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ギャルバンで昭和特撮ヲタの私が、ひいおばあちゃんになった話  作者: ひらやまけんじ
第3曲目 ミラちゃん はじめての2025ねん! 〜死闘!?来夢VSオーヴァー〜
21/23

第21話 仲間よ許してくれ!来夢、涙と後悔の土下座スペシャル!

「おーい!甘子!5番テーブルのお客さんの料理が出来たぞ!運んでくれや!」


 厨房の奥から、大将のドスの効いた声が響いた。


 「私、もう行かなきゃ。来夢ちゃん。大丈夫?」


 甘子さんはお盆を抱えたまま、私を心配そうに見てくる。


 「グス……。あ、は、はい!大丈夫です。急に、ごめんなさい。それじゃ失礼します」


 私は慌てて袖で目をこすり、作り笑顔で答えた。


 「またね、来夢ちゃん」


 そう言って甘子さんは、颯爽と厨房へと戻っていった。


 2階の応接室――バイトの制服を脱いで私服に着替え終えた私は、居間でテレビに夢中になっているミラを迎えに行った。


 「ミラ、お待たせ。さあ、行くわよ」


 私が声をかけると、ミラがクルッと振り向く。


「はーい!……あれ?ライ様、目が赤いのだ。もしかして泣いてたのか?」


 じーっと見つめてくるその純粋な目に、思わずドキリとする。


「な、泣いてなんかないわよ!こ、これはあれよ、〝鬼怪獣オニオンのタマネギガス〟を浴びちゃったのよ。アハハ!」


 私は慌てて両手を振りながら、苦し紛れの特撮ネタをひねり出した。


 「ライ様、オニオンって何じゃ?」


 ミラは首を傾げて、目をキラキラさせる。


 「オニオンってのは『ウルトラマンレオ』第27話『強いぞ!桃太郎!』に出てくる怪獣よ!鬼みたいな姿をしてて、口から涙が止まらなくなるタマネギガスを吐くの!」


 私は顔の前で両手を広げ、オニオンの真似をする。


 「えー?そんなガス浴びたくないのじゃ」


 ミラは両手で鼻を押さえて後ずさり。


 「ミラも良い子にしてないと、オニオンが来るぞ〜!オニオンだぞ〜!ガオーッ!」


 私は腰を落として四股を踏みながら、鬼のように両目を吊り上げてみせた。


 「アハハ!ライ様、全然怖くないのだ!」


 ミラはお腹を抱えて笑い転げる。――ありがとう。あんたのその笑顔、元気をくれるわ。


 時計を見ると19時50分。ちょうど集合時間に間に合いそうだ。


 「これから駅前のファミレスの〝シャイゼリア〟に付き合ってくれない?友達と会う約束があるんだ。ケーキとかアイス食べていいからさ」


「本当!?やったー!行く行くのじゃ!」


ミラはぴょんぴょん跳ねながら両手を突き上げて喜ぶ。……この反応、まだまだ子供だわ。


ファミレス〝シャイゼリア〟。


入り口付近の席で手を振る菜々子と、その横に腰かける皇の姿が見えた。


「菜々子、皇。お待たせ。待った?」


 私はミラの手を引きながら席に向かう。


菜々子は、ピザとサラダとドリンクバーを前にして上機嫌。皇はソーセージ盛りと赤ワインを片手にふんぞり返っていた。


「来夢ちゃん、その子誰?」


 菜々子が、キョトン顔でミラを見る。


「ら、来夢?いつの間に、そんなデカいガキを産んでたんだよ!?」


 皇はワイングラスを持ったまま、目を剥いて叫んだ。


「私の子供じゃないわよ!〝かくかくしかじか〟……ってな訳よ!」


 私はさっき大将たちにした説明を、ほぼコピペで披露する。


「そうだったの?やーん♡ミラちゃーん可愛い♡」


 菜々子はテンションMAXで、ミラを抱き上げてナデナデ。


「キャー!可愛い♡可愛過ぎる♡ナナが一緒に暮らしたい!」


両頬をスリスリされて、ミラは「アハハ!ナナ様!くすぐったいのだ!」と笑っている。


「アタシは昴皇。よろしくな!……ま、挨拶代わりに一杯飲むか?」


皇はワインを差し出す。


「いや、この子は5歳なんだから飲ませんなって!久々の本編復帰で、いきなり事案発生はダメでしょ!」


 私は慌ててグラスを押し返した。


「何だよ〜♪第10話にも登場したろ?」


「ありゃ、夢の中だからノーカウントなの!」


「えー?そうなのかい?」


「そ、そんな事より来夢ちゃん、知らないかもしれないけど――」


 菜々子が、瞳をキラキラ輝かせながら身を乗り出す。


「今度の〝超鳴井界町ちょうないかいちょう祭り〟内の『ご当地ヒーローショー』イベントで、スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズが出演する事になったの!」


……はい!知ってます知ってます!私も〝オキシジェンデストロイヤー〟(※1)クラスの爆弾発言があるのよ!!


「おっ、アタシも昼間見たぜ!」


 皇がワインを煽って口を拭う。


「開催日は△△月▲▲日で、あと一ヶ月半後だな。セトリはどうする?ラッキーなのはチケットノルマが無いってことだ!あれ、毎回自腹で地獄だったんだからさ!キャハハ!」


「皇ちゃん、それ笑えないから!スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズもチケットノルマくらいは、そろそろクリア出来るようにならなきゃ。来夢ちゃんもそう思うでしょ?」


菜々子が真剣な眼差しで私を見つめる。


「あ、ああ。……そ、そうね」


私は生返事をしながら、胸の奥がギュッと締めつけられるのを感じた。


〝ドクン、ドクン……〟


心臓の音が、やけに大きく響く。耳の奥で、重低音のドラムのように鳴り響いて止まらない。


「来夢ちゃん……?顔色が……真っ青よ」


菜々子が心配そうに身を乗り出す。その視線に耐えられず、私は下を向いた。


「ライ様……?」


ミラの不安げな声が、胸に刺さる。


――逃げられない。


私は震える手を膝につき、深く息を吐いた。


そして、堪えきれずにテーブルの下に膝をつく。


「ごめん……ごめん!私……〝かくかくしかじか〟なの……!」


声が震え、自然と頭が下がる。


床に額をつけた瞬間、店員や他の客たちの視線が一斉に突き刺さるのを感じた。けれど、そんな羞恥心よりも


――仲間に真実を告げる恐怖と罪悪感の方が、遥かに重かった。


それでも、私はバイト先での出来事――ダイヤモンドブレイカーズとの解散決闘の約束を2人に告白した。


「ええええーー!?スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズが、バンド解散を賭けてダイヤモンドブレイカーズと対バン!?そ、そんなの勝てるわけないじゃない!!」


菜々子は両手で頭を抱え、椅子の上でグルグル回る。まるで壊れたメリーゴーランド。


「ひぃぃぃ!終わった!ナナ達の未来が真っ暗闇だぁぁぁ!!」


 そう叫んで涙目で大騒ぎ、店内の子供が驚いて泣き出す始末。


「あ、アハハ!今の話はアタシも予想外の超展開だわ!さすが、来夢!アンタ悪い意味で〝持ってる〟ねー!この状況は、特撮番組のサブタイ風に言うと『スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズ最後の日!』か、『さらば!スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズ!』か、もしくはかーなーりマニアックになるけど『あっ!スーパーヒーローもヒロインも氷になった!!』(※2)のどれかって感じじゃないか!?ここから、どうやれば特撮番組みたいに逆転勝利が出来るんだよ?アハハハハハ……」


皇は乾いた笑いを繰り返しながら、ワインをグイッ。


その笑い声が店内に空しく響く。――皇、目が笑ってない。完全に現実逃避の乾いた笑いだ。




※1…映画『ゴジラ』(1954年11月3日公開)に登場したゴジラを倒した兵器の名前。


※2…意味が分からない人は『ウルトラマン80最終回サブタイトル』で検索してみてください(笑)

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