3-3.『居眠り常習犯・流川美空』
国語の授業。
担任教師、工藤美咲の読み上げが、どこか子守唄のようにも聞こえてくるなかで、世加依は意識を朦朧とさせていた。
昨夜の徹夜のせいでもあるだろう。
とにかく眠ってしまいそうだ。
その時、
ポカン!
丸めた教科書で頭を小突く、甲高い音。
世加依は、自分の頭が叩かれたのかと錯覚したが、聞こえてきたのは教室隅の方からだった。
教師の注意の声で覚醒した世加依は、声の方を向いた。
いつも机に突っ伏している常習犯、「流川美空」君が注意されたようだった。
彼とはこの高校に入学してから面識があり、二年に上がった今年は初めてクラスメイトになったわけだが、実際、今まで一度も会話したことは無い。
まあコミュ障第一級資格を有する自分にとっては、
「話したことが無い」のは別段、彼に限ったことでは無いわけだが。
彼について分かっていることといえば、不機嫌そうな切れ長の目が特徴的である事と、居眠り常習犯であるという事ぐらい。
いつも学校に来ては、ほとんどの授業で机に突っ伏して寝ています。
彼にとって学校とは寝室なのだろうか。
ミサキ「やる気がないなら帰れ」
美咲教諭の棘のあるその言葉に、ミソラ君は「すいません」と苛立ちを含んだ声で前へ向き直った。