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ギャルバンで昭和特撮ヲタの私が、ひいおばあちゃんになった話  作者: ひらやまけんじ
第3曲目 ミラちゃん はじめての2025ねん! 〜死闘!?来夢VSオーヴァー〜
10/23

第10話 怪獣ライブキングかと思ったらライバルバンドのオーヴァーだった件

 …………あれ?ここは、どこだろ? 私は、辺りを見渡した。 夜なのに、やけに明るい。


 どうやら、どこかの幼稚園のグラウンドのようだ。


 だが、園児の姿はもちろん、先生らしき大人の気配も無い。不気味なくらい静まり返っている。


  ――すると。


 「来夢ちゃーん!ウフフ!」


 振り返ると、目の前に菜々子が立っていた。


 両手を背中に組んで、にっこり微笑んでいる。


 「菜々子?いつからいたの?それよりも、ここどこ?幼稚園……なの?」


 私が必死に質問するのに、菜々子はただ笑顔を崩さない。


 まるで会話が噛み合っていない。


 「ねえ、私の声が聞こえてないの?」


 すると――。


 「どうした来夢?そんなマヌケな顔しちゃってさ!キャハハ!」


 今度は皇の声だ!だが姿が見えない。


 「皇でしょ?ねえ?どこにいるのよ!」


 「ここだよ!ここ!」


 声のした方を見ると、皇がブランコに座っていた。


 右手には缶ビール、顔中は真っ赤。すでに酔っている。ブランコを揺らしながら、楽しそうに足をブラブラさせている。


  「カァー!うめぇ~!ほら!来夢も一杯()るかい?」


 ブランコから降りた皇は、胸の谷間から缶ビールを取り出して私に差し出す。


 「そんな乳臭くて生温いビールが飲めるかー!」


 思わずツッコミを入れると、横から菜々子が笑いながら割って入った。


 「ダメだよ皇ちゃん!来夢ちゃん、もうお婆ちゃんなんだから、お酒を飲ませちゃ!」


 「は?お婆ちゃん!?私まだ19歳だよ!」


 動揺する私に、皇がビールを飲みながら笑った。


 「あ!そうだった!悪い!悪い!でもよ、来夢、バンド引退だな?孫の面倒見なきゃいけないんだろ?ニヒヒ!」


  「な、何言ってんのよ!」


 私は必死に反論する。だが菜々子は悪びれもせず、笑顔で告げた。


 「大丈夫だよ!来夢ちゃんの代わりに新メンバーが入ってくれたから!」


 「えっ?」


 その直後――。


 「キャーホッホッホー!!キャーホホホー!!」


 グラウンド全体に響く、不快極まりない笑い声! まるで狂ったゴリラの鳴き声のようだ。私は思わず耳を塞ぐ。


 「な、何よ、この声!?怪獣ライブキング(※)でもいるの!?」


 目を凝らすと、ジャングルジムのてっぺんに誰かが立っていた。 逆光で顔は見えないが、シルエットは妙に派手だ。


 「今行きますわよ!とぉー!」


 そいつはジャングルジムから飛び降り、私めがけて全力疾走してくる!


 「ひ、ひえぇ!こっち来んな!」


 やがて姿がハッキリした。


 「キ、キャーホッホッホー!!ハア!ハア!み、味蕾来夢!フウ!フウ!も、もうお前はお払い箱ですのよー!キャーホ、ホッホッホッホーゥ!……ウッ!ゴ、ゴホン!ゲ、ゲフン!」


 肩で息をし、盛大に咳き込みながら立ちはだかったソイツは怪獣ライブキング!……ではなく、憎きダイヤモンドブレイカーズのオーヴァー・ジュリエッタだった!


 「な、何であんたがここに!?っていうか咳き込んでるし!ダッサ!」


 すると――。


 「来夢!紹介するよー!」


 皇が、いつの間にかオーヴァーをお姫様抱っこして目の前に現れた。


 「新生スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズのギターボーカル、オーヴァー・ジュリエッタ様だ!」


 「さあー!菜々子!皇!新生スーパーヒーロー&ヒロインラヴァーズの初ライブですのよ!」


 抱っこされたままのオーヴァーが両腕を広げて叫ぶ。


 「OKさ!オーヴァー様!」


 皇はウインクしながら答える。


 「はーい!オーヴァーちゃーん!」


 菜々子は無邪気に手を振りながら、私に笑顔を向けて言った。


 「じゃあ来夢お婆ちゃん、サ・ヨ・ナ・ラ!」


 「お前ら行くなよ!私からバンド取り上げたら、ただの痛い特撮ヲタクになっちまうだろーが!」


 私は必死に追いかけるが、二人との距離は全く縮まらない。


 すると突然――。


 「ひ〜〜い〜〜おばあ〜〜さ〜〜ま〜〜!!」


 頭上から怪獣のような唸り声! 見上げると、空一面にピンク色の髪の女の子の顔が浮かんでいた。


 「な、何だ!?怪獣・幼女ザウルスか!?ショッカーの刺客!?バルタン星人の手先!?お、お前なんか全然怖くないぞ!」


 私は必死に虚勢を張って叫ぶ。 幼女ザウルスは大口を開け、私を吸い込もうとする。


 体が宙に浮き、バタバタと手足を振り回す。


 「や、やめろー!助けてええ!」


 そして私は、幼女ザウルスに飲み込まれた。


  ――次の瞬間。


 「う、うわぁぁー!!……はぁはぁ……ゆ、夢だったの?」


 自分の叫び声で目を覚ました。 心臓はバクバク、額には冷や汗。 夢だったと分かっても、まだ足が震えていた……。


 枕元の時計を見ると、まだ午前4時。 窓の外は真っ暗で、目の前の景色は幼稚園ではなく、私の部屋だった。


 「はあ、よかった……。幼女ザウルスに食べられなくて」


  私は布団に顔を埋め、胸を撫で下ろした。


 ――が、すぐにムクッと起き上がって天井に向かって叫ぶ。


 「って!今回は夢オチかよー!!昭和特撮ですら、もうちょっとマシな展開するわー!!」


 声が部屋に虚しく響いた。


 ……隣の住人に壁ドンされるまで、あと数秒である。


 ※『ウルトラマンタロウ』第2~3話に登場する怪獣。人間の笑い声みたいな咆哮が特徴的。

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