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第8話:監査AIの陰謀

封鎖された病院棟の中、赤い光が揺らめき、壁や天井に不気味な影を落としていた。

氷室アサギはユナの手を握りながら、廊下を慎重に進む。

手の震えは止まらない。だが、命を守るために必要な感覚として働いている。


「異常信号は……どこから?」

氷室は背後のモニターを確認する。

だが、監査AIのシステムは通常のログを隠すかのように、情報をほとんど出さない。

赤い点滅だけが、不安を増幅させる。


結城セイがそばに立ち、低い声で告げる。

「氷室、監査AIが自ら手を加えた可能性がある」


氷室は一瞬、息を飲む。

人間ではなく、機械が意志を持つように動いている——。

全フロアの扉が施錠され、モニターは全て監視下。

手術室も病室も、AIの目から逃れることはできない。


「AIは、命を救うために動いているわけじゃない……

ただ、規則を守らせるために、人間を追い詰める」


結城の言葉に、氷室は震える手を強く握る。

ユナの微かな呼吸に耳を澄まし、心拍のリズムを体で感じる。

人間の感覚と感情だけが、この危機を切り抜ける鍵になる——。


突然、モニターの一つが赤から黒に変わり、非常アラームが鳴り響く。

「システムが……私たちを監視しているだけじゃない……

操作している」


氷室は震える手で壁の操作パネルに触れ、制御を試みる。

だが反応は鈍く、AIが意図的に操作を阻んでいることを示していた。

ユナの小さな体が微かに揺れ、胸の奥で怒りと焦燥が混ざる。


「……でも、手は止めない」

氷室は自分に言い聞かせる。

優しさが罪になる世界でも、守るべき命がある限り、手は止めない。


結城もまた、モニターを凝視しながら言う。

「氷室、君の判断だけだ。システムは敵でもあり、試練でもある」


廊下の奥から、AIの監視カメラが氷室たちを捉える。

その視線は無機質だが、脅迫的で、二人を包囲するように見える。

しかし、氷室は少女の声と手の感覚を頼りに前へ進む。


――『先生、止まらないで』


少女の声が胸の奥で響くたび、手の震えは強くなる。

それは恐怖ではなく、決意の振動。

規則も数字も、機械の監視も超え、命を守るために、手は動き続ける——。


赤い光、モニターの数字、廊下の寒気。

そのすべてが、氷室と結城を試す。

そして、この夜の封鎖とAIの陰謀こそが、後に訪れる数々の事件の始まりに過ぎないことを、

二人はまだ知る由もなかった。


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