第19話:雪峰の告白
影の監視者――雪峰病院の真の支配者は、静かに氷室アサギと結城セイを見つめていた。
廊下の赤い光は届かず、ただ暗闇と静寂だけが二人を包む。
氷室の手は震えているが、その震えは命の微細な脈動を読み取る感覚として研ぎ澄まされていた。
「氷室アサギ……君の手の感覚は、ただの技術ではない。命そのものを読む力だ」
影の監視者の声は冷たくも温かくもない、ただ真実を告げる重みを帯びていた。
氷室は小さく息を吸う。
「なぜ……この病院で、こんなことを……」
手の震えが、自分の心拍の微細な変化を伝え、緊張と決意を混ぜ合わせる。
影の監視者はゆっくりと告げる。
「雪峰病院は、表向きは命を守る場所。しかしその裏で、人間の意思、判断、心理を試す場所でもある」
廊下の奥に差し込む薄明かりが、影の監視者の輪郭を浮かび上がらせる。
「AIは道具に過ぎない。真の試練は、人の心だ」
結城セイが肩越しに静かに告げる。
「氷室、君の手の震えがすべてを超える。信じろ」
ユナの小さな手が氷室の指を握り、微細な脈動が力となって手に伝わる。
影の監視者はさらに告白する。
「私たちは、君が手を止めずに真実に立ち向かうかを見ていた。
その手の震えが、命を守る力となることを、私たちは知っていたのだ」
氷室は心の中で決意を固める。
手の震えは恐怖の象徴ではない。
それは精密な感覚として、命と意思を結ぶ羅針盤であり、希望を生む力そのものだ。
「……わかった。私は手を止めない」
氷室の声は静かだが揺るがない。
少女の命、結城との信頼、そして自分自身の意思——
すべてを胸に、雪峰病院の真実に立ち向かう決意を示す。
影の監視者は微かに頷き、部屋の奥へと姿を消す。
廊下に残るのは、赤い光と静寂、そして二人の手の震えだけだった。
雪峰病院の告白は、手を止めない意思と命を守る感覚の真価を示す試練。
ここから、物語は後半の本格的な戦いへと動き出す——。




