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第23話:雪峰の解放
雪峰病院の赤い非常灯は消え、薄明かりの中に静寂が戻っていた。
氷室アサギはユナを抱え、手の震えを研ぎ澄ませながら最後の廊下を進む。
手の震えはもはや恐怖ではなく、命の脈動を感じ取る感覚として確立していた。
結城セイが低く告げる。
「氷室、これで雪峰病院の解放が始まる。AIの制御は解除され、影の監視者も撤退する」
廊下の奥で、影の監視者が最後に振り返る。
「君の手の震えが……人をここまで救うとはな」
そして、静かに姿を消す。
雪峰病院全体に残っていた赤い光と影が、一気に消え去った瞬間だった。
氷室は深く息を吸い、ユナを抱きしめる。
「大丈夫、もう怖くない」
ユナは小さく頷き、手を握り返す。
震える手は依然としてあるが、それは生きる力を示す確かな証となった。
結城セイが微笑む。
「君の意思と感覚が、この施設を解放した。手を止めない力が希望を生んだのだ」
廊下の扉が開き、外の雪景色が目に飛び込む。
氷室とユナ、結城は光の中に歩み出る。
雪の冷たさが、恐怖と試練の痕跡を洗い流すようだった。
雪峰病院の解放は、手を止めない意思と命を守る感覚の勝利だった。
試練のすべてを超え、希望と未来が二人を待っていた——。




