わらずの反応速度。本当に速いなあ」
俺の後ろで微笑む氷王。
「……本当に、速い速いッ!!」
そして、次の一瞬で
カキンッ!!
「っ……氷王ッ」
辺り一面、まるで真冬の北国のような凍りづけの世界が広がった。
「……棟方クン。キミの血はこの月明かりに似合う飴色かいな?」
凍った地面の上。
ゆっくりと俺の方へ歩みよってくる氷王。
その微笑みは、冷たい。
エディ・タニーアス
能力、氷天操作
ランク、SSS
「……氷王。お前、気でも狂ったか?」
寮の入り口が氷で封鎖された。
寮自体には結界が貼ってあるので凍ってはいないが。
「……ええやんか。ボク、まだランクSSSのヤツと戦った事、なくてなぁ」
「……単純だな」
ランクSSS
俺はよく喧嘩をふっかけられる。
大抵のヤツは、SSSの珍しさ目当て。
ほとんどのヤツは返り討ち行きだが。
「……ハッ、そういや俺も、SSSランクのヤツから喧嘩ふっかけられたの、これが初めてだ」
氷王、炎帝、時巫女、剛皇。
誰でもいい。
確かに俺も、ランクSSSと一回は戦ってみたかった。
「氷王、エディ・タニーアスッ! 死んでも知らねぇからな」
俺は手元の空気を圧縮し、真空を作りだす。
「天暁、棟方暁也。それはこっちのセリフや」
辺りの空気が冷たさを増す。
空気中の水気すらも凍り出す勢い。
「……後悔しても遅ぇからなッ!」
真空を使い、空気を切り裂き、宙へ放つ。
―――鎌鼬。
「……なめたらアカンで、棟方クン」
空気中の水分を凍らし、氷柱を作り、放つ。
この学園は荒れている。
秩序がない。
それが、超能力者達が通うこの学園だ。
同時刻、学園寮管理室
「ふぁ〜……もう9時か……」
白い壁紙に、フローリングの床。
六畳の管理室には、結界装置や入寮者のリストなどが置かれている。
そして、その管理室には学園教師兼寮管理者の大山 幸政の姿があった。
「そろそろ廊下の消灯するかな」
この学園の寮にはルールがある。
寮の廊下の電気は早めに消灯し、節電しましょう。
「えーっと、スイッチスイッチ……」
眠たそうに椅子から立ち上がり、壁についてるスイッチへ向かう大山。
彼もまた、超能力者。
この学園の教師のほとんどは超能力者であり、日々生徒の超能力制御の指導をしている。
大山はまだ若い。
一般科目では体育を教え、超能力では制御のための脳内プログラムの勉強を教えいた。
「ったく、そもそも9時消灯なんて早くね?」
などとぼやきつつ、スイッチへ手を伸ばした
その時……
「先生、悪いけど存在しないで下さい」
「……へ?」
次の瞬間、管理室内から火の手が上がり、一瞬で炭と化した。
そう、一瞬……
「……これで寮を守る結界は解かれた。さて、次は」
炭と化した管理室の前
そこには、赤色の髪をした、ひ弱そうな少年が一人立っていた。
寮の中には、学園に通うほとんどの生徒が入っていた。
SSS、SSランクを除く、約850人。
寮には棟が二つあり、一階でつながっている。
東が男子、西が女子の寮だ。
そして、その二つの棟を繋ぐ一階の通路の中央には、炭と化した管理室。
この時間帯、ほとんどの生徒は自室でのんびりとプライベートな時間を過ごしていた。
ある者は同室者と談話、ある者はベッドに寝転がり読書、ある者は遅めの夕食。
それぞれが、リラックスして時間を過ごしていた。
「……止時灰滅の叫びを賜りて、万事物の狭間の流れを止めんとす」
午後9時31分52秒93
その瞬間、学園内の時が止まった。
全てが静止したのだ。
宙を飛ぶ虫が止まり
箸でご飯を口に入れたまま少年は止まり
テレビの画面はフリーズし
蛇口から流れる水も、宙で止まっている。
全ての時が止まった。
五人の人間を除いて。
「……氷王が天暁を足止めし、炎帝が結界を壊し、時巫女が学園の時を止める。そして」
彼はニヤリと笑った。
「この俺剛皇が全てを破壊するッ!!」
彼は寮の東棟の屋上に立っていた。
肌の色は黒
がたいのよい体
短い黒髪
見ただけで分かる、アフリカ系の男子だ。
そして彼はその右拳をゆっくりと構える。
彼が立っている真下の寮の屋上、つまりは天井に向かって。
「ハッ、終いだッ!!」
次の瞬間。
彼は拳を床に向けて放った。
しかし、屋上は何事もなかったかのように、ビクリともしていない。
「……さてと」
次に彼は西棟へと飛びうつる。
そしてまた、床に向かって拳を一発放った。
相変わらず異常はない。
「ふぅ〜……よぉし、出来たぜ」
彼はその場で一息つき、屋上から一気に飛び降りた。
着地場所は寮前のロータリー。
西東共に五階建ての寮。
その屋上から彼は飛び降り、アスファルトのロータリーへ見事着地。
そこには先客が二人。
「よぉ炎帝、時巫女。こっちはうまくいったぜ!!」
彼―――名前はドゥ・ピクラ。
出身はアフリカ。
18歳、高校三年生。
能力―――全身強化、超人化
ランク―――SSS
通り名は剛皇。
「こっちも結界は壊した。あとはキミ達次第なんだよ」
ひ弱な少年―――名前は朴 李煌。
出身は韓国。
14歳、中学二年。
能力―――発火能力、温度操作、炎化
ランク―――SSS
通り名は炎帝
「……そろそろ、時間動かすよ」
もう一人の先客―――名前はリターシャ・フレイア。
出身はイタリア。
16歳、高校一年生。
能力―――空間操作、時間操作、瞬間移動
ランク―――SSS
通り名は時巫女
「……よし時巫女、時間を動かせ!」
剛皇―――ドゥの言葉を聞き、時巫女―――リターシャは目をつむり、神経を集中させる。
「……流れよ、再びこの狭間に動け」
次の瞬間
ドオオオオオオォォォォォッ!!!
一気に五階建ての寮、西棟東棟が同時に崩れさった。
そして…………
瓦礫の崩れる音に混じって、若き命の断末魔が辺りにこだました。
その声は、崩れさる瓦礫の音を凌駕する程のものだった……
血で真っ赤に染まった瓦礫
何百もの若き死体
そして、偶然にも一命をとりとめた生者。
「いつつ……な、何が起きたんだ……」
その数、およそ百。
「……ほぅ、まだ意外と生きているヤツが多いな」
崩れた瓦礫から五十メートル程離れた場所。
そこに、あの三人はいた。
「……よし炎帝、あの瓦礫ごと生きてる人間を全て燃やしつくせ」
ドゥは笑っていた。
「……分かったよ」
そしてドゥの言葉に、李煌は頷いた。
滝朽学園一般寮入寮者全853人。
全員死亡。
この世から、大量の超能力者が消えた。
「なっ……こ、これは……」
俺は驚くほかなかった。
さっきまで氷王に喧嘩をふっかけられ、途中一般寮から物凄い音が聞こえ、こうして氷王の隙をつき逃げてきたのだが。
「…………」
そこには、赤い瓦礫と大量の死体が……
「なんなんだ……」
ざっと800人は死んでいる。
それも、ほとんどが血を流し、真っ黒に焦げて。
もう、人間の原型をとどめていないモノも多い……
「…………」
もう、突然過ぎて言葉すら出ない。
その時……
ドオオオオオォォォォォォォォッ!!
「……ッ!!」
今度はSS、SSSランク者の寮の方から、物凄い轟音が聞こえた。
何か建物が崩れるような、凄まじい音。
「……まさか」
俺の脳裏には、目の前の事態が再び起きているのではないかという、最悪の事態だけがよぎった。
そして……
「……すごいやろ、これ」
俺の後ろに、氷王の気配を感じる。
冷たい空気だ。
「これ、キミ以外のランクSSS達がグルになってやったんよ?」
俺には氷王の顔は見れていない。
俺の視線は瓦礫と死体に向いているからだ。
「……とりあえず、ランクSSS以外の超能力者は全て……殺すんやて」
「……なんのために」
俺はいつの間にか聞き返していた。
「……世の中の秩序を壊すためや」
氷王は即答だった。
「……超能力者、それは全くと言っていいほど表に知られていない存在」
氷王は語り出した。
「現代の世の中、超能力はタブー。ちょっと町で能力使えばそれだけで社会現象にまで発展するほどや」
その口調はまるで、頭の悪い教え子に勉強を教えている教師のよう。
「……超能力者はそれゆえ、耐えてきた。超能力ていうタブーかつ異質な存在を持ちつつも、社会の常識を守るため、耐えてきたんや」
辺りに血の臭いが散漫する。
「……能力を使ってはいけない。その超能力者たる者に課せられるその掟に耐えてきたんや」
氷王は続けた。
「だから今こそ、全てを壊そうやないか。もう耐えるんは止めにして、全てを壊そうや」
俺はそっと、右手の周りに真空の渦を作りだす。
「全く超能力を認知していない現代の世の中を、超能力でぶっ壊す。そして乱れる社会、秩序、地球。いずれは全てを無にする」
辺りの気温が少し下がった。
「風船やて、空気の侵入に耐えて耐えて膨張して、いずれは耐えきれなくなって爆発する。今こそが、その爆発の瞬間や」
俺は拳を握った。
「……なぁ棟方暁也。一緒に地球、壊さへんか?」
次の瞬間、俺は駆け出していた。
真空を両腕に纏い、空気のガントレットをつけて、氷王に殴りかかった。
しかし……
「おっと、まぁ落ち着け天暁!」
「……動くな。動いたら燃やす」
「…………」
「はは、カンニンなぁ棟方クン」
一瞬。
一瞬で俺は四方をSSSランクの奴らに囲まれ、身動きが取れなくなった。
「……くそっ」
最悪だ……
「久しぶりだな、天暁」
「ハッ、相変わらずチビだな炎帝」
次の瞬間、李煌は俺に手をかざし、炎を灯す。
「あちっ!」
服の裾が少し燃えた。
「……何すんだチビ」
「黙れ低脳」
「まぁまぁ、落ち着きなはれやお二人さん」
二人の喧嘩に割って入る氷王。
「……天暁、お前も俺達の仲間になれ」
その時、剛皇ドゥが俺の顔面に拳を構えつつ話し掛けてきた。
「……脅しか?」
「いや、スカウトだ」
ははっと笑うドゥ。
その笑い方は豪快そのもの。
「……もし嫌だって言ったら?」
「そりゃ、お前と人質を殺す」
「人質?」
「星崎蓮華だ」
星崎蓮華……
あいつ、人質にとられたのか?
「俺達はこの耐え難い地球を壊し、いずれは無を作り、俺達は星となるのだ」
「……星?」
「そうだ。無によって荒廃する地球に輝きをもたらす星にな!」
全く……バカかコイツ?
「抵抗するなや棟方クン。星崎サンのためにも、ここは仲間になる事をオススメするで」
俺は辺りを伺う。
周りにはランクSSSが四人。
他に頼れそうなもの、ナシ。
「……星崎の安否は?」
「…………」
俺の問いにリターシャが反応し、ポケットから携帯を取り出した。
そこには今日の日付が入った携帯の写メ。
映っているのは、笑顔でピースしている星崎。
「……分かった」
ここで無意味に反抗しても、得はなし。
情に任せて動こうものなら、そこには死しかない。
「……仕方ねぇ、お前らの仲間になってやるよ」
今はこれしかない。
「……ほほぅ、利口やな棟方クン」
笑顔の氷王。
「黙れ氷王。いつかはテメェをぶっ殺す。が、それまでは仲間でいてやるだけの話だ」
「……言うなぁ」
空笑いの氷王。
「じゃ、決まりだな」
ドゥはそういうと、拳の構えと解いた。
地球を無にする。
そして、それを導く、輝く星となる。
わがまますぎる。
が、これから滅び行くであろう地球の行く末を見守ってみるのも、何だか面白そうだ。
俺は―――輝けるのであろうか。
いかがでしたか?
次回夏の短編祭り第2弾は、仮想戦国時代で武将達が繰り広げる、ほのぼの系関ヶ原ギャグ!!
「関ヶ原ショータイム」
です!
お楽しみに!