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2 俺は泥棒だ

遂に─────遂にやってきたっ。

抽選から1ヶ月。今日、10月26日。23時55分。

灰になるほど待ち焦がれたこの日が。


「水2リットル20本。よし、一本も欠けてないな?清々しいぜ全く.....」


部屋を土嚢の如く埋め尽くす水と食料は、まさに壮観だった。

これらはつい昨日、再びコンビニに買い出しに行ったときの物だが、今度はあのコンビニ店員には会えなかった。まあ、そんなことは置いておいて。


「準備……万端だ」


新品最新のフルダイブVRチェアーに座り込んで、サーバー開始のカウントダウンを血眼で見つめる。

58、59、と。やけにゆっくりとした感覚の中でカウントダウンを見つめる。


「キタァッ!!」


バシィィン!!

と、音はならないがそれに近い勢いで、VR機器を通して空中に表示されたUIを指で弾く。


「始まったっ……!」


やっと、やっとこの時がきた。

高揚感と、はやる気持ちが抑えきれない。


滾るものに身を震わせながら、サクサクと無難にキャラクリエイトを終わらせる。

一応程度の個性として髪を灰色のにしただけの、中肉中背の凡庸な男キャラクターだ。

初期装備、そして職業なんかを選ぶと、すぐに視界が眩い光とともに開かれていく。


「─────ふおぉ……」


意識せず、感嘆の声が漏れるほど。

ただの街の風景を見ただけなのに、これからの希望とワクワクで胸がいっぱいになってくる。

辺りを見回すと、誰もがその感動に浸っているようだった。

中には大声で叫んだりする者も。


「トレーラーの蛮族かよっ.....って俺が言えたことじゃないか。それに、こう呑気してる暇はねえぞ」


よし。

頭を切り替えて、やるべきことを考える。

このゲームにおいて、スタートダッシュはかなり大事だろうから、な。


その理由として─────いち早く抜きん出て強くなれば、他のまだ装備の弱いプレイヤー相手に有利を取ることが出来るからだ。

本来のPVE…..魔物との戦いがメインのゲームなら、自分の進捗段階に応じて敵も強くなっていく。が、このゲームはあくまでもPVE、プレイヤーとの戦いがメインだ。


(つまり早く、誰よりも先に強くなる方が良いってことだ。勿論、先に始めた奴に周りがやられ続ける.....って単純な展開にはならないだろうがな。ま..........細かいシステムは、今はいいか)


だから俺は、50もある職業(クラス)の中で『泥棒』を選んだ。トレーラーの中で、目立たなかったがそのような職業があることを確認していたからな。


「クックックッ───…..」

「え、どうしました?」

「あ、なんでもないっす」


妄想に浸っていたところを見られて、隣の参加者に若干引かれる。

少しだけ恥ずかしい気分になりつつも、寧ろロールプレイングとしては正しい立ち回りだと、恥ずかしがったことを俺は恥じた。


俺は『泥棒』を選んだんだ。

薄汚い、卑劣で悪辣なコソドロだ。そう、イメージしろ。


参加者たちには悪いが、許してくれ。

─────俺はこれからスリになる.....!


(へへ、人の物盗みまくって、スタートダッシュをキメてやるぜ.......!)


と、完全悪役。しかし「蛮族」という肩書きの上では至極真っ当とも呼べる作戦が、俺の攻略チャートの第一なのであった。


と、まあ心の中で盛大に意気込んだのだが。

俺は改めて周りを見渡す。

例え「スリ」の存在がバレていないとしても、数秒間相手に触れるというのは意外に難しい。

何か触るための「口実」でもあれば別なんだが。


「私は『騎士』です!よろしくお願いします!」

「あはは、よろしくね。僕は『蛮族』、敵同士になるみたいだけどねっ」


だなんて会話が耳に入る。


「おいおい.....なんだ?」


ふたりが会話する光景に、俺は怪訝な表情をせずにはいられなかった。

なぜならその会話するふたりが、お互いに「蛮族」と「騎士」だと明かしていたからだ。


このゲームは「蛮族」同士、そして「蛮族」と「騎士」というプレイヤー同士の戦いだ。

普通のMMORPGと同じように街にスポーンし、外見上は普通の人として街を行き交う訳だが、「蛮族」と「騎士」だとお互いに明らかになれば、それは一触即発となってもおかしくはない。


まさか新作ゲームに浮かれて敵同士で仲良しこよし挨拶してる訳じゃないだろうな?

そんな言葉があと一歩で口から出そうになったところで。


いや……違う。

冷静に考えろ!

そうだ。それで良いんだ!......その雰囲気こそ好都合だろうが!

その空気感が『カモフラージュ』になる……!!


突然頭に迸った悪魔的なアイデアに、俺は思わず口の端を歪ませたのだった。


当選者が100人。有名インフルエンサー、実況、配信者、などの有名人広報枠が50人。

また一部のプロゲーマー25名が招待されている。そしてそれに加えてシークレットで、同社有名ゲームのランキング上位者にも25名の枠が用意されていた。

『|Banditバンディット Onlineオンライン』のテストプレイはその200名が参加する、テストを含む記念セレブレーション的なイベントです。


tips/ 蛮族も騎士も敵同士で街にいますが、それに加えてNPCも街に存在するので、ちゃんと町民のフリをすれば騎士と争わずに済むかもしれません。

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