教室への帰還
太陽が街を照らす中、レイカはリリィが用意してくれた制服を着て学校へと向かっていた。
紺色のプリーツスカートと清潔なブレザーは、かつての「不良少女」のイメージとはかけ離れていた。
丁寧に整えられた紫色の髪は道行く人々の視線を引いた。
「久しぶりにこの場所に戻ってきたけど…
本当に、私はまだここに居場所があるのかな…？」
胸がきゅっと締めつけられる。
教室の扉を開けると、いつもの賑やかな声が一瞬だけ止んだ。
生徒たちの視線が一斉にレイカに注がれる。
「えっ、あれって…レイカじゃない？」
「退学したんじゃなかったの？」
「雰囲気…変わってる…」
ひそひそとした声。好奇の目。時に悪意。
レイカは無言で席につき、それらを無視しようとした。
担任の先生は、プロらしく微笑んだ。
「お帰りなさい、竹村さん。
今度こそ、自分の道をしっかりと歩めるといいですね。」
“竹村”という名字が胸に突き刺さる。
…父の記憶。
だがレイカは、深く息を吸い、静かに頷いた。
周りの生徒たちは、テストのこと、部活のこと、流行のことに夢中になっていた。
窓の外を見つめるレイカ。
「この空の下、みんなは当たり前の毎日を生きている。
私は…アビスの怪物と戦ったばかりなのに。
本当に、またここに馴染めるの…？」
休み時間。教室のドアが勢いよく開いた。
リカ が立っていた。笑顔を浮かべながら。
「おーい、レイカ！
今日の“第一戦”はどうだった？」
思わず小さく笑ってしまうレイカ。
「うん…
モンスター相手より、ずっと手強いよ…」
すると、数人のクラスメイトが驚いた様子で近づいてきた。
「レイカさん…
よかったら、うちらと一緒にお昼どう？」
…その瞬間、レイカは久しぶりに感じた。
“ここ”にいてもいいのかもしれない、という安心感。
放課後。レイカがラディアントカフェに戻ると、ミツキが飛びついてきた。
「おかえりー！
学校どうだった！？ 勝てた？」
疲れた笑みを浮かべながら、レイカはミツキの頭を優しく撫でる。
「うん…
ちょっとだけ、勝てたよ。」
彼女の手首の時計が、ほのかに光を放つ。
その光はまるで、こう語りかけているかのようだった。
「本当の戦いは…まだ終わっていない。」
でも今だけは。
この一瞬だけは、普通の帰宅と笑顔が、レイカの心を救っていた。
この章が面白いと思ったら、ぜひブックマークや感想で応援してください！
皆さまの一言一言が、作者の力になります。
