~取説~cross~景色~
久方のIf・Cross
今回は新しいメンバーたちのつながりを、
よく晴れた朝、いつも通りの時間に登校していると。
「おはよう、取説」
意外な人物に会った。いつもこの時間には見かけない筈だったのに。
「珍しいわね、遅いじゃない」
いつもなら蛍奈は朝早くに行って、部室でなにかをしてからホームルームぎりぎり前にクラスに現れる。なにをしているのかは、考えたくない。
「気付いたのよ。わざわざ部室でなくても、家の部屋で書いてから行けば、とね」
今さら気付いたのか。
「ふーん」
じゃあこれから会う可能性が増えるかもなのね。
「ところで、取説」
「なによ」
「いい天気ね」
「見て分かるじゃない」
いきなりなにを言ってるんだ?
「でもよ、アレを見なさい」
「?」
蛍奈が指差したのは前、そこには生徒が一人歩いていて…
「え?」
歩いてはいる。けどその生徒が持つ物に私は驚いた。このいい天気の中、前を行く生徒は傘をさしていたからだ。
「妙ね、雲一つ無い晴れの空よ」
「日傘とかじゃないの?」
「だとしても、学校に日傘をさしてくるなんてあり得る?」
「……」
まず無いわね。持ってたとして、さしてこようとはまず思わない。
「ふふふ、ひょっとしてワタシ達にぴったりの生徒かもしれないわよ」
「私を混ぜないで」
成り行きで入部してしまったが、同類で考えてほしくはない。
「よし、勧誘するわ」
蛍奈が一人早足で向かった。
「ちょっ、待ちなさい」
私は後を追った。
すると、
「え?」
頭になにか当たった。上を見ると…
「……雨?」
蛍奈に、もっと言えば傘をさす生徒に近づく程に雨が降ってきた。
確か、天気雨というやつだったと思う。晴れの時に降る雨の事だ。もしかしてあの傘は、天気雨を予測しての物なのか? いや、天気雨を予測出来る訳が無いわ、なにか他の理由がある筈よ。
「そこのアナタ」
天気雨に濡れるのも気にせず蛍奈は生徒に声をかけた。
「はい?」
傘が振り返り、生徒の顔が見えた。制服の感じから、一年生の女子だと思う。
「アナタ、部活には入っているかしら?」
いきなり勧誘する気らしい。
「はい、入ってますよ」
だが生徒はすでにどこかの部員だった。
「あの、濡れてますよ」
「大丈夫よ、それよりアナタ、この雨が分かって傘を?」
「そういう訳じゃないんですが……まぁ気にせんで下さい。では、」
頭を下げると、生徒は歩いて行ってしまった。すると、雨が急に止んだ。
本当に、あの子の回りでだけ雨が降っているかのようだった。
「なるほどね……」
なにかを分かったように蛍奈が呟いた。
「コレも、繋がりの一つという事なのね?」
「は?」
「気にする事無いわ。行きましょ取説」
そのまま蛍奈は行ってしまった。
「……?」
さっきの言葉、どういう意味なのかしら?