20 騎士団本部 襲撃
俺達は手持ちの、草原の男から手に入れた約10個の魔石が切れるまで、6回もの騎士狩りを行った。
目標は20セットだったが、現在14セットの装備が集まっている。
「ここで騎士団が対策をとってくるとすりゃあ『街をプロゲーマーとかランカーやらの上手い連中に任せて、あとの騎士はひらけた草原で戦う』ってのが安定択だろうな」
極端な話、全員で草原に逃げれば俺達の奇襲は通りにくい。ブルーならばこれくらいの考えは思いつくだろう。それに見たところ今は草原に駆り出してる蛮族が多いってのもある。
「確かに、さっきから街の中にあまり騎士が見つかりませんね」
「.....だろうな」
「ただ予想通りなら街中には強い騎士だけがいるってことですよね。なら多少奇襲が通らなくても、草原で孤立した騎士を狙う方が──」
「いや、街だ。騎士団本部を目指す!」
「騎士団本部.....?!」
ミルクが話した情報のひとつ。
騎士の装備入手方法は支給の他に、本部内で購入することもできると言っていた。
騎士は蛮族から手に入れた装備を使えない代わりに、ということらしい。
「騎士団の本部、特別な売店があるって言ってたろ.......?行ってみたくねえか?」
「特別な売店ですか。けど......プロとランカーがいるんですよね」
やりたくない.....というよりむしろ出来ない理由を消そうという表情で、口に出したアマヤ。
「普段はプロたちも含めてうじゃうじゃ騎士が集まってる町中。だが、今なら読みが正しけりゃあ居ても数人だ。街の他の場所にも多少人員を割きたいだろうからな」
街には俺が序盤に襲った魔道具屋のように、様々な店が配置されている。
これは完全に読みだが、店の商品は一定時間で復活する筈だ。
メタ的な思考だが、『街から離れた森や草原はじっくりだが安定して稼げる、ローリスク・ローリターン』なのに対し、『街に近い商店はリスクはあるが一瞬でデカく稼げる、ハイリスク・ハイリターン』
っていうのがシックリ来る。
「緊張してるか?」
「かもしれません。けど、やばくなったら逃げればいいですもんね」
「そうだ」
騎士狩りが始まる前に、覚えておけと言った言葉だ。
死ななければ負けじゃない。
「やばそうになったら気にせず逃げろ」
「私のことも気にせず逃げてくださいね?」
「当然だ」
勿論!
という顔で答えた俺に、微妙な視線が刺さった。
めんどくさいやつだ。
「しんとしてるな」
慎重に身を隠しながら、街の中を進んでいく。
「やっぱり、シナナキの予想通りみたいですね.....」
「一応警戒しておけよ。特に店の周りとかは特にだ」
予想通りなら街中の商店にも騎士団が配置されている。
知らずに見つかって報告され、いざ本部についてみたらびっくり仰天たくさんいましたぁっ!.....ってことになるのだけは避けたい。
「あのどでかい建物が本部だな」
ごくり.....と、隣でアマヤが固唾をのんだ。
「あの建物に....どうやって」
見える入口は正面の大扉のみ。
側面や裏側にも出入りできそうな場所は無く、こっそり近づく為には屋上か窓をどうにかして突破できるかどうか。とか、アマヤが唇に手を当てて考えているんだろうが、
「行くぞ!正面突破だ!」
迷わず突っ込むのが早い!
立ち上がって宣言すると、アマヤがちょっと待てというように手を伸ばした。
「ち、ちょっと......待ってくださいよ.....っ!?」
仕方なく俺は身体を隠していた物陰に再び戻る。
「落ち着け。変にウロウロしてるほうがやべえんだ。中に数人しかいないんだったら時間かけずにダッシュして正面突破だ」
丁寧に周りに騎士がいないか確認したところで、その最中に見つかっちまったら意味ないしな。
説明すると、アマヤが納得したように頷く。
もう一度合図を送り、俺達は本部の扉へと走った。
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ヴィィィィンッ!!!!
「なんだっ...?!」
「今なんか、通知が....?」
草原に集まり、見回りをしていた騎士たちがどよめきを上げる。
騎士たちの脳内に例外なく響いた、妙な通知音。騎士たちの中に緊張感のある空気が漂った。
「あ、これ.......見てください!」
「これはっ?!」
誰かの声を皮切りに、驚きの声がどんどん広がっていく。
各々がホログラムのUIを開いて、突然の通知の理由を目にした。
『『騎士団本部に、侵入者二名!!?』』
しかも──────このタイミング。
ブルーが出した『シナナキ対策』によって、戦闘力の低い団員たちが街を出払った今だ。
偶然かどうかはわからないが、こちらの動きを読まれているということになる。
『はぁあああっ?!本当に言ってんのか?!』
『これは....こっちの動きが完全に把握されているんですか.....?!』
戸惑い、疑心暗鬼。
混線する通信の中で、鋭い一声が上がった。
『落ち着いてくれ。想定通りさ』
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騎士団本部内。
扉を開いて本部へと侵入したシナナキに。
その瞬間。
待ちかねていたとばかりに、建物の奥から声が上がった。
「やっぱり、ね──────!」
喜びを喉の奥から吐き出す、幼気のある女の声が響いた。
シナナキとアマヤの前に、一人の少女が立ちふさがった。




