好奇心旺盛な来訪者
ラディアント・カフェに、チリンとベルの音が鳴り響いた。
いつも通り、ユイはトレイを手際よく運び、リカは爽やかな笑顔で接客。
ミハルはレジで帳簿を整理し、レイカはまだ少しぎこちないが、以前よりも落ち着いて接客をこなしていた。
その時――店に入ってきたのは、二十代半ばの青年。
四角い眼鏡に白いシャツ、軽いジャケット。
手には紙でパンパンのブリーフケースと、小さなノート。
店内を見渡すなり、彼の目が輝いた。
「すみません、ここって、あの“ファンタジー風のカフェ”ですよね?」
リカは笑顔でうなずきながら迎える。
「ようこそ、ラディアント・カフェへ! お席へどうぞ♪」
青年は椅子に座りながら自己紹介を始めた。
「僕は神田亮平、フリーの記者です。
最近、この街で起きてる“妙な事件”について調べてまして……
ほら、映像に映る『謎の少女たち』とか『異形の存在』とか。」
その瞬間、カフェの空気がぴんと張り詰めた。
ミハルはさりげなくユイの手を握り、レイカは危うくトレイを落としかける。
だが――亮平本人は、その緊張感にはまったく気づいていなかった。
「誤解しないでください。僕は騒ぎを起こしたいわけじゃないんです。
メディアはあの子たちを“脅威”として扱ってるけど……僕は、何か裏がある気がして。」
彼は名刺を取り出し、テーブルの上に滑らせる。
「何か見たり、聞いたりしたら……連絡をください。
ほんの小さなことでも構いません。」
その様子を見ていたミツキが、興味津々で立ち上がろうとしたが――
すかさずミハルが優しく彼女を抱き上げ、話題から遠ざける。
レイカは小声で呟いた。
「……ああいうやつが、一番やっかいなんだよな」
ユイは名刺を手に取り、あくまで自然に微笑む。
「はい。何かあれば、連絡しますね。」
亮平はコーヒーを一口飲み、笑みを浮かべる。
「この街には真実が眠ってる。その真実を明かすためなら、僕はリスクを取ります。」
記者が店を去ったあと、少女たちは裏の部屋に集まっていた。
テーブルの上には、あの名刺が静かに置かれている。
それはただの紙ではなかった――
自分たちが“戦う相手”が、もはやブラックアビスだけではないことの証だった。
リリィが低い声で告げる。
「覚えておいて。たった一つの言葉でも、外に出れば“刃”になる。
あの記者が味方になるか敵になるか――それは、私たちの選択次第。」
皆は黙ってうなずいた。
世界は変わりつつある。
ラディアント・カフェを包む日常は、確実に――狭まりつつあった。
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戦争の中でも、笑顔こそ最強の武器。