「炎と流れ」
変身の光がまだ空中に漂う中、
ユイとリカは互いを見つめた。
何が起きたのか――完全には理解できない。
だが、問いを交わす時間はない。
脅威は依然としてそこにあり……その力は、むしろ増しているようだった。
「…この服、何?」
リカは頭の上のティアラに手をやりながら尋ねた。
「知らない…」ユイは拳の赤い手袋を握り、腕を伝う熱を感じた。「でも…体が…違う」
短い驚きは、金属質の咆哮に断ち切られた。
機械の男が突進してくる。
「危ない!」リカが叫ぶ。
拳がユイの目前をかすめたが、考えるより先に体が反応した。
軽やかなステップでかわす。その速さは、まるで宙に浮いているようだった。
「稲妻みたいな動き…?」リカがつぶやく。
「それだけじゃない…」ユイはボクシングの構えを取り、口元に笑みを浮かべる。「反射神経が桁違いだ!」
敵が再び攻撃してくる。
ユイは身をかがめ、かわし、反撃の連打を浴びせた。
バン! バン! バン! 空気が拳で裂ける。
「油断しないで!」リカは反射的に杖を構えた。「ホープ・バリア!」
背後からの不意打ちを、輝く水の壁が防ぎきった。
「今の…何? 私、こんなの知らない!」
「じゃあ、そのまま続けろ!」ユイは動きを止めずに返す。
敵はリカに向き直る。
彼女は普段の自分ではありえない敏捷さでかわした。
「そう簡単には捕まらないよ!」
くるりと回転し、怪物の胸部へ一撃。
衝撃音が響き、数メートルも押し戻す。
遠くで、ミハルはミツキを抱きしめていた。
「ママ…あの人たち…ヒロイン?」少女は目を輝かせて問う。
ミハルは答えられない。
怪物は立ち上がり、関節から煙を噴き出す。
「チッ…」ユイは拳を握る。「もう誰にも触らせない」
手袋の宝石が燃え立つ。
本能が技の名を告げた。
「ブレイジング・ハート・スマッシュ!」
赤と白の炎に包まれた拳が、金属の胴体を打ち抜き、後退させる。
「ユイ!」
リカが振り返ると、瓦礫の塊がミハルとミツキへ飛んでいく。
「ダメ!」
「ホープ・ストリーム・シールド!」
杖から水色の渦がほとばしり、飛来物を弾き飛ばす。
リカは考えるより先に走り、二人を抱えて大きく跳躍、
安全な角へと着地した。
「どうやったの、それ…?」ミハルが驚く。
「私も…わからない…」リカは息を切らす。
その間にも、ユイは攻撃をかわし続けていた。
「リカ、下がってろ!」
だが青髪の少女は前へ出る。
上空では、先ほどの白いコートの女が壊れた電柱の上から声を放った。
「聞いて! 勝ちたいなら…必殺技を使って! 今すぐ!」
「必殺技?」リカが反復する。
「自分の心を信じて!」
ユイとリカは目を合わせた。
理由はわからない…けれど、もう体が動き出していた。
ユイは拳を引き、赤い宝石が太陽のように輝く。
「ブレイジング・ハート・スマッシュ!」
リカは杖を掲げ、水と光の奔流をまとわせる。
「ホープ・ストリーム・バースト!」
炎の赤と海の青が渦を巻き、一つの螺旋となって敵を直撃。
金属が軋み、装甲が裂け、
そして――瞳の奥の赤い光は、ゆっくりと…完全に消えた。
数秒のうちに、機械の姿は崩れ落ち、
そこには膝をつき、荒く息をつく一人の会社員が現れた。
ユイは拳を下ろし、まだ早鐘のように打つ心臓を感じながら言った。
「やった…よね?」
「たぶん…ね」リカも息を切らしながら答える。「でも、まだ聞きたいことが山ほどある」
ミハルはミツキを強く抱きしめ、二人をまるで生きた伝説を見るような目で見つめていた。
そして、ユイは初めて――
「ヒロイン」という言葉が、自分にも関係あるのかもしれない…そう感じた。