仮面の下の顔
戦士たちは、廃墟と化した公園でシェイドを取り囲んでいた。
燃える車から立ち上る煙、響き渡るサイレン――その場の空気は緊張で震えていた。
だが今、この瞬間に存在するのは、彼女たちと“彼”だけだった。
闇の姿を纏ったままのシェイドの体が、ゆっくりと崩れていく。
黒い液体のような魔力が滴り落ち、人間のような輪郭が現れる。
それは、くたびれたスーツを着た男だった。
割れた眼鏡、歪んだ笑み。
――平凡。
――ありふれた顔。
「驚いたか?」
歪んだ声で彼は笑う。
「俺は天から堕ちた悪魔でも、深淵の怪物でもない。お前たちと同じ、この世界の人間だ。
俺を喰ったのは……この社会そのものだ。」
ユイが歯を食いしばり、一歩前へ出る。
「だったら、お前は自分の立場を使って――こんな惨劇を起こしたのか!」
シェイドは腕を広げ、黒いエネルギーが血管のように脈打つ。
「利用した?違うな。
利用されたのは、俺のほうだ。
会社は俺を搾り取り、使い捨て、空っぽにした。
ブラックアビスは俺を堕としたんじゃない……
解放してくれたんだ。」
✦ 戦いの始まり
ブレイズフィストのユイが叫び、炎の拳で突進する。
シェイドは片手を上げるだけで、その炎は逸らされる。まるで時間が彼に従ったかのようだった。
ストリームプリンセスが水のバリアを張るが、シェイドの影の爪はそれを容易く貫き、枝分かれして襲いかかる。
「お前たちの力で、俺が象徴する“システム”を壊せるとでも?」
アンバーハートが割って入り、温かな光の盾で攻撃を受け止める。
「社会は今すぐ変えられないかもしれない……
でも、あなたはここで止められる!」
クロノエンプレスが時計を掲げると、紫の光が空間を包む。
時間が遅れ、空気さえ静止したように感じた。
「時間は私たちの味方よ」
とレイカが静かに言う。
「そしてあなたの時間は……
もう終わったの。」
✦ 章の終わり
警察のバリケードの向こう、刑事のタケダは銃を握りしめたまま、茫然と戦場を見つめていた。
「……あの男、ただの会社員だったのか?」
返事はなかった。
だが、彼は既に知っていたのかもしれない。
目の前にいるのは、もう単なる怪物ではない。
社会に捨てられた男。
人間の絶望を知り尽くし、
そして、それを――
武器に変えた存在。
シェイドが再び咆哮する。
闇のエネルギーが爆発し、戦場を覆う。
戦いはまだ終わらない。
これは「怪物」との戦いではない。
これは、人間そのものの闇との戦いだった。
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戦争の中でも、笑顔こそ最強の武器。