~迷路~cross~発明~
なに? コレをある人へ届けろ?
別に構わないが、なにやら珍しい仕事だな。
まぁ、たまにはこういうのも悪くないが。
ん? あぁ、メイコならば向こうで眠っていたから、鏡を見たらそこはアメリカ、な顔にしておいた。
いやいや、星条旗とは顔のような凸凹のあるところには描きにくいものだね。にひひひ、
では、行ってくるとするよ。
「この辺りだと聞いたんだが」
普段はメイコの役目である仕事を、今回珍しくワタシに回ってきた。
まぁ当の本人は顔に星条旗だし、双子はまだ初期段階で難しい事は出来ない、コレも半分個で持とうとして割るかもしれないから、消去法でワタシになるわけか。
「ん? アレか」
前を行く後ろ姿を発見、聞いた通りの姿をしている。
「さっさと渡して、帰って絵を描くとしよう」
足早に近づいて声をかける。
「そこを行く人」
「?」
振り向いた彼女、
「!?」
の顔を見たワタシが驚いた。
目を丸くしかけたが、バレてはマズイのでぐっ、と冷静を保つ。
しかし……なんでこの人がココに?
「……何か?」
「! あ、あぁ……」
ヤバい、ワタシから呼んでおいてこの表情は非常にヤバい、だが仕方ないだろう。まさかこの人だとは思わなかったのだから。
「……あれ?」
彼女はワタシの顔を見て首を傾げた。
「……貴女、ひょっとして…」
「!?」
ま、マズイマズイマズイ、明らかにバレてる、バレてしまっている。
何か何とかどうにかこうにか誤魔化さないと……
カチン
その時、ワタシの中で何かのスイッチが入った。
「……七内さ…」
「はーーはっはっはっ!」
「……?」
急に高笑いをしたワタシに言葉を止めて首をかしげる。
今がチャンス!
「ワタシの名は奇才・イロドリーナ! 本日はアナタへ特別な物を届けに参上した!」
「……特別な、物?」
「コレだ!」
渡せと言われていた物を放り投げると、彼女は上手くキャッチしてくれた。
「……コレは」
「集めているのだろう? ワタシには不必要だから求める者へ送ろうと思っただけだ! ではサラバ!」
やるべき事をして、必要最低限だけ伝えて、ワタシは逃げるようにその場を去ったのだった。
「……今の、人って……」
「はー……はー……はーっ……」
焦った、こうなってから今までで一番焦った。
メイコや双子に見られてないのが幸いか。
見られてたら双子には疑問がられて、メイコには笑われてその顔にユニオンジャックを描き足してしまうところだったな。
「……ふぅ」
ああ名乗っておけば、先輩もワタシだとは思うまい。変わり果てた姿になったのは、お互い様のようだが、やりたくてやってる事だ。言う資格も言われる資格も無い。
先輩が先輩の選んだ道を行くように、ワタシは、ワタシの決めた道を進むだけだからな。
「……ふむ、我ながら言っていてハズイな」
また聞かれてなくて幸いだ。
きっと双子にはカッコいいと、メイコには似合わないと言われ、その顔に日の丸……と見せかけたサウジアラビアの国旗にしてしまいそうだな。
「やれやれ、次からはメイコを起こして必ず行かせるとしよう……どんな方法を使ってでも、にひひひ、」
そうでなくては、ワタシの身が持たないからな。
予想外の繋がり、実は彼女はそういう人間だったのです。という感じの物語になっております。