闇のひび割れ
ブラックアビスの力に完全に覆われたレイカは、闇の大鎌を振り回し、アスファルトを切り裂いた。
警官たちの叫び、報道ドローンの羽音、カメラのシャッター音…すべてが混ざり合い、混沌の轟音となっていた。
ブレイズ・フィスト(ユイ)は炎の拳で突進するが、レイカはその攻撃を圧倒的な力で弾き返した。
— ちっ…! —
ユイは膝をつき、手袋から煙を上げながら呟いた。
— 前よりも…力が強すぎる…制御できてない…
アンバー・ハート(ミハル)は黄金の光で負傷した警官たちを守りながら、苦しげな表情を見せた。
— 力だけじゃない…彼女の魂が…憎しみに埋もれてる…!
ストリーム・プリンセス(リカ)は杖を掲げ、水の鎖でレイカを一瞬だけ拘束した。
しかし、その時、彼女は感じた――戦いの外にある何かを。
鼓動。
脈。
かすかな声。
リカは目を閉じ、唇を噛み締めた。
— …まだ…レイカはそこにいる。消えてない!
その瞬間、リリーの腕輪のオラクル・ミラーが光を放ち始めた。
映し出されたのは、レイカの記憶の断片――
幼い頃、姉と抱き合って笑う姿。
カズマと走り回る笑顔。
暗い部屋でひとり涙を流す少女。
ミハルはそれを見てすぐに理解した。
— オラクルを使って!記憶を見せてあげて!
— 自分が誰か、思い出させて!
リリーは鏡に手を当て、静かに呟いた。
— 魂の反射よ、真実に応えよ…。
空中に本来のレイカが映し出される。
バットを肩に担ぎ、傷だらけでもまだ優しさを残す瞳――
闇の気配などまったくない、ありのままの少女。
レイカの動きが止まった。
手にした大鎌が震える。
呼吸が乱れ始める。
— これは…何…?
ユイはその隙を逃さず、手を広げて前へ進んだ。
攻撃はしない。敵ではないから。
— あなたはレイカ。ミツキを助けた子。
独りで不良と戦った、勇敢な子。
それは憎しみじゃない…正義の心だった!
— 信じないで! —
リカが叫ぶ。
— シャドウはあなたを道具として使いたいだけ!
あなたは…武器じゃない!
高層ビルの上では、ヒロトが叫んだ。
— くそっ…!迷い始めた!
シャドウは手をかざし、闇の力を注ぎ込もうとする。
だが――
レイカは膝をつき、胸を押さえる。
瞳の赤が一瞬揺らぎ――
胸の黒いクリスタルに小さなひびが入った。
タケダ刑事は地面からその様子を見上げていた。
— 彼女…中から戦ってるんだ…
日本中の人々がテレビやスマホでその様子を見つめていた。
もう「不良少女」ではない。
そこにいたのは――
自分を失いたくないと戦う少女だった。
ミハルの頬を一筋の涙が伝う。
— 戻ってきて…レイカ…
そして。
すべての中継に、少女の声が響いた。
震えていたが…その声は、もう空っぽじゃなかった。
— もう…操り人形には…なりたくない…
もしこの章を気に入っていただけたなら、ぜひお気に入り登録、いいね、あるいはコメントで応援してもらえると嬉しいです!
ほんの一言でも、皆さんの言葉は、私が物語を書き続ける大きな力になります。
これからも、心を込めて紡いでいきますので、よろしくお願いします!