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3-5.『掃除当番』
放課後。
「小多九さん、小多九さんっ」
世加依はそう名字で呼び止められる。
「この後さあ私たち用事があるんだよねえ、ごめんだけど掃除当番代わってくれないかなあ〜?」
そう詰め寄ってきたのは、クラスでイケてる女子たちのグループだった。
彼女らの顔を見て今日の体育の授業を思い出す。運動オンチなワタシの様子を見て笑っていた彼女たちの表情を思い出す。
嘲笑われた事に対する憤りが頭を掠めたが、スクールカーストの低い自分が抗う事は自殺行為に近くて、世加依は「う、うん、いいよ」と小さな声で承諾した。
「おっけサンキュー!小多九さんほんと優しい!」
そう言われて世加依はモップを押し付けられた。
陰では天パのワタシは「モジャ子」と呼ばれていることも知っている。
だけどスクールカーストの低いワタシが不服を唱えることなんで出来はしない。ただ受け入れるしか無いのだ。
世加依はそうして腹を据えると黙々とモップがけを始めるのだった。