はじめての「家」の味
まだ体が弱っているレイカは、ベッドの上で涙を止められずにいた。
—「ごめんなさい……全部……堕ちてしまったこと、たくさん傷つけたこと……自分がこういう人間で……」
ユイは隣に腰を下ろし、腕を組んで言った。
—「謝ることなんてないよ。私たちだって、それぞれ過去に色々あったんだから。」
リカもうなずいた。
—「私たちはあなたを責めたりしないよ、レイカ。大事なのは…今、ここにいるってこと。」
ミハルが近づき、そっとレイカの手を握る。
—「私たちと一緒にいる限り、もう一人じゃないから。」
そのとき、ミツキがベッドに上がり、力いっぱい彼女を抱きしめた。
—「おねえちゃんは、いい子だよ!わたし、知ってるもん!」
レイカの涙は、今度は少し違う種類のすすり泣きへと変わった。
それは、痛みと…そして安堵が混じったものだった。
入り口に立っていたリリィが、静かに見守りながら優しく言った。
—「今は、ゆっくり休んで。すべては、それからでいいのよ。」
ミツキは小さな手をピンと上げた。
—「わたしが、見張りするから!」
皆が顔を見合わせ、ユイが肩をすくめながら微笑んだ。
—「うん、ミツキ以上に頼れる看護師はいないね。」
レイカは目を閉じ、小さな体をそっと腕の中に迎え入れた。
何年ぶりだろう、こんなにも安心して眠れたのは。
数時間後。夜になり、カフェはそろそろ閉店の時間。
レイカがゆっくりと目を開けると、ふわりと美味しそうな香りが漂ってきた。
身体を起こして、階段を下りていくと…
ダイニングでは、ユイ・リカ・ミハル・リリィが手作りの晩ごはんを並べていた。
湯気を立てるごはん、味噌汁、焼き魚、新鮮な野菜——まるで家庭そのものの光景だった。
ミツキが椅子の上から手を振る。
—「おねえちゃん、こっちこっちー!」
レイカは少し戸惑いながらも席に着いた。
皆があたたかく微笑み、まるでずっと前から彼女が仲間だったかのように迎えてくれた。
おそるおそる、ごはんと味噌汁を口に運ぶ。
その瞬間、素朴で優しい味が口いっぱいに広がり、また涙がこぼれそうになった。
—「…こんなに美味しいごはん、何年ぶりだろう…」
ミハルが微笑みながら、もう一杯よそってくれた。
—「じゃあ、今日は思いっきり食べて。ここには、誰の分もちゃんとあるから。」
ユイがお茶の湯のみを掲げた。
—「ようこそ、ラディアント・カフェへ。レイカ。」
もしこの章を気に入っていただけたなら、ぜひお気に入り登録、いいね、あるいはコメントで応援してもらえると嬉しいです!
ほんの一言でも、皆さんの言葉は、私が物語を書き続ける大きな力になります。
これからも、心を込めて紡いでいきますので、よろしくお願いします!