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ファンタジー・フィーストへようこそ

リリーは椅子にもたれかかり、その言葉の重みを空気に落とした。

「最初の目標は、この街に現れた《ブラックアビス》の現行宿主を見つけることよ。簡単じゃないわ。そいつは普通の人間に紛れていて、日が経つごとに危険度が増していく」

「で、二つ目は?」とリカが腕を組んで尋ねた。

「これらのクリスタルがどうやって地球に来ているのかを突き止めること。そのためには時間と、安全な拠点が必要になるわ」


ユイは肘をテーブルにつき、まだ状況を咀嚼しきれずにいた。

「じゃあ、その間、私たちは何をすればいいの?」

「私と一緒に動くのよ」リリーは反論の余地を与えない笑みを浮かべた。「街の秩序を保ち、監視を続けるの」


ユイが何か言い返そうとした瞬間、部屋全体が歪み始めた。壁も天井も見えない流れに引き込まれるように揺らぎ、一瞬で景色が変わる。

次の瞬間には、静かな路地裏に立っていた。遠くには街の灯りが瞬いている。


「ついてきて」リリーは何事もなかったかのように歩き出す。

二人はまだ混乱したまま後を追った。やがて、竜と星の彫刻が施された扉の前に着く。頭上の看板にはこう書かれていた。

《ファンタジー・フィースト》


中に入ると、温かみのある空気が迎えてくれた。濃い木目のテーブル、黄金色のランプ、ポーションや宝石のように飾られたスイーツのショーケース。

メイド服や執事服に身を包んだスタッフたちが、愛想よく客をもてなしている。


「ここが私の店」リリーは両腕を広げた。「戦っていないときはここで過ごすの。ここがあなたたちの作戦拠点になるわ」


リカは目を丸くする。

「もしかして…ここで働くってこと?メイドとして?」

リリーは口元だけで笑う。

「その通り。ファンタジーメイドとして働きながら、この世界を守る《ラディアント☆マジカルウォリアーズ》になるの」


ユイは額を押さえてため息をつく。

「ボクサーから魔法メイドか…だんだん意味わからなくなってきた」

ミツキは母の膝の上で手を叩いて大喜びした。

「ぜったい似合うよ!」

ミハルは小さく笑ったが、本当にこの場所が安全なのか、まだ半信半疑だった。


路地を歩いている途中、ユイが鼻で笑う。

「で…あの二人はどうなるの?」ミハルとミツキを顎で示す。

「そうそう」リカも続けた。「二人もここで働くの?」


リリーは足を止め、腕を組んで振り返った。

「まず第一に、彼女たちには力がない。第二に、子供は働けない。法律で禁止されているし、私は警察じゃないけど…それだけは守る。第三に…彼女たちを連れてきたのは、あなたたちの変身を見たからよ。つまり、もう正体を知ってしまった」


ミハルは少し身構える。

「それって…」

「つまり」リリーはきっぱり言った。「もう関わってしまったということ。だからミハル、あなたにはここで働いてもらうわ。娘を守るため、そして全体を把握するために」


ミツキは母の腕の中から手を挙げた。

「じゃあ私は何するの?」

リリーは柔らかく笑って答える。

「あなたはママと一緒にいるの。戦わない、危ないこともしない。でも…」彼女は顔を近づけた。「《ラディアント☆マジカルウォリアーズ》の活躍を見守ることはできるわ」


ミハルはため息をつき、ユイとリカを見た。

「まあ…選択肢はなさそうね」

「ないわ」リリーは断言する。「ここにいる全員に役割がある」


ユイは首を傾け、皮肉っぽく笑った。

「なんかカフェっていうより強制徴兵みたい」

リカは笑いをこらえた。

「でもさ、メイド服似合うと思うよ?」

「冗談じゃない」ユイは腕を組む。


リリーは扉の取っ手を回し、ファンタジー・フィーストの中へ招き入れた。

「さあ、中へ。新しい仕事と…新しい人生の始まりよ」


店内はクリスタル型のランプが灯る暖かな空間。刺繍入りのテーブルクロスや、小さなドラゴンや妖精の置物。香ばしいコーヒーと甘いパンの匂いが漂っている。


ユイは周囲を見回し、片眉を上げた。

「ま、安っぽい感じじゃないのはいいけど」

「RPGの世界みたい」リカが好奇心混じりに笑う。


リリーはカウンターの奥から大きな箱を持ってきた。

「はい、これが制服よ」


箱を開けると、生地の輝きにミツキが「わぁ!」と声をあげた。

メイド服だが、ファンタジー風のアレンジが施されている。フリル付きの短いスカート、コルセット、星の刺繍入りエプロン、小さな翼の飾り。しかもそれぞれが個別デザインだ。


「これはユイ用」赤と金のアクセント、胸元に握り拳の形のリボン、黒いストッキング付き。

「マジか…これ着るの?」ユイはまるで呪われた品を持つようにそれを掲げる。

「着るのよ」リリーは即答。「身分を隠すためのカモフラージュでもあるんだから」


リカは水色のリボンと波模様の刺繍が入ったものを受け取った。

「わぁ、可愛い!気に入った!」

ユイは睨む。

「よくそんなに嬉しそうにできるね」

「だって可愛いじゃん」リカは肩をすくめた。「似合うと思うよ」


ミハルには深緑と花模様のデザイン。

「まさかこんなの着ることになるなんて…」

「接客するだけよ」リリーは言った。「それに、この新人コンビが暴走しないよう見張る役もあるわ」


ミツキがぱちぱちと拍手する。

「ママ、魔法メイドだ!」

「魔法じゃなくて…普通のメイドよ」ミハルは苦笑い。


リリーが指を鳴らすと、制服が淡く光る。

「それに…ただの服じゃない。防御魔法と身分秘匿の効果があるの」


ユイが眉をひそめる。

「まさか、明日から訓練とか言わないよね…」

リリーの笑みはまるで嵐の前の静けさだった。

この章を読んでくれてありがとう。

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