第12話 1年分の食料が豆粒!?未来の曾孫は天才なのじゃ!
「本当に、こんな小さなオモチャみたいなのが食べられるの?」
私は恐る恐るカルボナーラの豆粒をつまみ上げ、眉をひそめながらミラに見せる。
「今こうして目の前にあるじゃろ?」
ミラはフォークを持つ小さな手をパタパタさせながら、お子様ランチをほおばり、ほっぺをパンパンに膨らませて笑っている。
い~い匂い。ズルい!その笑顔もズルい!もう我慢できない!
「さっきも言ったけど、私にも1つ分けてくれる?」
思わず身を乗り出すと、ミラは得意げに胸を張って、ケースを指さした。
「もちろんじゃ!どれでも好きなのを取るといいのだ!」
「ありがと!それじゃ、どれにしようかな?」
私は真剣そのものの表情でケース内を物色し、まるで宝探しでもするかのように豆粒をひとつひとつ摘んで確認する。
――そして、ついに選んだのはカルボナーラらしき豆粒。
光の下でじっくり眺めても、どう見てもレストランの食品サンプル。
「えーと、500Wで10秒チンすれば良いのよね?」
半信半疑でレンジに放り込み、ドキドキしながらスタートボタンを押す。
〝チーン!〟
レンジを開けると、そこには湯気を立てた本物のカルボナーラ!
「凄い!本当に大きくなった!」
私は歓声を上げて目を輝かせる。
「ねえ、ミラ!この豆粒食品もベガ星の超科学アイテムの1つなの?」
ミラは口の端にケチャップをつけたまま、首を横にブンブン振る。
「これは、ミラ達の時代で普通に販売されてる〝超圧縮保存食品〟なのじゃ!」
「超圧縮保存食品?」
「そうじゃ!」
フォークを片手に、ミラはまるで先生のように偉そうに解説を始める。
「ミラ達の時代の日本は、外国の人達も沢山住むようになって、生活スペースが狭くなって大変なんじゃよ。その問題を少しでも解消するために、大手食品会社が協力して開発したのだ。普段は1/100に圧縮されてるけど、レンジでチンすれば本来の大きさに戻るという画期的な製品……と、学校で習ったのじゃ!」
「未来の技術って凄いのね」
私は感心して腕を組むが、すぐに脳内が昭和特撮モードに切り替わる。
「昭和の特撮作品だと、小動物や微生物が放射能の影響で怪獣に突然変異するって話がよくあるけど、イメージとしてはそれと似た感じかな?」
「それは、全然違うと思うのう」
ミラは半目で私を睨み、肩をすくめる。
「う、うるさいわね!ん?今『学校で習ったのじゃ!』って言わなかった?今更だけど、ミラって何歳なの?」
「ミラは5歳なのじゃ!」
彼女は指をピョコンと立てて、胸を張る。
「5歳?……ってことは幼稚園児よね?」
「いいや!ミラは、すでに‶飛び級〟で小学3年生までの勉強は終えてるのだ!ふふーん♪」
ドヤ顔に加え、鼻の下に人差し指を当てて「おほほ」的なポーズまで披露するミラ。
「えー?冗談でしょ?」
「冗談じゃないのじゃ!あれ?この時代って、もしかして飛び級制度は無いのか?」
「無いわよ!幼稚園児が飛び級なんて、聞いたこと無い!」
「そうなのか。ミラ達の時代では、教育委員会から学力があると認められた子供は、どんどん飛び級させて早く社会に送り出して活躍させる政策になってるのだ!12歳で大学を卒業して13歳で一流企業の課長になってる子もいるのじゃ!」
「課長ぉ!?中学生課長!?部下のおじさん達の立場どうなるのよ!」
私は頭を抱えて、その光景を妄想してしまう。スーツ姿の小学生が「君は減給ね」とか言ってる光景なんて……ヤダ!
でも、これで納得がいったわ。
ミラが5歳の割に大人っぽい言動や考え方してるのは、飛び級制度のおかげなのね。
「まあまあ、冷めない内に食べたらどうじゃ?」
ミラは私を見てクスクス笑いながら、カルボナーラを指差す。
「そうね!いただきまーす!う!ウマーイ!」
私は両手を広げて叫ぶ。 麺のモチモチ感、濃厚なソース、ベーコンから溢れる肉汁……。
夢中でかき込んで、あっという間に完食してしまった。
「はぁ〜!美味しかった!……って、あんた何してんのよ!?」
視線を横にずらすと、ミラは何とお皿をガリガリ齧っていた。
「やめなさいよ!お腹壊すわよ!」
「このお皿は食物繊維で出来てるから食べられるのじゃ!」
ミラはケロッとした顔でバリバリ食べ進める。
「マ、マジで!?」
試しに自分の皿を齧ると、確かに麩菓子みたいでポリポリいける。
気づけば、私も皿まで完食していた。
ケースの中を改めて覗くと、豆粒状の食料は数え切れないほどあった。
ラーメン、牛丼、回鍋肉、なんでもある。
これ、下手したら本当に1年分以上あるんじゃ? 思わずヨダレが出そうになったが、私はブンブンと首を振る。
「ダメだ!私はひいおばあちゃん!曾孫の食料に頼るなんて恥だ!……そう言えば、華印の‶大事な用事〟って何?ミラは知ってるの?」
私は話題を変えるように尋ねる。
「もちろん!」
ミラはフォークをクルクル回してドヤ顔。
「それじゃ教えてよ!」
「フフフ!それは次回のお楽しみなのじゃ!」
ミラはウインクしながら、わざわざフォークをマイク代わりにして構える。
「……あんた、引っ張るわねえ」
私は額を押さえてため息をついた。
するとミラは突然、椅子の上に立ち、特撮ヒーロー番組の次回予告みたいに胸を張って叫んだ。
「次回!‶ひいおばあ様&ミラの未来録〟!第3曲目――『ミラちゃん、はじめての2025ねん!〜死闘!?来夢VSオーヴァー〜』!未来と過去が入り乱れて、ひいおばあ様のボケとミラのツッコミが火を吹くのじゃ!みんな、絶対に観るのじゃぞー!!」
「いや、特撮の次回予告じゃないんだから!部屋で叫ぶな!壁ドンされるだろ!」
私は慌ててミラの口を塞いだ。
……こうして未来の曾孫とのドタバタ共同生活の初日の朝は、カオスに幕を開けたのであった。




