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最初の支配

その日は一見、普通の一日だった。

だがレンジの様子は明らかに違っていた。

いつもならミツキにちょっかいを出してくる彼が、

今日は黙り込んで、じっと周囲を見つめていた。

まるで、何かを――計画しているかのように。


その異変に気づいたのは、先生のアヤカだった。


「レンジ、そんな顔してないで。こっちに来て。少しお話ししましょう?」


彼女はそっと肩に手を置き、人目のない別室へと連れていく。


その時、レンジの頭の中に、あの“アビス”の声が響いた。


――試す時が来た。

力を無駄にするな。

お前を抑えようとする者を、今度はお前が支配するのだ。


レンジは拳を握りしめた。


「……先生を、ボクの言うとおりにさせられるの……?」


――できるとも。

目を見ろ。望みを思い描け。

お前の怒りこそが、“鍵”になる。


アヤカ先生はレンジの前にしゃがみ込み、眉をひそめながら言った。


「レンジくん、またそんな態度をとっていたら、お外で遊べなくなるよ?」


その言葉を遮るように、レンジは低くささやいた。


「……従え。」


その瞬間――


彼の瞳が赤く光り、アヤカの表情が止まる。

目に生気がなくなり、意識が抜け落ちたように動かなくなる。


――何でも言ってみろ。

彼女はお前の言葉に従うだろう。


レンジは戸惑いながらも、期待に満ちた声で命じた。


「みんなに言って。ボクが特別だって。

ミツキよりすごいって。」


アヤカの口が、機械のように動く。


「……レンジくんは……特別です。ミツキより……すごい子です……」


その言葉を聞いた瞬間、レンジはぞくりと震えた。

恐怖と興奮が入り混じった笑みがこぼれる。


「……ほんとうに……言うことを聞いた……」


胸の中の黒いクリスタルが、ドクンと鼓動した。

それは、まるで祝福するように光を放つ。


――これが始まりに過ぎん。

全てを支配したとき、誰も彼女を守れなくなる。

彼女のすべては――お前だけのものになる。


レンジは、かすかに笑った。


その頃――

園庭で遊んでいたミツキは、急に寒気を感じて立ち止まった。

まだ理由はわからなかった。

けれど彼女の心は、危機の訪れを感じ取っていた。


それは、誰にも止められない“悪意の目覚め”の始まりだった。

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