~発明~cross~迷路~
第6話目、ついにこの二つが繋がる時が
これは、ビーケが急に察知した反応が始まりだった。
「あれ?」
「どうしたのビーケ? 道に迷った?」
「ナビゲーターが道に迷ってたら話にならないわよ、違うわ、なんだか妙な反応があるのよ」
「……発明の?」
「どうなんだろう……アタシに見つかるってことはそうなんだろうけど、なんだか違うのよね、こう、気配が薄いというか」
「……? よく分からないよ」
「それはコッチの台詞よ、あ、動き出したわ、追ってエリ」
「うん」
ビーケが示す方向へ歩き始めた。
「この辺よ」
そこは特におかしな所の無い通りだった。ただ一つ妙と言えば、人が私意外見当たらないところだ。
「距離にして六メートル以内ってところね」
「それ、この辺って言える距離じゃないよね?」
「仕方ないじゃない、反応が薄すぎて見つかりにくい……え?」
「……どうしたの?」
「反応がはっきりあったわ、右よ」
言われた通り右を見ると、
「あ……」
少し向こうに、人が倒れていた。その手からこぼれ出たと思われるものに、発明の証を見つけた。
「……何があったんだろう」
発明を拾い上げながら考える。
そもそも、この人はいったいどこから現れた? さっきまで人の姿を一つも確認出来なかったのに、この人が倒れているのを見つけるまでビーケがちゃんと確認出来なかったのもある。
まるで、どこか別の空間にでも居て、ここに現れた。そうでもないとこれを証明出来ない。
「……いったい、何が」
「教えてあげよっか?」
「……?」
倒れている人の向こうから声。見ると、声の主と思う人が歩いてきた。
妙な格好をした、多分、私と同い年ぐらいの女の子だ。
「エリだってはたから見たら妙な格好よ?」
「こんな時に妙なところだけ心を読まないの」
ビーケに言っていると、女の子は倒れている人の前でしゃがみ、指でさして、
「この人は迷路にゴール出来なかったんだよ」
と言った。
「……迷路?」
「そ、幸せに迷った人が陥る路。略して『迷い路』」
「迷い路……」
聞いたことがある。つい先日、発明を探していた時、
『ねぇねぇ、迷い路って話知ってる?』
『迷い路? なにそれ?』
と会話してる2人組を見た。なんでも、
『幸せになりたくて迷ってる人の前に現れて、その幸せを叶えてくれるアイテムをくれるんだって』
とか、
『でもね、そのアイテムを持った瞬間から迷い路って迷路に入れられて、路を間違えると死んじゃうだってさ』
と言っていた。
でも、それは迷路だ。この女の子と何の関係が?
「それで、その『迷い路』の入り口案内人が、この私なのですよ♪」
女の子はピースサインを私に向けて笑った。
「アナタは私を知らないだろうけど、私はアナタを知ってるよ」
え……?
「『発明の種』による発明を集めてる人、だよね♪」
「……どうしてそれを?」
「私のリーダーの情報だよ♪要は私達と同じような者がいるから。会ったら挨拶しときなさいって」
「……挨拶?」
「そ、という訳で、こんにちは♪」
女の子は頭をぺこりと下げた。
「……あ、ども」
私も慌てて返す。
「ちょっとエリ何返してんのよ」
「おー、アナタが噂のおしゃべりナビゲーターさんのビーケさんだね?」
「あ、アタシの名前まで知ってるなんて……」
「良かったでしょ? 初見で箱だって言われなくて」
「誰が箱か!」
「きゃー! 生で聞いちゃった!」
ビーケの怒鳴りにきゃあきゃあ騒ぎだした。
「っ……なによコイツ、やりにくいわね」
女の子は一頻り騒いだ後、
「とにかく、私達とアナタ達は似て非なるもの。互いに必要以上の干渉はしないのが決まりなんだよ」
「……」
「とか言いながら思いっきり話しかけてる。とか思わないでね?」
その通りだった。
「この状況は仕方なしなんだよ、路に入った人が、発明を持っていたから」
「……その人は、どうなったの?」
いまだに動かない人を見て訊く。
「行き止まりに到着して、死んだよ」
「!」
そんなあっさり……
「ちょっ! 死んだってどういうことよ!?」
ビーケが声をあらげる。
「人は正しい路だけを進めば何にでもなれる。ただ人は全ての選択に正しい路を選べる訳じゃない、正しい路が見えない場合だってあるからね、そして路を間違えに間違えて行き着く先は行き止まりという名前の死。それを私達が小さくしたのが迷い路なんだよ」
「っ……だからなんだってのよ!」
「……行き止まった」
「え?」
「その通り♪さすがだね」
ぱちぱちと拍手を送られた。
「この人は間違え過ぎて行き止まりについた。だから死んだんだよ」
女の子は倒れて……いや、死んでいる人から何かを取った。
「全く、有名すぎるからって気配を消したいなんて、それで発明を作って路にも入って、結果死んでちゃ本も子もないよね?」
「……」
「発明だけならまだ良かったのに、やりずきだったよね?」
「……」
「順番が逆だったらまだ良かったのにね、路に入ってから発明が出来れば、こうはならかったもんね?」
「……」
「ぶー、何か言ってよー」
「……その人は、どうなるの?」
「ん? あぁ大丈夫、ちゃんと元あったところに置いてくるから」
「……元あった?」
「この人ね、ここからだいぶ離れたところで死んだんだけど、それから発明を持ってるって分かったの。で、これをアナタに届ける為、私は来たってわけ」
そうだったのか……
「さてと、発明渡したし、一頻り遊んだし、私そろそろ行くね」
「え……?」
「心配いらないよ、私達はアナタを路には引き込まない。そうリーダーに言われてるからね、そして今みたいなことがあったらまた渡しに現れるから♪」
「……」
「それじゃあそろそろ……そだ、最後かもしれないからお互い自己紹介しとこうよ♪私は―――――」
「じゃあねエリさん、ビーケさん、また会えたらいいね♪」
互いに名前を言うと、女の子は人と共に消えてしまった。
「……」
発明だけでは叶えられない願いがある。それを思い知らされた。
「それだけ、人は欲求が多いってことね」
「うん……」
「どうしたのよエリ、さっきの奴が気になるのは分かるけどさ、アタシ達はアタシ達のやることをこなせばいいのよ」
「……うん。そうだね」
「そうと決まったら、早速次行くわよ」
「……うん」
私達はその場を後にした。
人を助ける発明があれば
人を迷わす路がある
おそらく、他にもいろいろとあるんだろうな、と私は思った。
そして、それは本当で、私はそれらと出会うことになった。
この話は、ある方からのリクエストの元、執筆した話です。
やはりあの二人はどこかで会っていてもおかしくはないですよね。
感想、お待ちしています。