表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/62

1.『ヲタク』の『セカイ』

セカイ「んはっ!?」


我ながら、まぬけな寝ぼけ声だった。


女子高生2年、小多九世加依オタクセカイ。


『また…同じ『夢』っ‥』。


なぜか頬を涙が伝っていた。


セカイ(変なの…)


少女が泣いている、同じ夢だ。


世加依は眼鏡を掛けなおし、口端のよだれを拭いた。


目の前のPC画面には乙女ゲーム『ジャック&プリンス』の推しキャラ「デルゼア・クロスフォード」が映っていた。


デルゼア「私にとってキミは、唯一無二の存在なんだ。だから貴女でなくてはダメなんです」


という甘いセリフがテキストで表示されている。


艶やかな黒髪に切れ長の眼をした美顔イケメン


セカイ「ぬふふう…」


推し「デルゼア・クロスフォード」の甘い言葉に世加依はウットリした。


胸をまさぐられるような、鋭いときめきを感じる。やっぱり『ジャック&プリンス』ではデルゼア様が一番だ。


そんな確信を心に抱く彼女の部屋。


アニメ・マンガ・ゲーム・フィギュア・プラモデル・本などが並ぶまさにヲタクでヲタクによるヲタクのための部屋だった。


夜風で風鈴が鳴り、純白のカーテンがたゆたう。


夜空には星は見えず、半月だけがひっそりと浮かんでいた。


世加依は立ち上がり、窓を閉めた。


セカイ「寒くなってきたな……!」


季節は秋を迎えつつあり、夏の暑さから寒さへと気温は移行しつつあった。


バタン。


空気が密閉され、部屋は何人も立ち入れぬ空間となり、彼女のヲタ活が再び始動した。


デジタル時計にはPM23:01と表示されており、日付は8月31日となっていた。明日から夏休みが終わり、新学期が始まるが、オタクの就寝時間は遅いのだ。


そんな彼女を見下ろすひとつの存在があった。


夜空に浮かび、月下で光り輝く、白髪の不思議な少女。


少女は只々、窓を閉めた世加依の姿を見下ろしながら、口元に「ふふふ」と笑みを浮かべていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ