~色~cross~景品~
第三話、オモイノカタミビトが始まる少し前のお話
「……朝か」
目を開けると、朝日が目にしみた。
えっと……今日本業の方は無いか。
なら、今日もまた、あちらの仕事に向かうとするかな。
一応、本業の支度を整えて、俺は家を出た。
Hotel Aile
エルは確かフランス語で「翼」何故こんな名前かは知らないし、何をしている場所かも詳しくは知らないが、ここの20階が、俺が副業として働いている会社がある場所だ。
いつも通りエレベーターに乗る。
すると、向こうから一人歩いてくる人が見えた。
開ボタンを押して少し待っていると、案の定乗ってきた。
「……ありがとうございます」
「ああ」
礼を言われたので、返しておく。
「何階だ?」
初めて見る顔だ、まさか20階じゃないだろう。
「……屋上まで」
屋上?
「ここのエレベーターは30階までだぞ、屋上にはそこから階段だ」
ここで働いてる人なら知ってると思うが。
「……では、そこまで」
俺は30階のボタンを押し扉を閉めた。
少しの浮遊間の後、エレベーターは上へと上昇を開始した。
「……」
「……」
静かだな、いつも一人で乗るからそれが当たり前だが、珍しく他に乗客がいて静かなのは何やら違うな。
ふと、後ろ目に乗ってきた人物を見る。
黒のワンピースを着た女だ。何やら雰囲気が暗く、髪はまるで今さっき切ってきました、といった感じのショートカットだ。
ずっと下を向いている為に表情は伺えないが。俺は本業の関係上、そういう人によく会うのでなんとなく分かる。
多分あいつ、失恋か何かの大きなショックを受けてるな。
ああいう奴に限って、色んな事するんだよな、
例えば、自殺とか……
チン
エレベーターが20階で止まり、扉が開いた。
俺が降りると、女性は閉ボタンを押して扉を閉めさせた。
そのままエレベーターは上昇を再開させていった。
「……」
もしかしてあいつ、このまま上に行って……
「……はよ」
いつの間にか、隣には空がいた。
「……お前はいっつも変わんねぇな」
「?」
あの女性には、表情と呼べるものがうっすらとしかなかったが、ここに居る空よりはあった―――筈だ。
だが今のあの人には、まるで表情と呼べるものが、一つしか見られなかった。
その表情とは……いや、それをここで言っても仕方ないな。
ただ、俺が言うのも何だが……自殺はしてほしくないものだな。
という感じで、If・Cross Story 3話連続投稿となります。
次回は未定ですが、おそらく年末には更新しようと思います。
それでは、
感想及び評価、お待ちしています。