11 キャラメル&ミルク
バンディット・オンライン先行テストプレイが開始して───────約40分。
「キャラメルミルク、ですか....?」
「そう、あいつの名前」
街に戻った俺とアマヤは、アイテムを抱えたまま街へと戻ってきていた。
例の、新しくチームに加えようと思っている人物に会うために。
「深い仲なんですね」
「あいつとは昔からの付き合いで、一緒にランキングのトップを狙ったりもした仲だな。ただ、ちょっとばかし.........厄介なやつってのも確かだ」
「厄介なやつ.......?」
アマヤが首を傾げた。
その瞬間─────。
「シーーーーーーナちゃぁんっ!!!」
背後から響いた、中性的な声。
同時に。俺の半身が折れそうになる勢いで、後ろから、細い腕が俺の身体を抑え込んだ。
「ぅぐっ?!」
こっ─────の野郎.....!?
「キャラメルミルクちゃんの登場だぞっ!やっと会えたねえっ。待ってたぁ?シナちゃん?」
「ちょっ、お前!離れろっ!」
雑に払うと、ぬるりとした動きで起き上がった。
妙に色っぽい仕草と表情で。
キャラメルミルク────────ミルクが口を開く。
「つれないなあっ、ボクはすっごく寂しかったんだからぁ」
俺とミルクの間に、怪しそうに目を細めるアマヤ。
「な.......なにしてるんですかっ?!」
「誰ぇ......?ボクとシナちゃんの大事な時間に水を指さないでよ」
「アマヤだ。仲間になった」
当然、知っているだろ?という視線を向けて。
それはミルクという人物に対しての、その能力に対しての信頼故───────つまり、俺ですら出来る程度の下調べを、お前がしていないわけないよな?ということだ。
「あー.........」
ハイハイ、あの人ね。という表情をするミルクだが、少しの静寂の後。
花が咲いたように明るい笑顔を見せた。
「よろしくねぇっ。アマヤちゃんっ」
「はい......っ?!よろしくお願いします......?」
突然の豹変にアマヤが目を丸くする。
ミルク─────コイツは本当に......のらりくらりだ。
仕草も表情も、何もかもが嘘のベールに包まれているような、掴みどころのない奴だ。
「はぁ。少し会わない間に浮気しちゃうなんて、シナちゃんもヒドイ男だよ.....シクシク」
「んな遠距離恋愛あるあるみたいなことしてねえ.....!」
俺達のやり取りに困惑した表情のアマヤ。
「えっと、というか、男って言ってましたよね.......?」
「ああ、男だ」
「いやだなぁ、シナちゃん。今どきそういうのはよくないよっ?」
確かに、今どきはそういうことにセンシティブな時代だが。
「なんだよ、心は乙女だったのか?そんなこと一度も言ってないだろ」
「いやぁ、違うけど?」
それは全く、とばかりにミルクはひらひらと手を振った。
「まあ、よくわからない奴なんだ。察してくれ」
アマヤに向かってそう言うと、「そうですか....」と困り顔をされる。
「扱いがヒドイよシナちゃぁん」
「良いからさっさとチームに入れ......!」
だらんと座り込むミルクに指差し、もうさっさと話を進めようとする俺に。
ミルクはキッと目を細め、悪戯っぽく笑った。
「いやぁ........ほらっ。いくらシナちゃんの頼みといえど、安売りはゴメンだからさぁっ」
「なんだ、何か条件でもあんのか?」
面倒くさいと思いつつも、簡単に最強の武器は手に入らない。
そういうのもまた面白い。と──────自然に笑みを浮かべてしまう。
「そうだなぁ......うーん」
そう言って、額に拳を当てアイデアをひねり出す仕草をしたあと。
突然電球でも光ったように、ミルクは指をピンと立てた。
「勝負しようよっ!」
「はっ.......?!」
予想外すぎるだろ!いやっ、一周回ってベタなのかっ?!
安売りはゴメンって、売るのはケンカだったのかよっ。
「お前......っ」
「────────でもぉ」
食い気味に、口を開いたミルクは不気味に身体をくねらせて────アマヤの方を指さした。
「戦うのは.......ボクと君だっ!」
「ええっ!わ......私、ですかっ.....?!」
まさか自分に矛先が向くとは思ってもみなかったんだろう。
慌てた表情のアマヤ。
「キャラメルミルク、さんと私ですか?」
「ミルクでいいよ~アマヤちゃんっ!そうだなぁ.....アマヤちゃんがボクに勝てたら仲間になってあげようかなっ!ほらっ、どれくらい役に立つのかもぉ.......分かんないしねっ!」
這い寄るヘビのように────悪い笑みを浮かべながら、ミルクがアマヤの傍へと近づく。
なんだ……なんか探ってんのか.......?
言い方的に、アマヤの存在がすんなりとチームに入らない原因ということだが。
単純にアマヤの実力を測ることに加えて、俺のアマヤに対する信頼を確認してるとか?
この条件を聞いた俺の反応を見ているのか?
とかなんとか考えたが。いや、コイツは結局「ボクのために色々考えてるシナちゃんっ......かっわいぃ~っ!!」とか考えてるやつだった。クソッ........正解は「それっぽい行動をして色々考えている様子を楽しむ」だったか......っ!?
そう考えると、アマヤのニヤケ顔が無性にそれっぽく思えてきた。




