思いがけない再会
朝の光が差し込むラディアント・カフェは、いつも通り穏やかに時を刻んでいた。
常連たちはコーヒーを飲みながら会話を楽しみ、ユイは安定した手つきでトレイを運んでいた。
その隣では、まだ少し不器用なレイカが注文の取り方を学んでいる最中。
片隅ではミツキが色鉛筆を走らせ、その様子をミハルが優しく見守っていた。
カラン――。
ドアベルが鳴る音が、柔らかな空気を切り裂くように響いた。
入ってきたのは、堂々とした雰囲気を纏った中年の男性。
柔らかな微笑みと、どこか懐かしさを感じさせる眼差し。
カズマ・イオキ――ユイが通っていたボクシングジムの元トレーナーであり、彼女にとって特別な師匠だった。
「ユイ!」
彼の低く力強い声が店内に響く。
「まさか、こんなところで会えるとはな!」
ユイは驚きつつも、心から嬉しそうに振り返った。
「カズマ先生! こんな偶然、あるんですね!」
叔父と姪
カズマが数歩足を進めたその時――
カウンターでグラスを拭いていたレイカの姿が目に入った。
彼の動きが一瞬止まり、唇がわずかに震える。
「……レイカ?」
レイカも気づき、ゆっくりと顔を上げた。
その声、その顔――間違えるはずもなかった。
「……おじさん。」
カフェ内の空気が一瞬、止まったかのようだった。
やがてカズマはゆっくりと歩み寄り、何も言わずにレイカを強く抱きしめた。
こらえきれなかった涙が、彼の目に浮かんでいた。
「生きててくれて……本当によかった……!」
レイカは硬直したまま動けずにいた。
そんな温かい抱擁は、あまりに久しぶりで――あまりに不慣れだった。
それでも、震える手をゆっくりと伸ばし、彼女もまた腕を回す。
「……まさか、会えて嬉しいなんて……自分でも思わなかった。」
共有された喜び
その様子を見守っていたユイは、微笑みながら腕を組んだ。
「このカフェには、いろんな人の物語が集まってくるんですね。」
奥から声が漏れる。リカがそっと呟いた。
「……あの人が、彼女の言ってた“おじさん”か。」
カズマはレイカから少し身を引き、しみじみと彼女を見つめた。
「ずいぶん変わったな……穏やかな顔してる。
この場所が……うちの暴れん坊を落ち着かせたのか?」
そのタイミングで、リリィがそっと現れ、紅茶のカップを手渡す。
「ラディアント・カフェは、居場所を求める人のためにあるんです。
レイカさんも、ここでその“帰る場所”を見つけたんでしょうね。」
レイカは視線を落とし、ほんのわずかに頬を赤らめた。
だがその口元には、これまで見せなかった、かすかな微笑みが浮かんでいた。
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戦争の中でも、笑顔こそ最強の武器。