14 決闘!アマヤ対ミルク
開始した瞬間。
速攻!とばかりにアマヤが駆け出した。
「開幕!アマヤの特攻ですっ!これにはどういう意図があると思いますかっ?!」
早速解説を俺へと振るレモンちゃん。
始めたばかりの俺が.......とも思うが、とりあえず雰囲気で語っていこうか。
「性格だろ。アマヤは多分、とにかく攻めて相手に考える隙を与えさせない.....ってスタイルが得意なんじゃねえかな」
「そうなんですね!対するキャラメルミルクは、どのようなタイプでしょうかっ!?」
「ミルクは率直に言うなら、超頭脳派の対応型だな!そう考えると、」
「アマヤの動きが有利に働く......ってことでしょうか!」
と、レモンちゃん。
考える隙を与えさせないタイプと、考えるタイプ。
普通なら前者が有利だと、そう思うよな?
「“普通”の頭脳はタイプに対しては、効くかもしれねえな。それこそ、俺とかみたいな奴には。でも..........あいつは超頭脳派なんだよ。頭脳派を超えた、頭脳派だっ」
「ちょぉう.......頭脳派.....ですかっ....!!」
ねっとりとした言い方をするレモンちゃん。
「そうだ。普通なら目先の攻防で頭がパンクしちゃうって状況でも、ミルクは相手の動きを観察しつつ長期的な読み合いまで考えることができる」
頭の回転がクソ早い上に、並行処理も分析能力も高い。
おまけに化け物じみた記憶力もあって........とにかく超頭脳派なのさ。
「ただ、アマヤも素人じゃねえ。タダで守りながら分析できるほど、甘くはない」
「おっっと!アマヤの一撃がキャラメルミルクの左腕に直撃した─────ッ!!防戦一方のキャラメルミルクは少なからずダメージを受けていますッ!!」
ミルクがその顔を微かに歪めた。
超頭脳派が、押されている。
「頭は回るけど身体はついてこないってやつだな。考えてから行動するのと、直感で行動するのじゃあスピードが段違いだ。ゲームの上手さは頭の善し悪しだけじゃない」
「試合は頭の良さだけで決まるわけではないんですね!」
「分かりやすいのだと反射神経だとか、動体視力だとか。あとは単純に、深く考えなくても正しい行動ができるっつう........いわゆるセンスとか直勘力みたいなところだな」
頭脳派と、感覚派。ミルクは確かにゲーマー最強の頭脳を持っているが、俺のほうが勝ち越しているという自負がある。.......まあ、今はそれより試合だ。
「激しい近距離戦の攻防が続きますっ!!」
「正確にはわからないが、体力は見ていた感じミルクが四割......アマヤが八割ってところか」
「このまま進めばアマヤが勝つでしょうかっ?」
「それは違う。さっき言った通り、ミルクはタダで分析できないだけだ。今のペースだと.........ミルクが勝つだろ」
そう。試合は表面下で傾いてきている。
───ミルクの有利へとな。
「これはミルクがアマヤに対応するのが先か、アマヤがミルクを削りきるが先か.....ってレースなのさ」
「なるほどぉっ!!さてさて、それを踏まえて試合の行方を見守っていきましょうかっ!!」
アマヤが前に出て、ミルクに直剣を当てにいく。ミルクはそれに対処しつつ、隙がありそうなら攻撃を仕掛ける。最初からその流れは変わっていないが、
「少しずつ、ミルクの表情に余裕が戻ってきたな。アマヤも動きを変えつつ、いろんな手札を切っているが、小さな手癖なんかを突かれて攻撃を受ける数が増えてってる」
「これはっ、アマヤの攻めが崩れるのかっ!?キャラメルミルクの分析が着実に進んでいるか─────ッ?!」
まずいっ!このままじゃあ.......と。
ここで日和るようなタマじゃねえよな.....アマヤ!
「.......どうする?このままじゃあミルクの思うツボだぜ......?!」
「アマヤの攻撃が通らないっ!?キャラメルミルクからの反撃が止まりませんっ!!」
眉をしかめて一度距離をとったアマヤ。
しかし、その目は確かに反撃の機会を伺っているようだった。
「膠着.......!両者ともお互いを観察するように睨み合っています!!」
「流石にアマヤも立ち回りを変えたな......攻め方は完全にバレたが、守り方はバレていないと踏んだか」
だが、ミルクは攻め方のクセから守り方にもある程度のアタリは付けている筈だ。
今更苦手な守りに入ったところで......ってのは、本人が一番分かってるだろ……?
「再び!前へと駆け出しましたアマヤッ!!これは─────」
「いつもの直剣の振り下ろし.......いやッ!投擲だ!!」
振り下ろす直前まで引き付けたギリギリの投擲。
直剣が飛ぶ瞬間。
ミルクはそれを察知し避ける姿勢に入った。初めての投擲、純粋な択。
左右か、上下か?ミルクはアマヤの手元から予測して避けるしか無い。
「良いっ!」
アマヤの投擲の先は、ミルクの腰まわり。
初めてアマヤと会った時。
逃走劇の中で、俺はアマヤの投擲を下にかがみ込むことで避けた。素早い投擲でも、熟練したゲーマーならば予備動作から察知して回避することができる。
しかし、直感ではなく考えてから動く俺達のような“頭脳派”ゲーマーは特に、大抵腰回りの回避が間に合わない。咄嗟にできる屈伸や、身体を左右に曲げる避け方では、腰回りの軸が変わらないからだ。
─────二度目は当てます!.....そんな、意気揚々とした表情をアマヤが見せた。
「直剣がっ、キャラメルミルクに直撃したぁーッ!?」
姿勢を低くして避けようとしたミルクの、ちょうど首元へと。
「いやっ!ダメージはないっ!!ミルクは腰回りに投げられることを想定して、あらかじめ弾けるように短剣を準備していた!だが─────!なんてラッキーな奴だ!」
アマヤには幸運なことに。
短刀で弾き返された直剣は、そのままミルクの顔面へと飛んでいった。
まるで、鉄拳のアッパーカットの如く。
「キャラメルミルクは身体を大きく仰け反らせ、体勢を崩しましたッ!!」
「チャンスだ!!」
アマヤが駆け出す。
対するミルクは、アマヤがどのように攻めてくるか。その目には鮮明に見えているはずだ。
どう攻めてくるか、どう読み合ってくるか。すべて分析を終えた。
けれど、どれだけ頭の回転が早くとも、
「盾での無慈悲な強打がキャラメルミルクに炸裂する───ッ!!!」
すべてが分かっていても、体勢が崩れていれば回避はできない。
ペースが崩れれば、直感ノータイムで攻撃を続けてくるアマヤを、止められない............!
「ラッシュ!ラッシュ!ラァァァッシュ!!!」
「終わりだっ...........!!」
一度できた綻びを取り繕う暇も無く。
アマヤの怒涛の連撃を防ぎ切る事は、できなかった。
「勝者ッ─────アァマァーヤァァ!!!!!」
熱き戦いが、幕を閉じたのだった。




