壊れた子どもの心
― 保育園の外で ―
レンジはゆっくりと歩きながら、片方の肩にリュックをぶら下げていた。
園の入り口では、母親が冷たく疲れた顔で待っていた。
彼女は抱きしめもしなければ、「今日どうだった?」と尋ねることもなかった。
代わりに眉をひそめて言った。
—「また問題を起こしたの?レンジ。
いつも私に恥をかかせて。
普通の子みたいにできないの?」
その言葉は、刃のようにレンジの胸を刺した。
彼はうつむき、拳をぎゅっと握りしめる。
—「ぼく……わるくないのに……」
しかし母親は、彼を乱暴に押して前へ歩かせた。
—「黙りなさい。
どうせ、あんたは問題しか起こさない。」
そのとき、レンジの心の奥で、
水面下を這うような声がささやいた。
「見ただろう?お前の母ですら、お前を愛していない。
世界のすべてが、お前を否定する……
だが、私は違う。私はそばにいる。
力が欲しいなら、私を使え。」
胸が熱くなる。
赤い光が、レンジの目に浮かぶ。
—「そうだ……
みんなバカにして……
ぼくのこと、見下して……
だったら見せてやるよ。ぼくが何者か!」
その時、たまたま通りかかったサラリーマン風の男が足を止めた。
—「大丈夫かい、坊や?」
レンジはゆがんだ笑みを浮かべた。
—「今から、君は“おもちゃ”になるんだ。」
彼の胸の水晶が強く輝く。
すると、男の体が痙攣し始め、
肉が歪み、鉄板のようなパーツに覆われていく。
腕は鋼鉄の鉤爪へと変わり、顔は冷たい仮面のように無表情で金属化した。
その怪物は雄叫びを上げ、近くに停められていた車を一撃で粉砕した。
通行人たちは悲鳴を上げ、逃げ惑う。
母親はその場で立ち尽くし、震えながら後退った。
—「な、何をしたの……レンジ……?」
レンジは涙を流しながらも、狂ったような笑みで叫んだ。
—「これでみんなわかるんだ!
ぼくが、どれだけすごいかって!」
遠くからはサイレンの音が響き始めていた。
レンジの影響を受けたそのクリーチャーは、信号機を破壊し、車をなぎ倒し、店のショーウィンドウを粉々にして進んでいく。
レンジはその様子を、誇らしげに、
しかしどこか苦しそうな目で見つめていた。
—「世界は、ぼくを無視した……
なら、今こそ見せてやるんだ。」
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