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ギャルバンで昭和特撮ヲタの私が、ひいおばあちゃんになった話  作者: ひらやまけんじ
第3曲目 ミラちゃん はじめての2025ねん! 〜死闘!?来夢VSオーヴァー〜
17/23

第17話 オバサンダーと降霊術師系ベーシストとジェンダーレス生春巻が、私のバイト先に乱入してきた件

 「お客様〜?もう用事はございませんか〜?」


 無理やり引きつった笑顔で、私はオーヴァーに接客用の声をかけた。


 「もう用事はございませんので、とっとと目の前から消えてもよろしいのですのよ〜!?いや、むしろ消えてくださらないかしら〜?」


 オーヴァーも負けじと作り笑顔で返すが、こめかみはピクピク痙攣。笑顔の皮を被った怒りの化身みたいになっていた。


 顔は笑ってるのに……完全に殺気出てるじゃん!これ、ホラー演出か?


 その時、厨房の奥から大将の大声が飛んできた。


 「おーい!来夢!料理が出来たぞ!友達に持っててやんなー!」


 えっ、早っ!? もう出来たの!? 絶対仕込み済みだろ?これ!


 思わず心の中でツッコみながら、私はトレーを持ってテーブルに料理を並べた。


 ジェンダーレス生春巻の注文だけは、テーブルいっぱいに埋まるほどのボリューム。


 炒飯に味噌ラーメンに餃子に鮭の塩焼きって……何コース料理だよ!?


 「それじゃ、あんまりゆっくりされても困るけど、ごゆっくり〜」


 オーヴァーの顔なんか見たくないから、早く厨房に戻ろっと!


 「来夢ちゃーん。お疲れ様!賄い温め直したから、お友達と一緒に食べなさい」


 その時、甘子かんこさんが賄いの生姜焼き定食を持ってホールにやって来た。しかも、その料理をよりにもよって、オーヴァーの正面の空席に置いてしまった!


 甘子さーん!それは〝余計なお世話〟というものですよー!


 「あ、あのー甘子さん……?」


 「せっかくだから1人で食べるより、お友達と一緒の方が美味しいでしょ?あ!レジ会計は私がやるから気にしないでいいわよ!」


 「あ、は、はい。あ、ありがとうございます…」


 善意MAXの笑顔で言われたら、もう断れない。


 「お気遣いありがとうございます!素敵な女将さん!とっても雰囲気の良いお店に、美味しそうな料理ですのよ!」


 オーヴァーは、こちらが気持ち悪くなるくらいの笑顔で、甘子さんに言った。


 「まあまあ、嬉しいお言葉ありがとうございます!こんな店でよければ、いつでもお越しくださいね!来夢ちゃん、私は厨房で洗い物してるから。お友達もごゆっくりね!」


 「……どうして、ワタクシが貴女と一緒に、ご飯を食べなきゃいけませんですのよ?」


 甘子さんが厨房に戻った途端、オーヴァーはさっきまでの笑顔が嘘のような仏頂面となった。


 こ、この女!やっぱりさっきの態度は猫を被ってやがったのか!


 「私だって、アンタなんかと好き好んで食べたくないわ!今の見てたでしょ!?シチュエーション的に仕方なくよ!」


 「んもー!オーヴァーちゃんも来夢ちゃんも、お食事中に喧嘩はダメよ♡来夢ちゃーん♡餃子食べるー?」


 隣の席のジェンダーレス生春巻が、餃子を勧めてくる。〝生春巻が餃子を食べたり、人に勧めてくる〟こうやって言うと、なかなかカオスな状況であるけど事実だから仕方がない。


 「それじゃあ、1個いただきます。所で、ベースの加藤一郎……君は一緒じゃないんですか?」


 「あら、いるじゃない?目の前に♡」


 そう言って、ジェンダーレス生春巻はオーヴァーの隣で、納豆かけご飯を口に運ぶ〝名探偵コ◯ン君風のガリガリ君〟を箸で差した。


 「えー?この人が加藤一郎君?ウソでしょ?全然別人じゃないですか!?」


 私が会った事のある加藤一郎は、中性的な顔で中肉中背の男である。


 顔付きや体格は、ある程度メイクや服装で変えられる事を差し引いても、目の前のガリガリ君はとても同一人物とは思えなかった。


 「あっ!そうか!来夢ちゃんは〝憑いてない〟加トちゃんを見るのは初めてだったわね♡」


 「……は、春巻さん!な、何、い、言ってんですか!お、男の子なら、えっと、そ、その、つ、〝付いてる〟に決まってるじゃないですか!?いやん!」


 もう!何を言わせんのよ!恥ずかしいじゃないの!


 「何を勘違いしてるんですのよ!生春巻さんが言ったのは〝付いてる〟じゃなくて、〝憑いてる〟の方ですのよ!」


 「憑いてる?それはどういう意味?」


 「加トちゃんは、本当はベースを弾けないの。だから、ライブの度に降霊術を使って三味線の達人であるご先祖様の霊に憑いてもらって、演奏してるのよ!だから、ライブの時と今とじゃ体格も顔付きも違うってわけ♡」


 「はぁー?降霊術?三味線の達人のご先祖様?何を言ってるんですかー!?」


 ジェンダーレス生春巻の言う事は、情報量が多すぎてさっぱり意味が分からなかった。


 「つまりね。加トちゃんは降霊術でご先祖様の霊を憑依させて、その霊に助けてもらう事によって初めてベースが弾ける〝降霊術師系ベーシスト〟って訳なのよ♡」


 降霊術師系ベーシスト?そんな単語は初めて聞いたわよ!つまり、今の話だと加藤一郎は、ベースを弾けないけど、ライブの度に三味線が上手いご先祖様の幽霊の力を借りて演奏してたって事なの?そんなアホな!?


 「生春なまはるさん喋り過ぎだよ!!」


 今まで黙っていたガリガリ君……いや、加藤一郎が声を張り上げた。


 「ゴメンね加トちゃん♡でも、どうせこんな話は誰も信じてくれないわよ♡来夢ちゃんもウソだと思ってるわよね?」


 「あ、いや、もしかしたら、そういう事もあるのかもと……」


 「えっ?来夢ちゃんってピュアなのね!春ちゃん、ますます気に入ったわ♡」


 昨日までの私なら、信じてなかっただろう。でも、こっちはベガ星人の超科学アイテムやタイムワープの瞬間だって見てきてるんだ!


 それに比べりゃ、降霊術師系ベーシストだって日本に1人くらいいたって大して不思議な事じゃない……わよねえ?


 「ねえ、加藤君。前々から気になってた事あるから、ついでに聞いていい?」


 「何?味蕾さん?」


 「あ、いや大した事じゃないんだけどさ、他の2人がジェンダーレス生春巻とか、オーヴァー・ジュリエッタって芸名を使ってるのに、どうして加藤君だけ本名なのかなって?まあ、オーヴァー・ジュリエッタなんてセンスが悪い芸名よりは、本名の方がいいかもしれないけどね!」


 「クキーッ!1年の季節はシキ(四季)ーッ!!さり気なくワタクシの名前をディスるんじゃないですのよー!」


 オーヴァーが、ハンバーグや目玉焼きの食べカスを吐き散らしながら、怒鳴ってきた。


 「汚いわね!飛んで来たじゃない!食事中に訳わかんない事を叫びながら話すんじゃないわよ!」


 「違うわよ来夢ちゃん♡〝加藤一郎〟が芸名なのよ!加トちゃんの本名は……」


 「やめてよ!生春さん!」


 「あら、別にいいじゃない!降霊術師系ベーシストに比べたら、大した事じゃないわよ♡あのね……」


 「分かったよ!せめて自分で言わせて!……小…路美……ボソボソ」


 「え?加藤君、声が小さくて全然聞こえないんだけどー!?」


 「伊集院姫小路いじゅういんひめのこうじ 美晴愛瑠みはえる実花江留みかえるが本名だよー!!」


ホールに加藤一郎の大声が響き渡る。


 〝伊集院姫小路 美晴愛瑠実花江留〟ですって!?キラキラネームにも程があり過ぎるわよ!よく、市役所が受理してくれたわね?


 「プッ!ククク!伊集院姫小路 美晴愛瑠実花江留って、苗字と名前を合わせると4人分くらいの名前になるんじゃないの?アハハハ!」


 私は椅子から転げ落ちそうになりながら笑った。

 

 「だから、言いたくなかったんだ!味蕾さん笑い過ぎ!」


 加藤一郎は、涙目で机を叩く。


 「ごめん!ごめん!もう笑わないから許して!」


 必死に謝る私。


 「……こんな超キラキラネームだから、僕は子供の頃からイジメられたり、バカにされてきたんだ。だから、バンドやってる時くらいは普通の名前でいたいから〝加藤一郎〟を芸名にしたんだよ」


 俯きながら言う加藤一郎に、私は少し胸が痛んだ。


 「そっか。加藤君も色々苦労してんのね。よし!笑ったお詫びに、加藤君の頼んだ分は私が奢るわ!」


 「えっ?いいの?ありがとう!」


 一瞬で顔を輝かせる加藤一郎。


 彼の頼んだライス小は150円、納豆は50円、味噌汁は80円の合計280円だからね。このくらいなら私でも奢れるわ!


 「あら、来夢ちゃん太っ腹!春ちゃんの分も奢って〜♡」


 ジェンダーレス生春巻が、山のような注文の皿を前にキラキラ笑顔で両手を合わせてくる。


「ダメに決まってるでしょ!!」


 私は全力で拒否した。


 合計4,000円超えを背負えるかー!私のバイト代が消し飛ぶわ!!

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