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~発明~cross~年齢~

記念すべき第1話は、オモイノタネ主体の話となっています。

年齢エレベーター

それは、都市伝説レベルの噂の一つ。

なんでもそのエレベーターは人により、更に年齢により見える場所、ある場所が異なるという。

範囲は国内と限られているが、年齢が変わるまでにで見つけられないとまた別の場所に移動してしまうそれを見つけることは、無理難題とされていた。

だがこの話があるのは、そのエレベーターに乗った人達からの話があるからなのだ。

そして、そのエレベーターに乗っていける所とは……自分の過去や未来と言われている。

例をあげるなら、15歳の人が30歳の自分になったり、90歳の人が10歳になったり等。

その人の心のまま、自分の願った年齢の時に、その時の自分で行くことができるという話だ。

もしもそんなものがあるのならば、そんな、神の発明のようなものがあるのならば、ぜひとも使ってみたいものだ。



「……本当にこんなところにあるの?」

「間違いないわ、アタシのレーダーに反応があるもの」

人気の無い路地裏、そこを一人の少女が歩いていた。

少女は誰かと話しているように会話をしているが、周りに少女以外の人を見つけられない。

だが、声の種類は二つ聞こえていた。

「……人の姿が見当たらないよ?」

辺りを見回して、少女は訊く。

「必ず人が持ってるとは限らないでしょ、つい最近知ったばかりじゃない」

「……それもそっか」

それに答えた声は、少女の持つ箱から発せられていた。電話口を通したような、機械じみた声だ。

「誰が箱か!」

「急にどうしたの?」

「いや、今、誰かに箱だ。って言われたような気がして」

「……いつも言われてる」

「そりゃそうだけど……あ、ここよ、エリ」

箱に言われ、エリと呼ばれた少女はある場所の前で立ち止まった。

「だから誰が箱か! アタシはナビゲーターよ!」

「さっきからどうしたの、ビーケ?」

「いや……幻聴かしら?」

「どこか悪い?」

「いいえ、全然正常よ。アタシはビーケ、『発明の種』というものからエリによって造られた。探し物はどこにあるのかナビゲーターよ」

「……やっぱりどこか変? 急に自分の説明なんて」

「いや、一応自分を説明しとこうかな、と」

「変なビーケ」

「それはもういいわ、とにかくここよ、ここ」

エリが立ち止まっているのは、古びた建物の前だった。もはや人は住んでおらず、廃墟と化した、元マンションのようだ。

「……ここに発明が?」

「確かよ、ここの一角に急に現れたの」

「……急に?」

「えぇ、昨日まではなかったんだけど、今日急にね」

「今日……あ」

「どうかした?」

「ううん。なんでもない、行こ」

エリは建物の中に入った。

手に持つビーケが示す方向に進む、古びた階段を上り、あるところで、

「ここよ」

ある場所で止めた。

「……ココ?」

それはエレベーターの扉の前だった。

「中から反応があるの。誰かが置き去りにしたままなのかもしれないわ」

「……それは分かったけど、これどうやって開けるの?」

廃墟と化した建物のエレベーター、もはや電機は通っておらず、沈黙している。当然、扉を手動で開けるのは酷だ。

「そこは頑張りなさい、アタシが手伝えるのはココまでよ」

「ぶぅ……ビーケのケチ」

「とにかく、ささっと回収しましょう」

「ぶぅ……」

ふてくされながらもビーケを床に置いて、エリはエレベーターの扉に手をかけた。

「ん……」

力を込める。しかし開く気配は一切無い。

「ダメ、開かない」

しびれた手を振りながらエリが呟く。

「じゃあ、なんか扉に挟めそうな物を探すしかないわね」

「挟めそうな物……」

エリはじーっと、ビーケを見た。

「アタシは無理よ?」

「……だよね、ビーケ、箱だし」

「誰が箱か!」

「ナビゲーターは機械の箱だよ」

「うっ……確かにそうだけど…」

「まぁいいや、何か棒でも……そうだ」

エリはポケットからあるものを取り出した。それはドライバーだった。たが普通のものとは異なり、先端は星形になっていた。

「これはどうかな?」

「壊れても知らないわよ」

「発明はそう簡単に壊れないよ」

エリはエレベーターに向き合った。

「あ、でもその前に、一個試してみよ」

「なによ?」

エリは指を伸ばし、


カチ


エレベーターのボタンを押した。しかも、車いす用の低い位置のを。

「いやだから、電気が通ってないエレベーターは反応しないわよ……てか、何でそっち押すのよ?」

「なんとなく?」

「疑問を疑問で返すんじゃないわよ!」

「うーん……開からないね」

「無視するなー!」

ビーケの声が廃墟に響いた時、


チーン


「え?」

「は?」

音と共に、エレベーターの扉が開かれた。まだ動いてるように電気がついていて明るく、その中に、

「おめでとうございまーす!」

一人の少女が居た。スーツとタイトスカートを身につけ、頭には帽子、居る場所も相俟って、さながら今に珍しいエレベーターガールのように見えた。

「えー、この度は『年齢エレベーター』の発見、おめでとうございます!」

「……何それ?」

いきなり現れた少女に、エリはビーケを拾い上げてから首を傾げた。

「簡単にご説明しますね。このエレベーターは乗せた方を望んだ年齢の自分にお連れする物です。それに伴い身体は変化しますが、心はそのままですので、過去をやり直したいとか、未来を見てみたいという利用者が多いですね」

「……ビーケ」

「えぇ……どうやらそのようね」

ビーケに声をかけた後、エリは少女は見た。

「な、なんですか?」

少女は慌てたようにあわあわし出した。よく見ると、服の胸の所にネームプレートがあり、ローマ字が書かれている。おそらく少女の名前だろう。

「単刀直入に言うわ、コレ、発明の種で作ったわね?」

「は……箱が喋った!?」

「箱って言うな!」

「ご、ごめんなさーい!」

ビーケの怒りに、少女は腰を抜かしてエレベーターの影に隠れてしまった。

「ごめんなさいごめんなさいすみませんすみませーん!」

ぺこぺこと頭を下げて謝り続ける。

「ちょ、そんなに謝らないでよ、まるでアタシが悪役じゃない」

「ビーケいけないんだー」

「エリは黙ってて」

「すみませんすみません! 勝手に箱が喋らないって決めつけてすみませーん!」

「やりづらいわね……エリ、後任せるわ」

「ん……」

エリはエレベーターの中に入り、腰を抜かした少女に手を差し伸べる。

「大丈夫?」

「あ、ありがとうございます」

少女を立ちあがらせた。

「それで、これは発明の種を使ったね?」

「あ、はい、名前は忘れてしまいましたが、発明の種から作ったものですよ」

「……そう」

「あ、あのー、それが何か?」

「……私は発明の種による発明を回収して回っているの」

「回収……ですか?」

「ん……だから、これを渡してほしいの」

エレベーターの壁を叩きながらエリが告げた。

「え……」

それを聞いた少女は、

「えーーーーーー!!」

甲高い声で叫んだ。

「……」

エリは思わず耳をふさいだ。

「むむむ、無理ですよ! コレは渡せません!」

「なんで?」

「だ、だって、これはわたしが造ったもので、憧れの夢を叶えてくれるものなんです!」

「……それは分かってる。発明の種は人の願いを叶えてくれるものをなんでも造り出す。だから危ないものが造られる前に、回収している」

「こ、これは危なくないですよ。ただ人の年齢を変えるだけのものですから」

「関係ない、渡して」

「む、無理ですよぅ、エレベーターを渡すなんて」

確かに、建物に取り付けられたそれを渡すというのは不可能だ。

「……大丈夫、どこかにあるネジをこれで回せばいいから」

エリはドライバーを持ち上げて見せた。

「ね、ネジですか? さ、さぁー、そんなの見たこと無いですねー」

言いつつ少女は壁伝いに移動して、止まったところで両手で何かを隠すように腰の後ろに持っていった。

「……そこだね」

「な、なぜそれを!?」

「いやまるわかりだから」

今まで黙っていたビーケがツッコミをいれる。

「さ、さすがは喋る箱さんですね」

「だから箱って言うな!」

「す、すみませーん!」

「……渡してもらう」

一歩ずつ少女へと近づくエリ、それを見る少女は、

「あわわ…こ、こうなったら…」

服のポケットに手を入れ、

「これ、読んでください!」

一枚の折りたたまれた紙を取り出して突きつけた。

「……?」

首を傾げながらもエリは紙を受け取り、

「……持ってて」

ビーケを少女に渡して、紙を広げて読み始めた。

「あなたも発明さんなんですか?」

「そうよ、探し物がどこにあるのかナビゲーターよ」

「ほぇ~こんな発明さんもあるんですね~」

「アンタのこれだってそうでしょ? いったいどんな願いを持ったらこんなのが出来んのよ」

「わたしは…二つの願いがあったんですよ。エレベーターガールになりたいってのと、色んな年のわたしに会ってみたいというのが、それでどっちかなんて選べなかったら、こんな風になったんです」

「へぇー、なんでこのご時世にエレベーターガールなのよ?」

「それは……内緒です」

「……なるほど」

紙を折り直し、ビーケと交換で紙を少女に渡した。

「よく分かった。これは回収しない」

「ちょ、エリ、それ本気?」

「ん……これはもはや発明じゃない、都市伝説の一つ」

「都市伝説ぅ?」

「……だから、これは回収しない」

「あ、ありがとうございます。このエレベーター、送ったきりの人がまだ何人も居るので回収されるのは勘弁だったんですよ」

「……これからも、頑張ってね」

「は、はい! ありがとうございます!」



「…で、結局回収せずに来たけど、あれでよかったのね?」

「ん……もはやあれは発明じゃない」

「都市伝説の一つ、でしょ? いったい何を読まされたのよ」

「……ところでビーケ」

「アタシの質問はスル―ですか。で、なによ?」

「……今日ね、誕生日なの」

「誕生日? いったい誰の?」

「ビーケの」

「へーアタシの……あ、アタシの!?」

「そ、だからあのエレベーターが現れたの」

「え? ちょっと待って、情報が多すぎて理解が追いつかないわ」

「多分、来年にはまたどこかに行っちゃうんだろうね」

「え? 今日アタシの誕生日? 今日アタシがエリに造られた日? だからエレベーターが現れた? なにをどうしたらそれが繋がるの?」

「……そっか、そういう出会いもあるんだね」

「ちょっとエリ! どういう意味かちゃんと説明しなさいよね!」

「ん……了解、でもその前に…」

「な、なによ?」

「誕生日おめでとう、ビーケ」

「う…………あ、ありがと…」

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