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15 悪巧み

「なかなか良い試合だったな」


試合終了後。

俺達はくるみちゃんと別れ、コロッセオを去り仮拠点まで戻ってきた。


「.......負けちゃったかぁ」


口元を緩めつつも、どこか悔しそうに目を細めるミルク。


「太い攻めを通されたな」

「うぅん.....ああいう猛獣みたいなのと戦うのはつかれるにゃぁ」


ミルクの頭脳をもってしても、アマヤの怒涛の攻めには骨が折れるみたいだ。

結果としてはアマヤの勝利だった。だが内容としては、言い方は悪いがアマヤの決死の投擲がたまたま刺さった……ってだけ。当たって砕けろ的な行動が決まっただけともいえる。

それを本人(アマヤ)も分かっているのか否か、微妙に思っているみたいだ。


「おい、なに不服そうな顔してんだ。勝ったんだからもっと喜べ」

「えっ....?!はっはい!」


背中を強く叩くとアマヤが飛び跳ねた。


「それとも何だ。ただ運が良かっただけの勝ちなんていらない!とでも思ってんのか?」

「いやっ、それは.......っ」


弾かれた投擲がミルクの顔面に直撃したのは完全にラッキー。

そもそも上にジャンプするように避けられていたらその時点でアマヤは詰みだった。

ただ逆に、アマヤが上半身を狙っていたらしゃがまれていたときに詰む。

──────要するに、投擲って選択は当たれば勝つし外れれば負ける運ゲーだったわけだ。


「けど勝ちは勝ちだ。いざってときに勝ち方なんて気にしてたら、取れるモンも取れねえぞ」


きつい状況、勝てそうにない相手に対して運ゲーを仕掛けるのは立派な戦術だしな。

それに1度目に俺から学んだ投擲の仕方──────高確率で当たる場所を狙えたのは素晴らしかった。


「さっきの話はこの辺にして、次の話をするか......ミルク!」

「はいはぁ~い。そんなに入ってほしいなら、仕方ないなぁあシナちゃんっ!」


ニヤケ顔で走ってくるミルクの肩を掴んで止めて、チームに入るよう申請を送る。


「おっし、ちゃんと入ったな」

「それでぇ~、なんのためにボクが欲しかったのかなあー?」

「.....見ろ!」


ジャララァ~ァンと。

インベントリにしまわれた数々のアイテムを床に広げると、ミルクが「わぁおっ!」と、派手なリアクションを見せる。


「へぇー......これって、ぜんぶ初期アイテムかな?」

「泥棒の初期スキル─────スリだ。相手に3秒間触れることでランダムにアイテムを奪うことができる。開始直後からプレイヤーからスッてきたアイテムたちだ」


初期装備.....と聞けばゴミアイテムなんじゃないかと思うかもしれないが、騎士の初期装備の一つにポーションという有益なアイテムが有る通り、これらは決してゴミなんかではない。


「それに加え、魔道具屋から盗んできたアイテムがいくつかある。見ろ」


いくつかの魔道具を床に並べる。

宝剣を模したようなものから、蛙の形のものまで。その中で俺は球体の魔道具を手に取った。


「うわぁっ?!」


球体の魔道具に魔力を込めると、球体に刻まれた細い線が開き、隙間から真っ白な煙が吹き出した。


「これはっ、全然見えないです......!」

「ほらっ」

「ちょっ.....なんですかっ?!」


試しにアマヤの顔の周りで煙を噴出させてみると、むせはしないが煙たそうに目を細められた。

十数秒間込めていた魔力を止めると、煙の排出が収まった。拠点の窓を開け、十秒ほど経つ頃には煙は晴れていった。


「煙幕を出す魔道具だ。いまので魔力を若干消費したが、何度でも使えるみたいだな」

「成る程ねぇー.......魔法使いじゃなくとも魔法は使えるんだ」


煙幕の他に、勿論攻撃に特化した魔道具もある。


「......これは、明らかにヤバそうですね」

「やめろよ?フリじゃねえぞ」


アマヤが手に持つ、妙に重厚感のある黒い球。

これって......言うまでもなく爆発物だよな.....?


「.........危ねえから預かっておく、ほら」

「わかりました」


こんなところで爆発したら拠点ごと吹き飛ぶぞ。

と思ったが、アイテムとして効果を確認してみると............なかなか意外な効果だった。


「道具なんだから当然かさばるし、魔術のような自由度はないな。けど多分、魔道具はこのゲームにおいてかなり大事な要素のはずだ」


ミルクの方に視線を向ける。


「ミルク」

「ははぁーん、分かったよシナちゃん。.....商売、したいんでしょっ」


口元をゆっくりと歪めて、アマヤがそう言う。

この序盤で、ミルク(じぶん)を仲間にしなければいけないことで、かつ、数々のアイテムを出したことに関係する。そんなところから考察したのだろう。俺の考えを、ミルクがズバリと当てた。


「ああ。情けねえ元手だがな」


俺の言葉に、ミルクの表情が変わる。

柔らかだけど、それでいて静かで、淡々とした表情に。


「たしかに元手としては少し物足りないけど、別にこれらを商品として売り出さずとも、信用してもらう為に投資するのもいいよね。タイミングは良いし.......競合もいないだろうなぁ。開始から1時間前後のこの時間、まだチームができ始めるこの時間は警戒心もゆるいだろうしねー.....」


大きな集団ごとの戦争が始まり、お互いに警戒心が高まってくるフェーズに入れば交渉もスムーズにはいかないだろう。


「ここで商売を始めて真っ先に大手へと乗り出す。デカい取引先をバックに、ぬくぬく成長できる........!良さそうだろ?」

「ぁははっ......シナちゃんは本当に面白いなあ.......」


これからの計画について熱く語る俺に。

妖しい目つきでミルクが微笑んだ。


「お前ならできるよな?」

「んぇ~?それはどうかなーっ.....お願いミルクたぁ~んっ!!って懇願してくれなきゃ、やる気起きないよぉっ」


ミルクが世界を舐め腐ったような口調で、懇願するようなポーズをお手本とばかりに見せびらかす。


「....めんどくせえ奴だ.....っ」

「早く早くーっ!」


そう急かすミルクに、俺は仕方なく立ち上がった。


「................お願いミルクたーん」

「しょうがないなぁあっ.......!」


それは完全に棒読みなセリフだったが。

喉の奥から絞り出したような声をだして、ミルクが満面の笑みを浮かべた。


「よっし、じゃあ全部任せたぞー。あ、アマヤもアイテム置いとけよ」

「えっ、シナナキは商売の方に参加しないんですか?」

「あ?.......まあ、必要になったら言ってくるだろ。とりあえずはミルク一人で十分だ」

「まかせなさぁいっ」


ミルクは余裕の笑みでピースを作る。

基本的には俺やアマヤがいない方がスムーズだろう。........女アバターだし、どうせハニトラでも仕掛けるんだろうからな。


「じゃあ、これから私達はどうするんですかっ?」

「物資集めだ。商売するにも元手が足りないからな。あとは.....情報集めも必要だな。そうだ、ミルク!数分でいいから情報共有をしておかないか」

「ん~、そうだねっ」


俺達は、軽くこれまでに得た情報を共有することにする。

先ず、俺はさきに開示した、各々のスキルについて。

当然ながら、アマヤとミルクも初期スキルがある。


「えっと、私は『剣士』なので、初期スキルは『踏み込み』ですね」


前に向かって素早く移動するスキルで、そこから剣を振り下ろすと『踏み込み斬り』に派生し高い火力が出せる。と、アマヤが説明した。


「ふーん。アマヤちゃんっ、試しに使ってみてよ」

「....わかりました。じゃあやってみますね」


ミルクの提案に答え、アマヤは一本の直剣を取り出した。

そして両手で直剣を正眼に構えたアマヤが、一歩。体重を載せた重たい踏み込みから、流れるように一閃を放つ。


「おぉー!まさに剣士って感じだな」

「へぇ、それってどういう感覚なのかなぁ?」


ミルクの疑問に、アマヤは眉間にシワを作って頭を悩ませる。


「ええと......最適な動きが勝手に分かっていて.....綺麗な文字をなぞるような感覚でしょうか。多分全くの初心者でもだいたい同じような動きができると思いますよ。体が勝手に動くわけじゃないので、ある程度のアドリブが効くようですね」

「なるほど....!うん、ありがとねぇっ~」


一人納得した様子のミルクが、アマヤに続いてスキルの説明を始める。


「ミルクちゃんの職業はぁ~、『詐欺師』なのだ!」


字面に似つかわしくない可愛らしいポーズを取って、ミルクが言い放つ。


「詐欺師って……ま、蛮族らしくていいな」

「初期スキルはぁ──────『変声』でしたよっ?」


うげっ.....?!

ミルクの声が少しだけ低く変わって、そう.....聞き馴染みのある、アマヤみたいな声になっていった。


「なっ...?え....?!私の声でしたよねっ?!」

「そうでしたよっ?」

「ちょっと!?やめてください!?」


最悪な奴が最悪なスキルを手にしてしまったな。


「あははっ.......!!それとボク、いい情報手に入れちゃったんだよねえ」


そう言ってミルクが話し始める。さっきまでのおふざけモードから一転して、真面目に話すミルク。

その情報は思わず目を見張るものだった。

──────内容は、騎士の内情と細かな仕様。


「1時間後に.....装備の初支給ですか......?」

「へぇ」


騎士は蛮族と違い、自由に装備を手に入れられない代わりに、特別に装備が支給されることになっている。これは前から知っていた情報だが、それに加えてミルクの細かな情報が加わった。

支給される装備の種類、失ってから手に入る時間。本部内で別途購入できる装備....など。

その中の一つに、今日初めて支給される時間の情報があった。


「聞いたときから1時間だから、ちょうど今頃じゃないかな~?」


なんでこんな細かいことまで知ってんだよ!という視線を送ると、「なんでだろうねっ」とミルクから誤魔化すような艶やかな視線を返された。

この野郎.....やっぱりハニトラしてんだろ。もし被害にあった純情な騎士クンが居たなら、ご愁傷さん。

それにしても、


「支給される装備.....ね」

「なんか悪いこと考えてますよねっ?」


舌なめずり.......はしないが、『支給される装備』という言葉に自然と口元を歪ませていた俺に、アマヤが思わず口を開いた。


「分かるだろ?ミルク」

「そうだねぇっ........商売を始めるなら、“配布された騎士の装備”なんて商品にもってこいだよ。それに、大量に騎士の装備を入荷できたら、その時点でこちらが使えるってことを示せるからねっ」


それはまるで、「君ならそれくらいできて当然だよね?」と暗に挑発しているようで。

商売のことを全部任せると言った俺が、ここでいやと言える訳がないだろう。


「アマヤ」

「はい.....?!」

「────行くぞ、騎士狩りだ!」


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