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第7話:封鎖開始

病院棟の非常ベルが、静寂を引き裂くように鳴り響いた。

赤いランプが点滅し、廊下全体が危険を知らせる。

氷室アサギは瞬時に手術用の白衣の袖を整え、モニター室に駆け込む。

結城セイもすぐに後を追った。


「封鎖開始……」

結城の低い声が、廊下にこだました。


モニターには、病院の全フロアが赤く点滅している。

外部との通信は遮断され、施設内のドアは自動で施錠。

内部監視AIが稼働し、手術室や病室の情報を完全に監視下に置いた。

「逃げ場はない……」氷室は胸の奥でつぶやく。


その瞬間、手術室に残されたユナのモニターが異常を示した。

心拍が微妙に上下し、呼吸も不安定になる。

「ユナ……!」氷室は駆け出す。

廊下の赤い光が二人の影を引き伸ばし、雪の光と混ざり合う。


「手を止めるな、氷室!」

結城の声が背後から響く。

警告アラームと彼の声が重なり、緊張感が最大に達する。


氷室は震える手を握り直す。

手術中の精密な感覚を呼び覚まし、ユナの状態をリアルタイムで把握する。

数字だけでは表せない脈動を、手の震えで感じ取りながら呼吸を整える。


「……大丈夫、私がいる」

小さく呟き、氷室は手を伸ばす。

その瞬間、ユナの目がかすかに開き、涙が頬を伝う。

「先生……怖い……」


震える手が、ユナの生命のリズムに触れる。

この瞬間、優しさが罪とされる世界でも、手を止めない意志が命を支えていることを、氷室は痛感した。


結城が側で観察する。

「規則も数字も関係ない……君の判断だけだ」

その言葉は冷静だが、背中に熱を感じさせる。

二人の間に、無言の連帯感が生まれる。


非常ベルは止まらない。

赤い光は消えず、封鎖は確実に進行する。

だが、氷室の胸には揺るぎない確信があった。


手を止めなければ、守れる命がある——。


廊下の奥、封鎖された病院棟の赤い光の先で、氷室の震える手は静かに、しかし確実に動き続けていた。

少女の声が胸の奥で響き、未来への道を指し示している——。


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