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ギャルバンで昭和特撮ヲタの私が、ひいおばあちゃんになった話  作者: ひらやまけんじ
第3曲目 ミラちゃん はじめての2025ねん! 〜死闘!?来夢VSオーヴァー〜
23/23

第23話 QOK誕生祭—路上に響く絶叫ポイズン

 「ああ、すんません!この赤ワインのボトル1本と、ショートケーキとドリンクバーを1つずつ追加で!ワイングラスも2つ持ってきてください!来夢も1杯だけ付き合えよ?」


 「かしこまりました。少々お待ちください」


 沈黙に耐え切れなくなったのか、皇が店員さんを呼んで注文をした。


「私らしいって、どういう意味?」


 思わず問い返す私。その時ちょうど、店員さんがトレイを持ってやって来た。


「お待たせしました。ショートケーキと赤ワインのボトルでございます。ドリンクバーは、あちらからお取りください」


 カラン、とグラスの音。店員さんは事務的な笑顔を浮かべたまま去り、代わりにテーブルの空気に再び緊張感が戻ってくる。


 「おっ!来たか!」


 皇がガバッと立ち上がり、ミラの前にケーキを置いた。


 「ミラ、このケーキはお前が食えよ。ジュースは何が飲みたい?」


 「わーい!ケーキなのだ!」ミラは両手をバンザイして小躍り。


 「えーとね、ミラはオレンジジュースが良いのだ」


 「オレンジジュースか?分かったぜ」


 皇はドリンクバーに向かい、すぐにコップにオレンジ色の液体を入れて戻ってくる。


 私はグラスを見つめたまま、再び話を切り出そうとした。


 「あの皇、さっきの話……」


 「その前に、乾杯しようぜ?ほれ、来夢の分だ」


 赤ワインを注がれたグラスが差し出される。


 「そ、それじゃ……乾杯」


 私は恐る恐るグラスを持ち上げた。


 「乾杯!」


 「乾杯なのだー!」


 〝チーン〟と3つのグラスが軽やかな音を立てる。


 「プハー!美味え!もう一杯!」


 皇は、まるで給水所のランナーのように一気飲みして、もうボトルに次のワインを注ぎ足していた。


 「フフ。相変わらずオヤジ臭いわねー!それじゃ彼氏なんか出来ないよ?」


 私はつい茶化してしまう。


 「はあ?アンタに言われたくないよ来夢!」


 皇は鼻で笑った。


 「対バン決闘の話だけどさ、〝来夢のロック〟なんだなって思ったよ」


 「私のロック……?」


 その言葉に、思わず身を乗り出す。


 「そうだよ。アンタ、バンド組むくらい特撮ヒーローの主題歌が大好きなんだろ?その大好きな音楽を〝格下〟なんて言われたから、我慢できずに噛みついたんだろ?それってブレない生き方じゃん。それが〝来夢のロック〟なんだよ」


 皇の目は、酔ってるはずなのに真剣だった。


 胸の奥に何か熱いものが広がる。――私のロック。


 皇はワイングラスを傾けながら続ける。


 「もし来夢がオーヴァーの言葉にヘラヘラ同意してたら、アタシは軽蔑してたね」


 「ま、まあね!特撮ヒーローみたいに『逃げちゃダメだ』って思ったからね!」


 思わず得意げに胸を張る。


 「調子に乗んな!」


 皇は手刀で私の頭をペチン。


 「アタシなら、オーヴァーにビンタまではするけど、決闘までは受けてねーかな!」


 「そ、そうだよね。ごめん……」


 再び肩を落とす私。その横で、ミラがそっとフォークを差し出した。


 「ライ様、ケーキ少し食べるか?」


 真っ白なクリームにフォークを突き刺して、私に差し出してくる。


 「だ、大丈夫。ありがとミラ」


 皇はそんな私を見て、低く笑った。


 「対バンに負けても生命まで取られる訳じゃねーし、バンドだっていつかは終わる。その時が少し早まるだけだ。バンド解散しても、来夢とアタシがダチなのは変わらねー」


 「す、皇ー!ありがと!」


 私は思わず、皇の手を両手で掴み、涙ぐみながら頭を下げた。


 「こんな時に、タイムマシーンでもあればな〜」


 皇はワイングラスをクルクルと回しながら、酔っぱらったような笑顔で呟く。


 「菜々子を〝対バン決闘を受ける前〟の時間にタイムスリップさせて、来夢を止めさせるのが一番手っ取り早いんだろうけどさ!タイムマシーンなんか特撮やアニメじゃねーんだから、現実には無いしな!キャハハ!」


「いや、一応、〝ある事はある〟んだけどね」


 私がポロリと口にした瞬間――


 「ライ様!シーッ!」


 隣のミラが慌てて立ち上がり、人差し指を唇に当てて制止してくる。


 「あっ!ご、ごめん!」


 私は口を押さえ、周囲をキョロキョロ。幸い他の客には聞かれてなさそう……ホッ。


 「ん?今、何か言ったか?……まあいいや!」


 皇は、一瞬だけ首を傾げるが、即切り替えてグラスを一気に飲み干した。


 直後、その表情がふっと真剣になる。


 「アタシもな、来夢が勝手に対バン決闘を受けた事には、半分だけムカついてんだ。だから、〝二つの事〟が出来たらチャラにしてやるよ」


 赤ワインの二杯目も飲み干し、グラスをテーブルにコトンと置いて、皇は深く息を吐いた。


 「まず一つ目は――〝菜々子に許してもらうこと〟だ」


 その声は、酔いのせいじゃなく、本当に重かった。


 「菜々子、来夢が来る前に言ってたんだぜ?『ミュージックフェス、凄い楽しみだね!3人でお客さんに楽しんでもらえる演奏しようね!』って。……菜々子の気持ちを考えてケジメつけてやんな」


 〝菜々子に許してもらうこと〟――皇に言われるまでもなく、私の胸にずっとあった課題だ。


 「うん!分かった!絶対に許してもらうよ!約束する!」


 私はグッと拳を握る。……けれど不安は消えない。


 「でも、でも、菜々子が、もし本当にバンドを辞めるって言ったらどうしよう?」


 「……多分、それは無いよ」


 皇はグラスを弄びながら、苦笑いする。


 「店を飛び出す時に『フェスの事はナナが1人で何とかする!』って言ってただろ?辞める気だったら、そんな風に言わねーよ。……まあ、後先考えずに発言する所は、菜々子も来夢と一緒だな。キャハハ!」


 その笑いに、少しだけ救われる気がした。


 「それで、もう一つの事は?」


 私は身を乗り出す。


 「……それはな、それはな。1つ目よりも、すっげぇ大事なことなんだよ」


 皇は、わざとらしく神妙な顔を作り、声のトーンを落とす。


 ゴクリ……。私とミラが同時に唾を飲み込む。


 菜々子に許してもらう以上の〝大事なこと〟?一体なんなのよ!?


 「ここの会計、ぜーんぶ来夢が奢って!」


 〝ズコーッ!〟


 私は、椅子から転げ落ちて頭から床に盛大にコケてしまった!


 「おっ!来夢、そのリアクション良いね〜!」


 皇は、バシバシとテーブルを叩き涙目で笑っている。


 「な、何よそれー!マジな顔して何を言うかと思えば!……しょ、しょうがないわね!私が悪いんだし、今日は奢るわよ!」


 「よっしゃー!ゴチになります!」


 皇はガッツポーズ。


 私は伝票を手に取る。


(ゲッ!結構高い!)思わず心の声が漏れた。ボトルワインが原因か……。


 財布から少し多めにお金を出し、皇に渡す。


 「おっ、釣りは五百円か。ほら、菜々子の置いてった五百円玉を持ってけ」


 皇が無造作に指差したテーブルの上には、菜々子が投げ捨てていった銀色の硬貨が光っていた。


 私は、そっとその五百円玉を握りしめる。


 ――これは絶対に使わない。必ず、菜々子に謝って、許してもらった後に私の手から返すんだ。


 「ミラもケーキ食べ終わったみたいね。それじゃ、帰ろっか?」


 「はーい!それじゃスメ様、またねなのだ!」


 ミラはニコニコ手を振る。


 「ああ、またな」


 皇はワインを煽りながら片手を挙げる。


 「おい来夢!菜々子の事で困ったら、黙ってないでアタシに言えよ!……アタシも昨日、ライブハウス出禁になった事で菜々子に迷惑かけてるしな」


 「うん!ありがと」


 私達は店を後にし、夜道をアパートに向かって歩いた。


 ──途中。


 「それじゃ、次の曲を聴いてください」


 アコギを抱えた見知らぬストリートミュージシャンが、街灯の下で歌っているのが目に入った。


 うんうん!お互い頑張ろうね!……ん?アコギ?アコースティックギター?ギター?


 「あーーーーー!」


 ヤバい!ヤバい!菜々子との事や対バン決闘以前に、〝とんでもない事〟をやらかしてたー!!


 「ギギギ……!」


 「どうしたライ様?突然大声出したと思ったら、白目剥いて『ギギギ』なんて呟いて。『は◯しのゲン』でも読みたくなったのか?」


 「ヤバーい!ギターを無くしてたんだー!!」


 「えー!?それじゃ演奏が出来ないのだ!もう負け確定なのじゃ」


 昨日から色んな事があり過ぎて、すっかり忘れてたけど、昨日ライブハウスを出禁された時にギターを無くしてたんだった(※第3話参照)。


 どうしよう?タダでさえ生活カツカツだから、新しいギターを買う金なんか無いわよ!ポイズン!


 「あれ?〝泥酔して喧嘩してライブハウスから出禁されたあげくギターを無くす〟、〝勝手にバンド解散を賭けた対バン決闘を受ける〟、〝ベースの菜々子は怒らせる〟。もしかしたら、私ってギャルバンのリーダーとして最低のクズなんじゃないのか?ね、ねえ?ミラ、ひょっとして私って普通じゃない?」


 「えっ?それって正直に言っていいのか?それともオブラートに包んだ方がいいのか?」


 「正直な方でいいわよ」


 「うむ!今のライ様は〝Queen(クイーン) Of(オブ) Kuzu(クズ)〟 略して〝QOK〟なのじゃ!」


 ミラは、そう言って笑顔でサムズアップする。


 「あ、あんた、ハッキリ言うわねー!しかも、QOKなんて変な略語まで付けてー!」


 「だって、正直な方で良いって言ったからなのだ」


 えーい!こうなりゃ最後の手段!クズはクズらしく困った時の〝ベガ星の超科学アイテム〟頼みよ!


 「ねえ〜?ミラトラマンタロウ!〝ベガタブ〟でお願いしたい事あるんだけどな♡」


 私は、自分でも気持ち悪いと思うくらいの猫撫で声を出して揉み手しながら、ミラに擦り寄る。


 「こういう時って〝ミラえも〜ん〟って言うのがパターンなんじゃないのか?先に言っとくけど、ベガタブでギターを買うお金や新しいギターを用意する事は出来ないのだ。そういう地球社会を大きく混乱させるようなアイテムは使用出来ないように、ベガ星人に使用制限をかけられてるのじゃよ」


 え?そ、そうなの?朝、ミラが使った〝今日は思いって!ぐるみちゃん〟も使い方によっては、とんでもない事が出来そうだけど。


 「うおおおー!帰ってこーい!私のマイギター!」


 打つ手が無くなった私は、絶望のあまり路上で絶叫してしまった!


 「うるせーぞ!姉ちゃん!」


 「ライ様、〝私の〟と〝マイ〟は同じ意味なのだ」


 私には、通りすがりの酔っ払いの怒声やミラのツッコミに言い返す気力が無かった……。






〜次章予告!〜


 町祭り内のミュージックフェスに出演する事が決まった喜びも束の間、〝Queen Of Kuzu〟こと味蕾来夢の後先考えない行動で、スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズは、最大のピンチを向かえた!


 無くなったギター。怒りのあまり去っていったベーシストの菜々子。


 どうする来夢?君がいらん事ばっかしたせいで、ミュージックフェスの前に片付けなきゃいけない問題は多いぞ!


 そんな来夢の前に「夜露死苦よろしく!」ってな感じでレディース〝チーム喪慧喪慧怒無羅威巣モエモエオムライス〟が、空気と作風を読まずに立ちはだかる!


(え?読者様人気を得るため、どさくさに紛れて流行りの正統派ガールズバンド作品に路線変更しようと思ったこの流れで、レディースが出てくるの!?)


 来夢のアパートに勝手に住み着く新たなる居候の登場!事案か!?


 (大家に見つかったら怒られるぞ!そんでもって追い出されたら、次章が〝ホームレス編〟になっちゃうじゃねーか!)


 なんか、ミュージックフェスから、どんどん脱線していってないか?作者の頭は大丈夫か?


 『ギャルバンで昭和特撮ヲタの私が、ひいおばあちゃんになった話』


 次章、「第4曲目 バンド回キター!ヤバい!ギターが無い!……え?話そこから?」お楽しみに~♪


 波乱と笑撃でSF(少し不思議)な〝ミュージックフェス編〟、本格始動!!……の予定♡

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