第11話 マヨ氷の朝から始まる未来食卓物語
「それにしても、とんでもない夢だったわ。オーヴァーの奴め!夢の中でも調子に乗りやがって!」
二度寝から目覚めた私は布団の中で毒づきながら、隣に寝ている未来の曾孫――ミラの寝顔をチラッと覗く。
小さな寝息を立てていて、まるで天使……いや、昨日まで部屋にいなかった存在だからこそ、不思議な違和感が胸をよぎる。
「昨日までは、私だけの空間だったのになぁ……」
そう思うと、同じ部屋なのに、まるで別世界に迷い込んだような気分になってしまった。 異世界転生モノの主人公も、多分こんな感覚なのかな?いや、私の場合は異世界転生じゃなくて「ひいおばあちゃんモノ」だけど!
「う、うーん!ふわーわぁ!おはようなのじゃー!ひいおばあ様!」
ミラは布団からガバッと飛び起き、元気よく伸びをする。
「ご、ごめん。起こしちゃった?」と私は申し訳なさそうに言う。
「ううん!よく寝れたのじゃ!」
と、ミラはにっこり笑顔。
時計を見るとまだ朝の8時半。
――と、そこで。
〝グゥ~~~〟 私のお腹が、部屋中に響き渡るほどの重低音を響かせた。
「アハハ!ひいおばあ様、お腹空いたのか?来夢も空いたのじゃ!」
ケラケラ笑いながらお腹をさするミラ。
「こ~ら♪この時代にいる間は、来夢じゃなくてミラでしょ?」
「そうだったのじゃ!」
ミラは、ぺちんと自分の頭を小突いて照れ笑い。舌をペロッと出す姿は妙にあざとい。
私は苦笑しながら冷蔵庫を開け――固まった。
「ゲッ!氷とマヨネーズと醤油しかない」
振り返り、震える声で提案する。
「あ、あのーミラちゃん?氷でも食べる?お醤油かけると美味しいよー!マヨネーズもあるよ!うん!」
「ひいおばあ様!それは食事じゃなくて、ただの拷問なのだ!児童相談所に通報するのじゃ!」
両手を腰に当ててプンスカ怒るミラ。
「ひ、ひぃーん!だって私は貧乏フリーターなんだもん!許してよぉ!」
私は正座して土下座寸前。
そんな私を見て、ミラはフッと笑い、玄関へスタスタ歩く。
キャリーケースをゴロゴロ引き寄せると、胸を張って宣言した。
「仕方ないのう!それじゃミラが持ってきたご飯を食べるのじゃ!」
「あっ!そうだ!」
私は思い出した。
華印が未来へ帰る前に言っていた「1年分以上の食料を持たせた」というセリフを。
「ね、ねえ?その中に本当に食べ物が入ってるの?」
「もちろんじゃ!」
「わ、私にも分けてくれる?」
「OKなのじゃー!」
ガバッとケースを開けたミラ。
私は食い物にありつけると期待して、身を乗り出した――
「って、何よこれー!?」
そこにあったのは、豆粒サイズの食品サンプルと、リカちゃん人形用みたいな服と下着の山!
「どやぁ!美味しそうじゃろ?」と胸を張るミラ。
「どこがだー!ただのオモチャじゃん!期待して損したわー!」
私は半泣きで、氷にマヨネーズをかけて齧り始める。
くうぅぅ~!我ながら惨めすぎる。
そんな私をよそに、ミラは豆粒サンプルをひょいとつまみ、スキップしながら電子レンジへ。
「決めた!ミラはお子様ランチにするのじゃ!電子レンジを貸してなのだ!」
「え?おままごとでもすんの?はい、はい、どうぞ」
私は、呆れてレンジを指差す。
「えーと、500ワットで10秒チンなのじゃ!」
〝チーン!〟
レンジの扉を開けた瞬間――部屋中に広がる芳醇な香り! フワリと立ち上る湯気、濃厚なデミグラスソースの香り、揚げ物の食欲をそそる匂い……。
「う、うそ!?鼻と目がおかしくなったのかしら?」
私はゴクリと唾を飲み込む。
「わーい!おいしそうなのじゃ!」
ミラが両手で抱え出したのは――旗付きオムライス、ハンバーグ、エビフライ、フライドポテトがワンプレートに並ぶ、豪華なお子様ランチ!
「げ、げ、げぇぇ!? ど、どういう仕組み!?どこから出したの??」
私は腰を抜かして叫んだ。 ミラは、ドヤ顔でキャリーケースの中を指差す。
「ほら!あの中に、まだまだいっぱいあるじゃろ?」
豆粒サンプルの山。
――まさか全部、レンジでチンしたら本物の食べ物になるっての!?
私は震える手で氷とマヨネーズを床に置いた。
「未来の食糧問題、完全解決じゃない!?」




