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第4話:封鎖の兆し

雪山に建つ雪峰医療裁定所の窓の外、冬の光が静かに差し込んでいた。

白銀の景色が無機質に広がり、外界から隔絶された施設の孤独を強調する。

氷室アサギは監査室から戻る途中、廊下の窓に映る自分の姿を見つめた。

手の震えは止まらず、胸の奥にわずかな不安が芽生えている。


「何か、変だ……」


声に出さず、氷室は目を細めた。

モニターの記録に、小さな異変があった。

手術中のログの一部が、微妙に改ざんされている。

誰かが手を加えたのか、それともシステムの誤作動か——。


結城セイが近づく。

「気づいたか。ログが一部消えている。誰かが操作した痕跡だ」


氷室はわずかに肩をすくめる。

数字や記録は冷たいが、目に見えない“異変”は胸の奥に刺さる。

自分の手術が正確であったとしても、外部にどう見えるかは別問題だった。


「封鎖されるかもしれない」


結城の言葉は淡々としているが、氷室には警告以上の意味を持った。

封鎖とは、外部との通信が断たれ、施設が完全に閉鎖されること。

逃げ場のない監獄のような環境で、医療行為はすべて監査AIに依存することになる。


氷室の脳裏に、少女の声が響く。


――『……先生、ここで止まらないで』


その声は、震える手をさらに強くする。

優しさを捨てずに、誰かを守るために——。


廊下の奥から、非常ベルが低く鳴る。

赤い点滅が警告する。

「封鎖警報……?」

氷室は息をのむ。

結城はモニターに目を落とし、数字を読み解く。


「可能性としては高い。内部改ざんが続けば、理事長が決断するだろう」


施設の奥、監査AIの中枢で小さな異常が連鎖している。

誰も気づかないうちに、システムは封鎖に向けて静かに準備を始めていた。

氷室と結城、そしてまだ知らぬ少女の存在——。

すべてが、次の事件の伏線となる。


「……私たちは、ここから逃げられない」


氷室の声は小さい。

だが震える手は、決して止まらない。

手術で培った感覚と、少女の声が胸の奥で重なり、進むべき道を示す。


廊下の赤い光、監査室の数字、冷たい雪景色——。

そのすべてが、氷室に緊張と覚悟を刻み込む。


この施設で何が起きるのか。

誰も知らないまま、封鎖は静かに迫っていた——。


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