第17話:雪峰病院の真実
封鎖解除された雪峰病院の廊下には、まだ赤い非常灯の残像が微かに揺れていた。
氷室アサギはユナを抱え、震える手を握り直しながら歩く。
手の震えは恐怖ではなく、命の脈動を感じ取る精密な感覚として生き続けていた。
結城セイが低く告げる。
「氷室、ここからが本当の戦いだ。雪峰病院には、表には出ない真実が隠されている」
氷室は胸の奥が締め付けられるのを感じる。
監査AIによる封鎖、影の監視者、迷宮の罠——
すべては、この病院の核心に迫るための前哨戦に過ぎなかった。
ユナは小さく震えながらも、氷室の腕にしがみつく。
その温もりが、手の震えをさらに研ぎ澄ませる。
「大丈夫、もうすぐ真実が見える」
声には力はないが、心の決意が二人を突き動かす。
廊下の奥、秘密の扉が現れる。
氷室は手の震えを頼りに、その扉の微細な鍵穴を探り当てる。
数字や規則では測れない、感覚だけが導く唯一の道だった。
結城が警告する。
「この先、AIの監視は最も厳しくなる。油断すれば、命は簡単に失われる」
氷室は深く息を吸い、手の震えを集中力に変える。
ユナの命、結城との信頼、自らの意思——
すべてを胸に刻み、扉を開く瞬間を迎える。
扉の向こうには、雪峰病院の真実が待っていた。
監査AIの背後に潜む意図、影の監視者の正体、そして施設が抱える秘密。
赤い光と影が交錯する空間で、氷室の手は止まらない。
少女ユナの小さな手と、結城の冷静な視線が力を与え、未知の真実に立ち向かう勇気をもたらす。
雪峰病院の真実は、封鎖、迷宮、罠を超えた先にある。
手を止めない意思と信頼、そして命を守る感覚だけが、この過酷な世界を生き抜く鍵となる——。




